ハナイ、逃亡するも失敗しちゃうのか、な?
前向きな発言をフィリアがしていたころ、ストレスたまりまくったレオはものすごくあれまくってた。
誰も止められないので見て見ぬふりをすることに決め、優雅にお茶会を開こうかな、とか現実逃避を始める。
「ライラ…レオを止めてきてくれる?大丈夫、今のレオはすごく弱いから。お願い」
流石に庭が壊れるし止めないとなぁと思ったフィリアは、忙しく動いているライラを呼び寄せ、ニコリと笑顔を作って命令する。
「そういう問題じゃないよ。大体そんなことして止めてみ?元に戻った時が怖いよ!!」
「それもそっか…どうしようかな。ハナイ、死んでないといいんだけど」
「え、何?心配してるの?」
まさか、と思いつつもライラは椅子にちょこんと座っているフィリアに聞いてみる。
「まぁ…色々とこっちの都合って言うものもありますし?」
ぐったりと動かぬ屍っぽくなってるハナイを見て、フィリアは涙をぬぐうふりをする。
「あぁ。そういうこと」
何となく理由がわからなくもないライラは納得して、フィリアの頭をなでる。
「何するの!?」
「ちょうどいいところにあるから、つい」
「つい、でなでるなっ!!」
で、屍っぽくなってきちゃってるハナイの頭の中。
①このまま戦う
②逃げる
③決め台詞決めて逃げる
④あ、用事が…逃げる
⑤レオを餌でつる
⑥ライラを人質にする
⑦こっちも悪口を連発する
⑧戦ってかっこよく散る
⑨レオにこのままやられる
⑩フィリアと心中してみたい
⑪ライラを殺してみたい。一番簡単に殺せそう
⑫フィリアに愛を叫んでから帰る
⑬父上によばれたんで…逃げる
⑭母上によばれたんで…逃げる
⑮フィリア俺はお前のこと…大好きだからな!…叫んでから逃げる
結局逃げるんかい!!な、ハナイの脳内。
結論。⑤,⑥,⑦,⑧,⑨,⑩,⑪は例外なので…③の決め台詞で逃げることにする。
「…うん、オホン!」
レオの蹴りから転がって逃げると、ハナイはおもむろに立ち上がって咳払いをする。
一応みんな注目してみる。
「…」
注目されて、ハナイは頭の中が真っ白になって冷や汗をだらだらと流し出す。
「何?かっこつけて逃げようとか思ってるわけ。残念、逃げるのが選択肢に入ってる時点でかっこよくなんかなれないよ。大体何言おうと思ってるの。そういうときの台詞ってさ、例外なくフラグ立ててくか、ダサいもんになるよね。いつまでもフィリアに付きまといやがって…いい年下大人が!お前、今何歳だよ?リランさんと同い年だよな。ということは…28歳?うっわ、ロリコンかよ。一回りは離れてるっつーの。キモイ。リランさんはかっこいいから許せるよ?フィリアの兄さんだし。だけどさぁ…お前、本当になんなの?あのバカ女も惚れただとか抜かしやがってたけどよ。俺にはお前のいいところなんかこれっぽっちもわからねぇな。家柄と顔だけでのしあがってきちゃいましたーって感じ?俺にも勝てないくせに、フィリアに近寄ってんじゃねぇよ変態さん?おっと、変態さんはロリコンさんって言われた方が嬉しいかな?アハハハハ」
そんなハナイをレオが嘲笑する。
「荒れてますねー」
「ですね」
離れたところで傍観しているフィリアとライラは呑気にレオの荒れっぷりを観察する。
「で、そんな変態ロリコンハナイ君に俺が仕方ないから一つ助言してやる。いいか、こう言え。私は、レオ・緑葉にはかなわない…かなうはずがないので帰らせていただきます。もうこれ以降は王女に告白なんてことをしには来ません。はい、どーぞ」
「私は…って言うか―――!!」
「バカじゃねぇの。言えば?って勧めてやっただけで誰も言えなんて言ってねぇし。自分から言っといてその態度はなんな訳」
フンとレオが鼻で笑って顔を赤くして起こるハナイに追撃を放とうと口を開いたとき。
ピッカーん。とあたりが眩く光った。
「あ、戻った」
光りが収まると、フィリアとレオの姿が元に戻っていた。
「で?言うの、言わないの?帰るのか?」
腕組みをして、レオはハナイに選択を迫る。
「か、帰らせてもらう!!うわーん、ママ――!!」
泣きながらハナイはワープして闇の国へ帰った。
「…マザコン」
「おそるべしマザコン」
最後のハナイの言葉にレオとライラは驚きの声を漏らす。
「私のハナイ君に何をしてくれてるの!?」
黒いドレスをまとった厚化粧気味のヒステリックなおばさん登場。
「ママ、キター!!」
「来るの早っ」
「というかいつの間にかラックとフェティーナがいなくなってるな」
それはレオさん、君がいじめまくったから泣きながら変え絵って言ってましたよ、フェティーナが。とは口が裂けても言えないライラ。押し黙る。
「ラックはね、アー兄様から連絡が入ったーってしょんぼりしながら戻ってってたよ」
ヒステリックなおばさん無視してフィリアはレオに嬉々として伝える。
「何か嬉しいことでもあったのか?」
「ううん、別に!」
「わたくしを無視しないでくださいまし!!大事なハナイ君になにをして!!」
ギャーと甲高い声でおばさん、わめく。
「るせぇな、ババァ」
いつになく言葉遣いが悪いレオ、おばさんを睨みつけつつ言う。
「レオっ!?」
焦ったのはフィリアだけでした。
「言っちゃえ!!もっと言うんだ、レオ!!私の代わりに!!!」
ライラは、声援を送って油を注ぐ。
「ハナイもろとも消しクズになれ!!せっかくすっきりしたところだったのに、邪魔しやがって…息子が息子なだけに親も親か。あれだな、親の顔が見てみたいよって奴?ああ、親だから…息子の顔が見てみたい、の方がいいのか」
ヒステリックなおばさん、名前すら出てこないまま、レオが放った雷に貫かれて消え去った。




