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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第22章 リナさんの恐ろしい機械
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小さいレオ、より一層黒さを発揮

リカルドが照れ隠しなのか、オルノを弄り倒すという行為が30分続いた。

徹底的にオルノを打ち負かしたリカルドは一回深呼吸をする。


「ガキ、それからフィリアは裏庭にでも行って来い。補佐…は、あー…ラ、ラー…ラッタ?かなんかと遊んで来い」


ライラの名前もラックの名前も思い出せなかったリカルドは適当な名前を当てはめて指示した。


「ラックさん…不憫」

「不憫って、補佐で済まされているお前もそうなんだけど?」


腕組みをして、立っていたリランがつぶやいたライラに不満そうに言う。


「ああ、いいんですよ、もう。割り切りましたから」

「リカルド…相変わらず君は男の名前を憶えないねぇ」


リカルドに泣かされたオルノが、呆れたように漏らす。


「男の名前なんか憶えてどうする気だ?」

「あのねぇ…っていうか今日はどんな用事なの?」

「ああ、レザエラの解呪方法が一つ分かった」


なんてことのないようにリカルドはオルノへ伝える。


「先にそれ言おう!!ねぇ、それを先に言うべきだよ!?」


それを聞いたオルノはリカルドへつかみかかってわめく。


「…教えないぞ」

「ダメだよ!それは困る!!」


オルノにつかみかかられたままリカルドは廊下を進んで奥の方へときえた。


「レオ君、お庭にいこっ!」


ずっと押し黙っているレオの手をつかむとフィリアは庭めがけて走り出した。


「ちょ、と!?」

「ライラはラックと遊んで来い。大丈夫、庭には二羽鶏がいるからな」


ファイナは追いかけようとしたライラの髪を引っ張って引き寄せる。


「それ、早口言葉じゃないんですか」

「違うぞ。いつだっだかの王が作った警備精霊で、アイツらの目を盗んで庭に入ってきたやつはいない。いたとしても、くちばしにつつかれて凄くイタイ思いをして退散していく」

「…そうですか」


ビジョンが浮かびません。すごくマヌケなビジョンしか浮かびません!と思いながらもライラはラックの元へとトボトボ歩いていく。





















「レオ君?どっかイタイ?」


スッと黙っているレオを見て、フィリアは心配そうに顔を覗き込む。


「大丈夫…。そう、大丈夫だから」


緑の瞳に暗い光をともして、レオはフィリアから遠ざかる。


「大丈夫なの?」


フィリアはそれでもくじけずにレオへと近づこうとする。


『フィリア様。そいつにあまり近づかない方がいい』


金色の鶏が赤いとさかを広げながらフィリアとレオの間に割り込んだ。


『フィリア様。そやつ、黒い存在だ』

「黒いのかな?」


黒い鶏も、羽を広げてフィリアの前に立ちふさがる。


『あまりいい波動を放っていないのです。思い悩んで、曲がりそうな。貴女には悪い影響になってしまいます』

「そんなことないよ?だって、綺麗だもん。綺麗な緑!邪魔、しないで!」


フィリアが前に進むのを阻止してくる鶏二羽に怒って魔力をぶつける。


鶏は「こけー!」と泣きながら、空の彼方へと飛んで行った。


「…あのな、フィリア。ちょっとどうかと思うんだ、それは」


ハァとため息とともにレオは呆れた声を吐く。


「やっと喋った!」


キラキラと目を輝かせてフィリアはやっとしゃべったレオに近寄る。


「まだ、リナさんの影響下か。…なんとか記憶を失うのだけは、避けた」


小さくなった手を見て、レオは悩ましげにつぶやく。


「不便だな。魔力が全くないし、言霊も発動できない、となると…」

「レオ君?だいじょうぶ!魔力ならいっぱいあるから!」


青くまぶしい光を放つ魔力をフィリアは空気中から集めてレオに向けて放つ。


「…その手があったな。前も、そうだった」


褒めて褒めて!としっぽを振りそうな勢いで抱き着いてきたフィリアを受け止め、レオは抱きしめる。


「3歳児コンビ―――!!何やってんのー!」


上からライラが降ってくる。

バク転して、綺麗に着地を決めた。


「すごーい!」

「フィリア、おいで!!」


レオから離れて目を輝かせたフィリアをライラは呼び寄せる。


「わー!!」


寄ってきたフィリアをライラは抱上げる。


「今の私ならレオに勝てる自信あるよ!!」


フフン、と3歳児に勝ち誇るライラ。


「…どうだか。お前に負ける気はしない」

「くっ…フィリア、聞いて!私ね、龍の混血なん」


更に勝ち誇ろうとしたところ、ライラはレオに言葉を上からかぶせられた。


「嘘だ、ありえない」


グッサァと見えない矢印がライラのハートに突き刺さった。


「ひ、ひど…い」

「レオ君、本当だと思うよ?だって嘘つけなさそうだもん」

「それも、そうだな。確かに…」


値踏みするようなレオの視線がライラに突き刺さっていく。


「雷石を持っている時点でモノに頼ってる感あってなさけないし?ケンカ売ってくる時点で馬鹿だし?」


グサリと音がしそうな勢いでレオが放つ言葉の棘がライラに突き刺さっていく。


「酷いや、ちびレオ!!」

「ライラ、いきなり落ちて…一体何があったの?」


ライラが窓から飛び降りたので、慌てて追いかけてきたラックは、レオがライラをチクチクといじめていてそれをフィリアがニコニコと見守っているって言ういつもの風景に呆れる。


