友達になる為には…?
ここはリスィエル王国、通称青の国とか青国にある全寮制の学園、アリア中学高等学校中等部にある1年3組の教室。
ついでに、今は7月。そして放課後。
「えーと、この間の任務に点数が入らないって本当?」
アリア学園には『任務』という授業制度があります。『任務』をすると、『任務』ごとに決まっている点数が成績に加担されます。
任務次第ではテストの点数が悪くっても進級出来ちゃったりとかするんです。
さらに任務はチームを組んで行うことができます。1チーム最大4人までで、チームを組むと寮の部屋が、当たり前だが男女別々で同じになります。
『任務』で得られる点数は最大1,000ポイントまでつきます。
さて、声を上げた少女ですが教壇に腰掛けているかなり悪い子です。
少女は、半袖の白いシャツに青色のかなり大きいリボンを首に巻いていて、水色の生地で裾の方に白い横線が入ったミニスカの下に、白い短パンを履いている。靴下は腿くらいまでの白いもの、靴は革靴というかなり自由な服装。この学園制服は校章さえついていれば個人の自由なのだ。
彼女は長い銀髪をポケットから取り出した青くて細いひもで高めに縛ってから、目の前に立っている色々な方向にハネている金髪に明るい黄眼の身長155センチくらいの少女に、碧い瞳を向けて今聞いた信じられない情報を確認しました。
真っ直ぐ伸びた銀髪、冷たそうな心の色を現したとか言われる碧眼の少女はフィリア・スィエルムーン。
優等生で、魔法とか剣技とか特殊能力とか使えます。色々とパーフェクトです。
…ある部分を除いて、ですけど。
彼女は友達がおっそろしいほどまでにいません。と言うか、皆無です。
今、話しているライラ・クレイクだって、友達ではない。ライラが一方的に纏わりついてくるので仕方なく付き合っているだけの話。
前回の任務だって2人いないと行えなかったので仕方なくライラとやってみただけ。
そんなことをしていたら、ついたあだ名が『一匹銀狼』。
彼女の歳は13歳で7月7日生まれ。
成績の方は5段階評価―――特待生、3つ星、2つ星、1つ星、星なし―――のなかで、トップの特待生。これも友達がいないのに輪をかけています。
で、そんなフィリアが付き合っている唯一の人間と言っちゃっても嘘にはならないのは、ライラ・クレイク。
彼女も同じく13歳の特待生。
平均より高い能力で、野性的な勘を備えた人。7月8日生まれで、フィリアと一日差。運動神経抜群で、50m走3秒。ちなみにフィリアは5秒。
結構フレンドリーで、誰とでもすぐに友達になる。この特技(?)のお蔭で、フィリアと話してる唯一の希少人間となっている。
趣味は嫌がるフィリアから、無理矢理本を借りること。
「いいじゃん、いいじゃん。気にすんな~」
「それもそうだね。じゃあ、また明日」
ライラに言われてすぐうなずいたフィリアは確かに冷たいのかもしれない。
トンっと教壇から、降りると教室を横切って自室に帰っちゃいました。
「ちぇ!つ~ま~ん~な~い~!!…じゃ~、しょーがないから帰るか」
ライラも帰りました。
―夕食時―
「いっただっきま~す!」
ライラは友達のセノーテとソフィーと夕食を食堂で食べています。4人がけ机で。
「ん、でね。今日は~」
今日のことを色々話しながら食べています。
セノーテは下のほうがグルグル巻きになっている緑髪に緑眼で、ソフィーは少し明るい茶髪茶眼の2人とも150センチ周辺です。
「今日のフィリアさん、凄かったね!だって、罰則担当のボクワ先生を素手で倒しちゃうんだもの!私、ビックリした!」
