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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第24章 勇者召喚
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扱いひどすぎるでしょ

ところと日付変わって、緑の王宮。


「クライトー、今暇?」

「まぁ…暇だろうな」


今日も今日とて政務室にこもりっぱのクライトの元へユメが顔を出した。


「遊びにでも行って来い。もう少しで終わるからな。後はお前がいる必要もないし」


半分以下になった書類の山を見て、レオはクライトの背中を押す。


「ああ、サンキュレオ」

「たまには逆でもいいだろう?」


普段、クライトに任せて遊びに行っている自覚があるだけに、レオはそっぽを向くのだった。



政務室を出たクライトはレオに内容が聞こえることのないよう遠く離れてからユメへ聞く。


「で、何処に行くんだよ?」

「青の王宮に行ってみたいんだ」


ルンルンとユメは行き先をクライトへ告げる。


「ああ…フィリア様に会いに?」

「うん、そうだよ!行こう!!」

「わかった」


ユメに頷くとクライトはワープをかけるのだった。







「あ、リラン様」

「おや…えーと、勇者。それから、あー…」


クライトの名前が浮かばなかったリランは記憶を探る。


「…ノリフスです。フィリア様に用事があるのですが」

「フィーに?丁度良かった。僕も探してたんだよね」


名前を覚えていなかったことは流して、リランはニコリと笑い廊下を歩きだす。


「ねぇクライト。この人どなた?」

「リラン様だ。王位継承権1位の方でフィリア様の一番上の兄でもある」

「へぇ…シスコン?」

「…ユメ」


流石勇者。クライトはそう思い今の言葉が聞こえなかったかリランの方をそっと窺う。


幸いにもリランはフィリアに付きまとうセイロウの姿に笑顔を作っていて聞こえていなかった。


「フィリア様、ねぇフィリア様?聞いてますか、僕の話」

「聞いてる、聞いてる。それで、その女の子はどうしたの」


廊下の先で、セイロウが犬のようにフィリアの後を追いかけているのを見てしまったリランは額へ手をやって盛大な溜息をもらす。

重いため息が聞こえて振り返ったフィリアはリランを見つけ顔を輝かせる。


「あ、兄様」


グッドタイミング!とばかりにフィリアはリランの方へ駆け寄る。


「ねぇフィリア。勇者を勝手に帰しちゃって…どういうつもりなのかな?」

「あ、え、と…て、てへっ?」


言い訳が浮かばなかったフィリアは笑ってごまかそうとした。


「そう。まぁかわいいからゆるしてあげるよ。それに…もう一人の勇者もいることだしね」

「ま、待って兄様!ユメで実験は…」


ユメに視線を注いでにこにこと笑うリランをフィリアは止めようとする。


「それはリナに言うことだね。僕に言っても無駄だと思うよ」

「に、兄様…!!」

「ユメ、逃げろっ!」


リランの魔の手からユメをクライトは逃がそうとする。


「甘いよ、ノリフス」


展開が見えず戸惑ったユメをリランは捕まえ手錠をポケットから取り出す。


「え、ええ!?」

「ちょ、兄様!私の友達!ダメ、絶対!!」

「へぇ、友達なんだ。じゃあなおさらかなぁ」


リランの腕にすがってフィリアはそれを止めえようとするが、スイッチの入ったリランは止まらない。


「っ…、…!!」


名案が浮かんだフィリアはスゥと息を吸う。


「フィリア様?」


クライトの胡乱げな声にサムズアップして、フィリアは思い切り叫ぶ。


「お兄ちゃんなんか大っ嫌い!!」


シスコンに1000の大ダメージ。


「うっ!」


あまりのダメージにリランはユメの腕を放し、廊下にうずくまる。


「よし、逃げるよユメ」