「ライラ…小さい子にも負けたんだね」


2文字でそれぞれを表していくと、レオ(黒笑)、ライラ(泣き)、フィリア(微笑)、ラック(呆れ)。


「ダメでしょ、ライラをいじめたら!!」


上からフェティーナが降ってきて、レオとライラの間に降りたつ。


「いじめてなどいない」

「ム、無自覚…だと!?」


ライラ、レオの回答に戦慄。


「そんな訳ないでしょ」

「別に…俺の方が偉いんだからいいじゃないか」

「そうだけど…っていいわけがない!」


同意しかけたフェティーナ、慌てて首を横に振って否定する。


「今、同意しただろ。俺、偉いよ?」

「レオ君。おねーさんが死にそうなほど落ち込んでる」


ガクリと膝をついて涙を流すライラを見て、フィリアは微笑を作ったままレオに報告する。


「…アハハ。ダサ」


グサグサグサ…すごい勢いでライラに心理的な棘が刺さっていく。


「ラ、ライラ!しっかり!大丈夫、ださくないわ!」


フェティーナが慌ててライラをフォローする。


「ライラ、僕がいるから…悩み事はなんでも打ち明けて。相談、乗ってあげるから」

「神様なのにさぁ、なんで簡単に地上に降りてきちゃうかなぁ。こんなとこ来てていい訳?」


レオは、ストレス発散の標的をフェティーナに移す。


「暇だからよ、悪いかしら」

「悪いんじゃないか?神様が暇って…ハッ!?もしかして能無し?」


小さい子ぶってレオはフェティーナをイジメル。


「うう…あうう…」


見た目がかわいいだけに、フェティーナもんのすごく落ち込む。


「さよなら、神様。きっと紙みたいに薄っぺらい存在なんだよ。信仰心ってそんなもんだよね」


ニコリと天使のような笑みを浮かべてレオはとどめの一撃を放った。





「呼ばれて飛び出てじゃじゃーん!!よろしく、ハナイです!」


どさくさに紛れてハナイ登場。


「頭に花が咲いちゃった?名前みたいに?もういっそハナイじゃなくてさ、イをとってハナって名前にしたら?結構似合ってるんじゃない?おすすめ。あー、でも、ちょっとかわいそうかな。スッごくかわいそうかも。滅茶苦茶憐れんであげるね。今の俺はすごく寛容だからさ。虫けらにも慣れない埃以下で塵以下空気以下の存在が、俺みたいな王道主人公に勝てるわけないし?噛ませ犬にすらなれないとか…カワイソ。ってかお前ってさ、マゾだったりしちゃうの?なんか毎回懲りずに来るけど…ドM ?うっわ…キモ。フィリア、絶対に近づいちゃだめだよ。穢れちゃうから。って言うかさ、毎回思うんだけど、お前殺してもメリットがない気がするんだ。だって、生きててもメリットもデメリットもないような奴なんだからさ、殺したところで何かが変わるかって言うとそんなことないだろ?なんかさ、汚いものにさらってしまったって言うデメリットしか残らない気がするからいやなんだ。あ、でも…しいて必要性が感じられないけどメリットを見つけてあげるとさ、世界のためにはなったりとかするのかな?少しでも空気をけがす奴がいなくなって良かったねって言う?なぁ、どうだと思う?虫けら以下埃以下塵以下空気以下のハナイ君?」


ライラ、フェティーナと続いてハナイもレオのストレス発散毒舌の餌食となる。

もう、3人ともハートがボロボロ。言ってる内容は大したことないような気がするんだけど、幼い容姿で言われるとメッチャめちゃ傷つくって奴。


「フィリア様。レオ様を止めてきてくださいませんか」

「無理なんです。今回は、最初から記憶があったんだけど、面白いからって無理して小さい子になってましたけど、ちょっと無理なんです。ああなったレオ君はだれにも止められません。というか止めて巻き添え食らいたくありません。レオ君私にだけは甘いけど、色々と後で食らうお仕置きが黒くって怖いものになるので」


ラックの頼みを長文で断るとフィリアはレオからジリジリと遠ざかっていく。


「…君付け?」

「ああ、ノリだよ」


サラッと元の口調に戻すと、フィリアはハナイを足蹴にして勝ち誇った笑みを浮かべるレオを見て安どのため息を漏らす。


「フィリア?ため息をつくと幸せが逃げるよ」

「ライラ、そんなことはないと思うんだ。ため息ごときで幸せが逃げるわけないじゃない。むしろ、ため息をついた分だけ、幸せを作ってくんだから!」


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