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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第22章 リナさんの恐ろしい機械
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あーららあららー。ハハ、バァカ

「だ、誰か輸血パックを!!」


尋常じゃない量になったライラの鼻血に、教室にいた男子生徒が慌てる。

だが、輸血パックなんてものっを持っている奴がいるはずもなく。


「まぁ、もってはいるがライラごときに使ってやる必要はないな」


廊下から戻ってきたレオは持っているようだが、ライラに使わせてあげる気がない。


「ふぁ…ネム…」


小さく欠伸をするとフィリアは鼻血をだらだらと垂れ流しているライラに片手を振って止血の魔法を施す。


「あ、ありがとフィリア」

「寮に戻るか」

「うん」


レオが伸ばした手をフィリアは嬉しそうに握りしめて、寮へ歩き出す。

クマ人形は床を引きずられて心なしか黒ずんで行っている。


「ああ…クマが!まぁ、かわいいし絵になるからいいけど」


ポケットからカメラを取り出したライラはレオとフィリアのツーショットをとりながらついていく。























場所は女子寮ロビー。

階段あがるのはめんどくさいので、エレベーター的なものを待っている3人に、ロビーでだべってる女子たちの視線が突き刺さる。


「か、かわいい…」

「なんだ、あの子!!」

「いやそれよりもレオ様かっけぇ」

「ってことは…フィリア様!?」

「レオ様とフィリア様の子供かな?」


これらはましな方。


「フィリアたんハァハァ」


これも、まだセーフ。


「フィリア様のきょにゅ…は、ないのか。残念だわぁ」


・・・ま、まだセーフ。


「フィリア様ぁ。うう…縛りたい。監禁したい、私に笑いかけてもらいたいですぅ」



「アウトォ!!さ、さっきから、何言っちゃって!?正気ですか!?」


聞き流しきれなくなったライラは最後の発言者(おそらく高校生)に叫ぶ。


「ライラ、しぃー」


人差し指を口に当てて、フィリアは叫んだライラをなだめる。


「ってかさ、ここ女子寮なんだけど、レオ?」


レオは、男子です。いや、当たり前なんだけど。

ここは、女子寮です。基本的に男子は入れません。

ではなぜレオがいるかって言うと、かっこいいから。それから皇太子だから。

レオは権力と美貌使って寮監を垂らしこんで、顔パスっていう状態を作り上げたのだ!!


