クライト、これは恋心
さらに数日が過ぎて。
「レオ、相談事があるんだが…」
ボソリとクライトはレオに話を持ちかける。
「お前が俺に?…何を」
「ユメのことを目で追ってしまうんだ。なんでだと思う?」
レオに先を言うよう促されたクライトは淡々と簡潔に聞く。
「…それは、一般的に恋をしているというものではないのか?」
コイツ、まさか鈍感属性なのか?と思ったレオは遠まわしに答えてみる。
「やっぱりそうなのか?」
「気づいてたんなら聞いてくるな!」
がたりと椅子を引いてレオは立ち上がると、本棚から本を抜き出す。
「レオ、その本はなんだよ?」
「呪詛返しの本だ。で?他には何かあるのか」
まだ何か相談事はあるだろうかと心なしかレオはワクワクしてクライトの言葉を待つ。
「いや…あまりユメとは話さないんだよな」
ハァと重いため息をクライトはつく。
「そもそもあまり会ってないだろう。何だってそんな奴に恋ができるんだ」
「わかんないけどさ…なんか似てるんだよな」
「…誰と」
他人のコイバナなんぞ聞いていても面白くもなんともなかったか、とレオは読書に没頭する。
「お前にかな?」
「は、あ!?」
適当に聞いた質問に返ってきた想定外の答えにレオは驚いて目線をページからあげる。
「いや、なんか影があるのを隠そうとしているところを見ると似てる気がするなって思っただけだけど。そんなに驚くか?」
「…あ、ああ。いや、うん、まぁ…すまん、なんでもない。忘れろ」
レオは動揺して、クライトに手を振ってそれをごまかす。
「は?いや、別にいいけどよ。で、どうするべきだと思う?」
「知るかっ!」
クライトに聞かれたレオは、一蹴する。
「頼むって。お前の方が明らかに経験してるんだからよ」
せがまれたレオは、呆れつつもクライトに教えてやるかと本を閉じる。
「…仕方ないな。ユメと適当な話でもしてくればいいだろ。フィリアと魔法の特訓を修練場でしているから」
「お前は来ないワケ?」
「なんで俺…そうだな、行こうか」
途中で考え直したレオは、クライトの腕をつかんで修練場へ向かう。
「そう、それ!!」
バギャンと爆音を轟かせて修練場の中で、魔法が炸裂した。
キャー!と言いそうなフィリアの歓声も響く。
「…フィリア様は一体何をやっているのだろうな?」
「知らない」
顔を見合わせてから2人が扉を少しだけ開けて中を覗き込んでみると、男装したユメを見てフィリアがニコニコと笑っていた。
それ見たクライトはレオに尋ねてみる。
「…フィリア様は何をやっているのだろうな?」
「知りたくない」
バンと扉をあけはなち、レオは中へずかずかと入っていく。
「あ、レオ!見てみて、男装だよ!」
「それは良かったな、フィリア」
ニコッと笑いかけてきたフィリアの頭をレオはポンポンと軽くたたく。
「うん、そうなの!あ、クライト君はどうしたの?珍しいね」
「え、と…まぁ、ちょっとユメに用があるようなないような…」
ゴホゴホと空咳をしてクライトはごまかそうとする。
「え、私に用があるの?」
首をかしげたユメを見て、レオは隣のクライトにコソリと囁く。
「クライト、チャンスだ。ここはガツンとやっておけ」
「チャ、チャンスか?」
上ずった声を出したクライトにレオは答える。
「チャンスだろう?…それにアイツは逆ハー願望あったし」
クライトには聞こえないようにレオはぼそりとつぶやいた。
「あ、じゃサンキュなレオ!俺ガンバってみる」
「…そうだな。フィリア、薔薇園にでも行くか?」
グッと握り拳を作ったクライトをほほえましそうに見ると、レオはフィリアの手を引いて修練場を出ていく。
「レ、レオ?どうしたの?」
「クライトがな、ユメと2人だけで話をしたいんだそうだ」
レオはニヤッと笑い戸惑うフィリアの腰へ手を回す。
「ふぅん、そうなんだ」
「つまらなさそうだな」
「だって、ユメがクライトに盗られちゃうかもしれないんでしょ?」
「どうかな。まだ、オちないと思うぞ」
レオは薔薇園の手前の方に咲いている薔薇を一輪折る。
その日の夜。書類に目を通しながらレオはクライトに成果はどうだったか聞いてみることにした。
「で、どうだった」
単刀直入に切り出したレオにクライトはしばらく悩んでから回答する。
「んー…微妙なんだよな、反応が」
「そうか…、実るといいな」
「だよな!フフ、どうやって捕まえようかな」
ニッと笑い、クライトはユメの捕獲方法を考える。
「勇者は何かと悩んでるからな。ちょくちょく聞いてやるといい」
レオもなんだかんだ言って乗り気なようで、アドバイスをする。
「あ~、今日も言ってた。妹にコンプレックスあるんだとか」
「ん。この世界によばれないといいがな。バカどもが対抗しようとして」
クックッと愉快そうに笑いレオはフラグを立ててみる。
「…ワザとだろ。ワザとフラグ立ててるだろ!?」
「どうしてわかった」
「クッ…やっぱりワザとかこの野郎!!」
「妹とやらが来たら、俺はお前が好きだよとかいってオとしやすくなるだろう?」
というわけなので、レオはクライトの恋路に協力してやろうと、裏で色々やる気満々なのでした。




