着せ替えタイム!
「生きてるーぜっ!!しっぽもーらい!」
身を勢いよく起こすと、ライラは腕組みをして立っているライのマントを翻そうと手を伸ばした。
「甘いなっ!《石化》!!」
あらかじめ組み上げておいた呪文を発動させ、ライはライラを石にする。
ピキリと音を立てて動かなくなったライラにフィリアはそっと声をかけてみる。
「ラ、ライラ!?」
「バカだな」
呆れたようにレオは石化したライラの頭をこつんと叩く。
「ええと…兄様、これはどうしろというんですか?」
固まっているライラを指してフィリアは尋ねる。
「部屋から出れば解ける」
「わかりました!」
さっさと出ていけ、とライの言葉を受け取るとフィリアはレオにライラを担がせて、部屋を出る。
「ちなみに、ライさん。何の動物だったんですか?」
ドアの向こうでレオはライへ面白そうに聞く。
「誰が教えるか、バカ」
ライの返答にレオはニコリと満足して笑うとドアを閉めて、ライラを廊下に放り投げる。
フィリアは、レオに放り投げたライラを再び担がせ教室まで連れて行かせる。
「ライラー、ライラー」
「う―――?…ハッ!!チビフィリアが!かわいー!!」
ペチペチとフィリアがヤル気なさそうにライラの頬を叩いて起こす。
で、起きたライラはフィリアの姿を見ると、感激して抱き着く。
「ヒッ、キャアアア!」
フィリアはかわいい悲鳴を上げると、ライラにつぶされる。
「《月詠》!フィリアに幻術かけたからぁお洋服着せ替えないとねっ」
そこにすかさず幻術をかけ、眠らせるとライラは幸せそうに宣言する。
「ライラ、あまり弄るなよ」
止める気は内容で、レオは軽い忠告をするだけで座ったまま動こうとしない。
「ラ、ライラ…後で…殺す」
ギリと軽く歯ぎしりをしてフィリアは寝言を呟いた。
「えっ!?ど、どんな夢を見ていらっしゃるの!?まぁいーけどぉ。フィリアにいろんな服着せてっ!」
ワクワクとライラはフィリアにいろんな服を着せて行った。どんな服が合ったのかは、述べないが。
最終的に『猫耳フード付きの白い寝巻、髪は青いリボンで結んでいて、同じ背丈くらいの白いクマ人形をもたせる』に落ち着いた。
「フッ!やり遂げたぜ」
イイ笑顔を浮かべるライラに一部始終を見守っていたレオは失笑して肩を小刻みに震わせているフィリアに温かいまなざしを注ぐ。
「ラ、ライラめっ!!この場にいるレオを除いた全員!!明日ぶっ殺すっ!絶対!王女である私にこんな屈辱を…!」
フルフルと震えるとフィリアはクマ人形片手に叫んだ。
「凄んでもねぇ。その姿で言われても怖くないぞぉ」
ニマニマとライラは笑う。
「フィリアかわいいよ。たまにはそういう姿も悪くない」
ニヤッとレオは笑い、フィリアの頭を優しくなでる。
「っ…!へ、へんっ!わ、わた、私はねっ!こ、こんな姿はい…嫌、なのっ!!」
赤面したフィリアは動転してかなり噛みつつ、レオの手を振り払う。
「かわいい」
そんなフィリアを抱きしめるとレオは微笑を浮かべる。
「レオの、キャラ崩壊来ましたっ!!イエスっ!この、完璧野郎がっ!ロリコンにまで評価下げちまえっ!!」
フハハハとライラは高笑いしてレオを指さす。
「こ、のっ…ううう!!」
レオをなじろうとしたフィリアは言葉が全く浮かんでこなかったので、呻き声だけで済ませることにした。
「ライラ?俺はロリコンなんかじゃない。失礼だろう?それとも銑川家にはそうやって人を馬鹿にする風習でもあるのか?」
フィリアの謎なうめき声はスルーして、レオは失礼なことを言い放ったライラに高笑いを返す。
「フッ!あるともっ!!もちろんあるさっ!!」
ライラは高笑いを返されたので更に高笑いして返す。
「へぇ。それは良いことを聞いた。では今度ラキのことでも詰ってあげようか」
その高笑いには応えず、レオは攻め手を変える。
「ほぉらロリコンなんじゃん!!へっ!フィリア、聞いた?今、レオが浮気したよ!しかも私の妹!!」
ライラはレオの言葉を聞くと、即座にフィリアへ嬉々として告げ口する。フィリアも聞いているはずなんだけど。
「レオは浮気しないよ?だって浮気できないもん!ねー?」
形だけの笑顔を作るとフィリアはレオに笑いかける。
「フィリア…目が笑っていない。でもそういうところもかわいい」
「う…わーわぁ―――!!」
自分が言ったことなのに、フィリアはパニクって手に持っていたクマ人形を振り回す。
「あ、あぶっ、首がもげるぞフィリア!無残なクマになる!」
レオは慌ててクマ人形を受け止める。
「キャアアア!!レ、レオの変態さん!!うわぁあああ!!」
悲鳴を上げると、フィリアはクマ人形を強引に振り回そうとする。そのせいでクマ人形の首から嫌な音が聞こえ出す。
「俺は変態じゃない。フィリア、クマ人形が壊れそうだ」
「し、知らないよ!」
「ちなみにこのクマはな」
「うん?」
疲れた感じのレオがフィリアにゆっくりと告げる。
「グリンダさんお手製のものだから、例のごとく壊したり手放したりすると爆発する」
「…そうなの」
大人しくフィリアはクマ人形を振り回す手を止めた。
そして、最後の抵抗とばかりにクマ人形の後ろに隠れる。
「く…」
律儀にクマ人形もって、上目づかいでうかがってくるフィリアにレオは理性を飛ばさないよう必死で耐える。
「ちょ…と、タンマ!」
流石に理性が飛びかけたレオは教室の外に逃げた。
「あれ、レオ?」
自分に素直なライラは鼻血を手で押さえながら、レオを追おうとしたフィリアを引き止める。
「フィ、フィリア。レオが死ぬからそこら辺で、ね?」
「ライラ鼻血、大丈夫?」
「うん、フィリアがそれ止めてくれたら」
だらだらと鼻血を流してライラはフィリアの視線から逃げるように顔を逸らした。




