夏休みしゅりょー
夏休みも無事(?)終了して。
鐘が鳴るなり、何時ものようにテンションが高いルーピンが教室に入ってきた。
「後期が始まったよー!!」
訂正、休み明けテンションのルーピンが入ってきた。
「先生テンション高くない?」
「いつものことだろ。で、ユメはどうした?」
「うん、ちゃんと転校手続きしといたよ」
えへへ―褒めて褒めて!と言わんばかりのフィリアの頭をレオ撫でてみる。
「偉いな、フィリアは。どっかの誰かさんとは大違いだ」
「どっかの誰かさんって言うのは誰だ?」
よしよしとフィリアをほめるレオの言葉にクライトがつっかかる。
「おや?自覚があるみたいじゃないか」
「俺のことか?俺のどこが偉くないって言う!」
「…自分で言うのはどうかと思うぞ」
少しレオは引いてみる。
「そこっ!うるさいですよ、ノリフス君!!」
「俺!?俺、名指しですか!どう考えてもレオが原因だろ!」
ルーピンに怒られたクライトは納得がいかないのか立ち上がって反論する。
「じゃあ、緑葉君を怒れというんですか!!明らかに話聞いてませんオーラを出す緑葉君を!?せ、先生のライフが削られてくだけですよっ!!新入生の紹介ですっ!!」
クライトにルーピンは涙ながらに説明し、そのままユメの紹介に入っていく。
「ハァイ、皆のユメだよ~!!」
こっちもこっちでテンションがあげあげ!な状態。
「ユメ…」
ちょっとっていうかかなりクライトは引き気味でユメを見る。
その視線を受けたユメはもう少し付け足してみる。
「おっと、今はクライトのユメだよん。それでね、一応勇者なんだな。みんなの悩みを解決しちゃうぞ、アハッ!」
ユメの付け足しに教室がざわめく。
「え…」
「そ、そんな…レオクラが!!」
「クラレオでしょ!!レオクラとか認めない!!」
突然論争(腐)発生。
「レオ様が攻めるんだよ!」
「いいや!!主従関係を入れ替えないとっ!!」
さらに内容も入れ混ぜての論争に発展。
「…本人がいる前でするあたり腐女子って凄いよな」
「ああ…まぁ、うん」
腐ってる思考をフィリアに聞こえないようしっかりと耳を塞いで、レオは遠くを眺める。
「レオ?お前、何考えてんだ」
「は?お前に言う必要がねぇだろ」
最終的には意気投合して一緒に薄―い雑誌を発行しよう!とかいう話にまでなっていた腐女子さんがたがレオとクライトの会話に反応する。
「ツ、ツンデレ来たー!!ごちっす!!」
「や、やっぱこうじゃないと!!」
「絵がおいしい…!!」
一瞬収まったのに再び激しくなった討論に、レオは頭を抱えたくなる。
「レオ、そろそろ放してよ」
「いや、ダメだ。フィリアには聞かせたくない」
「私はいーの?」
なんか放置されちまったライラ、無理やり口を挟んでみる。
「お前なんかどうでもいいに決まってるだろうが!彼氏といちゃついてろ」
が、一蹴されいじける。
「フィリア―フィリアー。フィリアの彼氏がいじめるよー」
「え?何言ってるかわからないよ。レオに耳塞がれてるし」
フィリアに泣きついてみるも、無駄でした。
「父さんとリカルドさんの話とかつくらねぇかな」
「垂れ流してみれば?」
憂さ晴らしに丁度いいとレオはオルノとリカルドの比較的腐らせやすい話をぽつぽつと話し始める。
「父さんは…リカルドさんがすごく大好きで、実はリカルドさんがツンデレだから父さんはいつも泣いて帰ってくる」
「何っ!?こ、今度は…ダブル王!?」
「あのイケメンお二方…だと!?」
とまぁいい感じに自分ネタから話を逸らしたレオも混ざりのヤンヤヤンヤで、腐った話がされていく。
「おっかしーなぁ。こんなことになる予定じゃ…」