リランの惨状は無視することにして、フィリアはユメの腕をつかみ廊下を走り去る。


「ちょ、待てよ!?」


さりげなく置いてかれたクライトは、遅れてダッシュする。


「ああ…追いかける機会も失いました」


フィリアの叫んだ内容が衝撃的過ぎて真っ白になっていたセイロウは、しゃがみこむリランを蹴っちゃおうかなぁなんて考える。


「フ、フフ…フフフ」

「…リラン様?」


漏れてきた笑い声が不気味すぎて、声をかけてからセイロウは後悔する。


「フフ…フフフフフフフフフ」


本能に従ってセイロウは狼化していつでも逃げられるよう準備する。


『だから、リラン?おい、どうした?ショックで頭でも壊れたか?』


毛が逆立っているセイロウに聞かれたリランは立ち上がると、目元に浮かんだ涙をぬぐう。


「僕は壊れてなんかいないよ。…フィー、言ったね。後でお仕置きだから」

『フィー。逃げろっ!!!』





はい、もうすでに逃げてます。


「ゼー、ゼー…」


裏庭まで逃げてきて、フィリアは息が切れ膝に手をあてて呼吸を整える。


「フィリア、息切れすぎだと思うよ」

「う、うるさいよ!体力ないんだって!」

「ユメ、フィリア様」


呼吸を全くに出していないクライトが追い付いて、声をかける。


「に、逃げれてよかったよ。色々と耐えた」


プライドとか、羞恥心とかを耐えての叫びでしたから。


「ああ、破壊力凄かったよね。人がうずくまるのとかそうそうみられないよ」

「後でレオに報告しておきましょうか」


悪戯心が揺り動かされたクライトは、椅子に腰掛けたフィリアへ言う。


「いらないよっ!余計なことしなくて良いから!!ああ…後で兄様とひざ詰め合わせてオハナシしないと…」


フフッと遠い目をするとフィリアは明後日の方向を向いた。


「でね。フィリア今暇?」

「暇じゃないように見えた?」

「ううん、ちがうけど」

「フィリア――――!ラ、ラックがイジメルの!!」


ライラが上から降ってきてフィリアに抱き着く。


「だ、だれっ!?」


ギョッとしてユメは一歩足を引く。


「ライラ…お前な」

「あ、クライトだ。え、誰!?」


呆れた声を出したクライトのほうをみて、隣に立つユメを見つけたライラは首をかしげる。


「そういえば初対面なんだっけ。ゴメン、ライラ。存在を忘れてた」


抱き着いたままのライラを離すと、フィリアは笑いながら謝る。


「ひどい!!扱いがひどすぎるっ!!一応補佐だよ!?ねぇ、フィリア!?」

「だから、ごめんって。ええと、勇者のユメ。んでこっちが私の補佐のライラ。ええと…龍と人とのハーフなんだよね?」

「そこも忘れるっ!?うん、そうだけど…フィリアがひどすぎてどうしよう!!勇者のユメ?初めまして、だね!希少価値は同じくらいなんじゃないの?お互い頑張ろーね」


若干いつもより低いテンションでライラはユメに自己紹介する。


「で、ラックが何したの?」


なんか聞いて聞いてってオーラがふりまかれるから、挨拶もそこそこにフィリアはライラへ聞く。


「あ、ああ聞いてよ!ラックったらね!耳引っ張ってくるんだよ!挙句に…」

「ああ、惚気ね。オッケわかった。兄様にでも言ってきなよ。…多分って言うか絶対半殺しになるよー」

「はんごっ!?っていうか、私の扱い酷くない!?ねぇフィリア!」

「はいはい」


久しぶりなライラのからみがめんどくさくなったフィリアは適当に流す。

フィリアとライラのやり取りを聞いていたユメはクライトに聞いてみる。


「…あの2人ってレオとクライトみたいな関係?」

「どういう関係だかがわからないな」

「えーと、じゃあどういう関係なの?」

「…主従関係?」


間違ってはないけどあってるとも言い難いような微妙な線の回答をクライトはする。


「ふぅん」


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