顔面がくぼんどる!?
「さて、と。早速授業を始めようか」
「どうぞ」
ニコリと笑ってレオはライを促す。
「今は何をしているんだ?」
「各自、自分の好きな部分を自習しています」
レオの淡々とした回答にライは眉をひそめる。
「なぜだ」
「たいがいルーピン先生が沈没しているからです」
これにもレオは淡々と事務的に答える。
「…正確にはさせている、だけど」
「へぇ。ナニをしたらあの先生が沈没する?」
ライラのつぶやきを耳に止めたライは、笑顔をさらに輝かせる。
「うぉっふぅ!い、色々と?」
言えよと脅されたライラは不思議な悲鳴を上げてぼかしてみる。
「その色々との部分を聞いているんだが」
「ふぇう!レ、レオに詳しくはっ!!」
ライに追及されたライラはレオに放り投げる。
「どういうことだ、レオ」
「さぁ?」
ニッコリ笑い答えなかったレオのせいでライの周りからパチパチと嫌な音がする。
「せ、せんせー!!授業しましょ!!ね!?」
これはまずいと思ったユメが口をはさむ。
「そうだな」
かくかくしかじかこうこうで。
で、魔術の時間。
「フィリア、没してないでこれを読め」
「へ、ふぁい!!」
口から魂が抜け出ていたフィリアの頭にライはノートを乗っけて指示する。
「え、えと…。今日は不思議な男の子に会ったよ!とってもかっこいいんだけど、泣いてたの。だからフィリアがドォンとしてボカンとしたら元気だ……」
どっかで見た記憶があるような―と思いながら読んでいたフィリアは、幼き日の日記であるこちに気づいてショートした。
「あー…フィリアさん?ちょいちょい?」
ノートに視線を落として固まったフィリアにライラがちょっかいをかける。
「う、うう…ふぐううう」
真っ赤な顔をしてフィリアはライのことを睨む。
「リラン兄に頼まれてな。断れない」
「うぐっ…ううううううううううううううううううううう!!」
やりきれない気分になったフィリアは大きく振りかぶると、ノートを壁の方に全力で投げつけた。
「もーらいっ!へへっ、フィリアの日記拝見~」
すかさずライラが食らいつて、パラパラとページをめくる。
「ぐっ…」
しまったぁああ!とフィリアは頭を抱えてうずくまる。
「おおっ!?」
「ライラ、かえせ」
驚いて目を見開いたライラにレオが怒気を放つ。
「い、嫌だよ!!こ、これは私の戦利品だ!!」
日記を胸に抱えるとライラはレオに主張してみる。
「ライラ、そこまでにしといた方が」
レオの怒気が膨れ上がったのを見て、クライトは逃げ腰になりながらもライラに言う。
「そ、そうだよ…多分、アウト」
チラッとレオの方を覗き見たユメはすごく後悔した。
「《我が意志のままに》」
言霊を使ってレオはライラの体を操って日記を奪い返す。
「いーやーぁー!!ラ、ライさん!!た、助けてっ!!」
「自業自得だ」
腰の入ったレオのストレートパンチを顔面に受けたライラは吹っ飛んで壁にぶつかり動かなくなる。
「ラ、ライラぁ!?」
慌ててフィリアがライラの無事を確かめに走る。
「が、顔面が窪んでる、だとっ!?そんなギャグ補正が、かかってしまうのか!!」
ドヨリとユメの言葉で教室がざわめく。
「い、いくら何でもやりすぎじゃ?」
クライトのひきつった声は無視された。
「俺はだな、ライラ」
「ぶぶっ」
ネリネリと顔を練って元の形に直していたライラは変な声を出す。
「不思議な二つ名をもっている」
「はぁ」
話の展開が読めないライラはキョトンとする。
「残虐冷徹皇太子とかいう不愉快極まりない代物なのだが…」
「ふぇい!?」
ギョッと眼を見開いたライラを気にせずレオは続ける。
「…実戦してやってもいいんだぞ?」
「はい、ストップ」
ライのライによるライのためのストップが入った。
「何か?」
「流石に人殺しはまずい。後授業中だからな」
愉しみを止められたレオはムッとしてライに言い返す。
「先に中断させたのはどちらでしたか」
「フィリアだな」
「私っ!?」
いきなりなすりつけられたフィリアは、驚いて叫んだ。
「まぁ、この際誰でもいいです。丁度遊んでいたら授業時間が終了になりましたし、次の薬学の授業、Fightしませんか?」
恐ろしい提案をレオはライにした。