なんか無視されちゃったユメは半分泣きながらクライトに飛びつく。
「いや…このクラスはそういうクラスだから…覚悟しろよ」
「うん、わかった。じゃなきゃフィリアが家出できるわけないしね」
「待って、誰からその話を聞いたの!?」
やっとレオに耳隠しを外してもらえたフィリアはユメに伝えてない話を聞いて、話に割り込む。
「えと、リランさん?からだよ」
「に、兄様…大嫌いって言ったの根に持ってる…地味に精神削ってくる攻撃きたよ。ちまちまと男のくせに…」
ケッとフィリアは行儀悪く王宮の方を睨みつける。
「フィリア、言い過ぎ」
ああ、私の出番がドンドンなくなっていく…とライラは嘆き、自ら話に積極的になろうと決意する。
「え、そう?あ、ねぇライラ。結婚式はどこで上げるの?」
「なんでそういう話になるの!!!」
ガァッとライラはフィリアの襟首をつかみ上げる。
「えー…だってラブラブなんだもん」
「関係ないよね、それとこれって!!」
さらに捻りあげる。
「いいじゃない。他人のラブコメほど面白いものはないんだよ」
「人事だと思って…!!じゃあレオにフィリアとのあれこれ聞いちゃうよ!?みんなに暴露させちゃうよ!?」
最終手段とも思えるようなものをライラは持ち出してみるが、フィリアに避けられてしまった。
「大丈夫、問題ないよ。レオは秘密主義だから…絶対ばらさないだろうし」
「へ、へぇ言ったね!!!レオっ!フィリアとのあれこれ教えてよ!」
強気になって上位に立とうと思ったライラは、腐女子さん方とオハナシしているレオに声をかける。
「あれこれ?どんなものをお前が望んでいるかわからないから嫌だな。それに…フィリアとの秘密をお前程度に話すわけがないだろ」
「お前程度!?へぇ、主人公に程度とか言っちゃう!?レオのバカやろっ!!!」
「主人公?最近出番がないくせに?俺の方がどう考えても多いしな。可愛そうなライラ。ハナイと同レベルにまで落ちちまう」
レオのねちねちとした精神攻撃に、グッファと血を吐いてライラは教室の床に倒れ伏す。
「か、カンカンカン!!勝者レオ!!圧倒的な強さです!誰か勝てる人はいるんでしょうかっ!?」
レオの手を取って高く上げたユメがプロレスっぽいアナウンスをしてみる。
「敗者ライラ!何かコメントは!?」
「は、ハナイとだけは…嫌だなぁ。ガク」
ユメが突きだした手にライラは頭をあげてコメントを残すと、力を抜いた。
「今、尊い命が一つ失われることとなりましたぁ!!」
「勝手に殺すなぁ!!!」
ガバリと身を起こし、ライラはユメを怒鳴る。
「はい、すいませんでしたー!」
テヘッとユメは頭を軽く殴ってみる。
「…いつもと同じテンションのようで少し違う気がするんだ。なんでかな?」
フィリアがそれを見て首をかしげる。
「ライラが無理やりにでも口をはさんでくるところとかじゃないか?」
「ああ、それかぁ」
レオから返ってきた返答に納得が言ったフィリアはうんうんと頷く。
「しみじみと言わないで、フィリア!」
「ごめんよ、ライラ。心配しなくても出番はあるのに」
「嘘だっ!!!」
なぐさめてみたら、すかさず叫ばれた言葉にフィリアはニマニマと笑みを浮かべる。
「何、その顔」
「いや、ライラ面白いなって」
「酷いね!相変わらずひどいね!悪化したよね!」
倒れたまま匍匐前進してフィリア野元へハイ酔ったライラはレオに背中へ足を乗せられうめく。
「あー…レオ?それはライラが可哀そう」
「気持ち悪い物体」
「酷いよ…」
流石にそれはひどいよ、とフィリアはレオを責める視線を送るのだった。