「レオーレオレオ~」


何やら上機嫌のフィリア。レオの名前を連呼中。


「なんだ?」

「んとね、呼んでみただけだよ!」


ニコニコと笑うとフィリアはレオの腕にしがみつく。


「フィリア…あのな」


何か言いたげなレオの口をフィリアは指でふさぐ。


「やだ!」

「…まだ何も言っていない」

「いやなの!」

「…そうか」

「いや、納得するなよ!?」


頷いたレオにライラはビシと腕を軽くぶつける。


「フィリア。ちょっとこっち向け」


それを受け流すとレオはフィリアから腕を話し、位置を入れ替えるよう指示する。


「んー?」


正面で向き合ったフィリアの腹部にレオは素早く手を差し込んで、体内を探る。


「な、何していらっしゃるの!?」

「緊急だ。今じゃないと遅い」


目的のモノを見つけたのかレオはフィリアの腹部から手を抜いた。

その手に握られていたのは黒い光を放つ禍々しい石っぽい何か。


「な、なんですかそれは!!」

「お前の幻術のせいだ、と言っておこう」


崩れ落ちたフィリアを支え、抱上げるとレオはその石っぽい何かをライラに放り投げる。


「うわっ!」

「ライラ、と名前が記入されている。以後気をつけろ。お前の名を悪用させるんじゃない」

「えっ!!」


しげしげと石っぽい何かを眺めるとライラは恐ろしくなり、それをレオに放り投げ返す。

飛んできた石っぽい何かを異空間に収入すると、レオはタイミングよくやってきたエレーベーター的なものに乗り込む。


「わぁ、待って!」


ライラも置いて行かれないように、と急いで乗り込む。


「…早く、リナさんの機械効果が解けるといいんだが」

「そっすねぇ」


それはもったいないという表情を浮かべてしまったライラはレオに睨まれることとなった。


























部屋にて。


フィリアを寝かせて、レオがそろそろ帰ろうか…などと思案していたら。

いきなり明かりが落ちて、部屋の中央に人影が現れた。


「じゃじゃーん!と参上!あなたのそばにいつもいるハナイですっ!って、ゲッ!?レオ!?」


ハナイでした。おかしな口上を述べたハナイは、レオが腕組んでフィリアのそばに立っているのを見て顔色を変え逃げ出そうとする。


「おい…人の顔を見て逃げようとするのは失礼だぞ」


脱兎のごとく逃げようとしたハナイの襟をつかんで引き寄せたレオは残忍な笑いを浮かべる。


「ぐふぁ!?」


いきなりレオに鳩尾を殴られたハナイは、体をくの字に折り曲げ苦悶の表情をする。


「っていうか、いつもあなたのそばにって…ストーカー」


汚物を見るような顔でライラに見下ろされたハナイは弁解をしようと口を開く。


「そんなことはっ!!フィアがかわいいのがいけないんだ!」

「てめぇ、誰のせいにしてんだよ、オイこら!」


寝ているフィリアの体を乗っ取ったフェカが、それを聞いて激怒した。

フェカは立ち上がってから、妙に視線が低いことに気づいて首をかしげる。


「…リナさんに文句はいえ」


なぜかフェカに睨まれたレオはハナイが逃げないよう目を光らせつつ、原因となった人物に押し付ける。


「リナか!あんのバカ女…面倒なことしてくれるじゃあねぇか!が、とりあえずは其処の変態だよな。ストーカー野郎」


ビシリと指をハナイに突き付け、フェカはニマリとゆがんだ笑顔を作り出す。


「フェカ。あまりフィリアの体でそう言う表情をするな。あと、フィリアは3歳児だぞ。どうやって戦うつもりだ」

「んぁ?」


フェカはキョロキョロと部屋を見回す。


「で、どうするんだ?魔力量だったら、実体化した方があると思うぞ。絶対に」


レオは強くフェカへ実体化を勧める。


「それもそぉだな」


思う所があるらしいフェカは実体化して、眠ったままのフィリアをそっとベッドへ寝かせる。


「ライラ…お前の魔力頂戴」

「どうやって!?」


ボーと突っ立ってたライラに目を止めたフェカは舌なめずりをして、近づく。


「ハナイ君?どこへ行く気かな?」


そぉっと今のうちに逃げ出そうとしたハナイにレオの友好的に聞こえてしまった声がかけられた。

蛇に睨まれた蛙のようにハナイは動きを止めた。




その一歩でライラもライラで、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。


「ちょ、な、なにをするき!?私龍の子食べてもおいしくない!!」

「龍の子だからうまいんだよ」


ライラの手首をつかんで壁に押し付けるとフェカは、拘束する。


「ぎゃあああ!!いやぁ!フィリア、助けてっ!私の貞操!ラックさん、ごめんなさい!!赤の他人に私は初めてを奪われちゃうのです!!」

「ライラ、うるさい。黙ってろ。フィリアが起きるだろう」


フェカに迫られて叫び声をあげたライラに助ける気とかないレオが黙るよう言霊をかける。


「初めてとか…とっくのとうに奪ったけど」

「え」


あ。そういえばファーストキスはコイツだったぁ!?しかも去年!忘れてたぜっ!



フェカが何したいか思い当ったライラは押し黙って、時が過ぎるのを待つことにした。


「…んー。興が逸れるっつか」


ハァとため息をつくとフェカはライラの拘束を解いて、レオに遊ばれているハナイに向き直る。


「ちょ、おい!?何さ、なんなの!?あそこまで言ったらキスしろよてめぇ!興が逸れたとか何!?あんた何様!?神様とか答えたら丸こげにしてやるんだからっ!ハナイをっ!!」


やり逃げではなくてやらない逃げをされたライラはフェカに怒鳴り散らす。


「え、僕ですかっ!?」


ライラに八つ当たり対象認定されたハナイは心底意外そうに驚きの声をあげた。


「ハッバァロ。俺は神様なの。誰になんて言われようがこれだけはくつがえさねぇからな。はい、ハナイ君お仕置きけってー」


それだけ言うとフェカはゲラゲラ笑い転げる。


「ぎゃああ!!あばばばば!」


ハナイ、ライラの電撃食らって力尽きる。


「奇しくも昼間のライラのようだ」


レオはボソリと呟くといまだに笑い転げるフェカへ蹴りを一つ打ち込んで知らん顔をする。


「何すんだバカレオ!」

「さぁーな。見ててむかついただけだ」


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