そんなことをソフィーが感激顔で言った時、ふと顔を上げたライラはフィリアが疲れた顔でお盆を持ち向こうを歩いているのを見つける。
「あ…。噂をすれば、なんとやらだ。お~い、フィリア!」
ライラが叫ぶと律儀にも彼女はやって来た。
「…何か?」
「もうご飯食べたの?食べてないんなら、一緒に食べよ!」
「見ればわかるんじゃないの?まぁ、別にいいけど…そこの2人は迷惑じゃない?」
「まっさかぁ!ね、セノーテ、ソフィー?」
ライラが楽しげに笑いながら2人へ聞いたけれど、その瞳には迷惑とかいったらぶっ飛ばす的な光が宿っていた。
「じゃあ…」
フィリアは丁度ライラの隣が空いていたのでそこに座る。
「それ、なぁに?」
彼女が持ってきた、何の肉だかわからないがステーキのような料理にセノーテが興味深々で問いかける。
「さぁ…?良く分からない。…兄さんが持ってきたから…」
「嘘ぉ!フィリアさん、お兄さんいたの!?しかもこの学校!?」
今度はソフィーが食いついた。
「いや…別に、どこにでもいる普通の人だし…」
フィリアが気まずそうに視線を伏せて、ご飯を食べ始める。
「す、すっごい綺麗に食べるね。何処のお譲さま!?って感じ」
セノーテがそれを見て隣のソフィーに小声で話しかけた。
「あ、あれ2年3組のライさんだ!相変わらず、カッコいいなぁ!」
しかしソフィーはセノーテの言葉を全然聞いていず、フィリアの背後から音を立てずにそっと近づいてきた金髪蒼眼の160センチちょいの男子をうっとりと眺めた。
そしてそれを聞いたフィリアはバッと後ろを向きつつ立ち上がると、ライに向かって拳を振り上げる。
「フィ、フィリア!?ちょ、な、何して…」
焦ったのはライラ達3人。
彼女の拳は、ライが一歩足を後ろに引いて避けた為、3人の予想に反して彼には当たらず空を切る。
そして彼は楽しそうにフィリアへ笑いかけながら告げた。
「まだ俺の方が強いな。体がなまってんじゃないのか?学園入ってから、サボっているだろう?」
「ム…」
フィリアは悔しそうに椅子に座りなおした。
「大体、俺の接近に気付かなかったんだろ?甘いな」
「兄様が強すぎるんです。っていうかこのご飯は何ですか?不思議な味がするんですが…」
彼女がボソッと最後の足掻きのように呟いた言葉はライラ達3人を驚かせるだけだった。
「えっ!?ライさんの、妹!?」
「と言うか、普通の人じゃないし…」
「う~ん、ご飯おいしそうだなぁ」
「「そういうこと今言わないで!!」」
ライラが空気読まずに呟いた言葉にセノーテとソフィーが同時にツッコミを入れる。
「人に夕食をとってくるよう頼むのが悪いんだ。…ああ、そうそう。これをやれだってさ。誰かと一緒にチーム組んでだと」
ライはポケットからとりだした任務内容が書かれている紙をフィリアに渡す。
「…はい」
それをフィリアが嫌そうに受け取るのを確認するとライはニヤッと笑う。
「じゃ、俺はここで。友達は大切にしろよ?」
「兄様にだけは言われたくない…」
再びフィリアが呟く。
「フィリアよりはましだ。それじゃあな」
ライは屈みこみ、フィリアの耳元で囁いてから食堂を出て行った。
「か、カッコいい!!あんな人がお兄さんだなんて羨ましいなぁ!しかも、兄様って呼んでるの?凄いね!何処から来たの?って感じ!」
ソフィーがフィリアの手を取りブンブン振って興奮しつつ叫ぶ。
「あ、それでさ、その任務なんて書いてあるの?」
「え…いや、内緒」
興味深々で聞いてきたライラからフィリアは慌てて紙を遠ざける。
「えっと、何々?『青の国王宮に行って、国王様から任務を聞いてこい。同行者、チームの1名必須』…凄いじゃん!これ、1年生が受けられるような任務じゃないよ!?」
が、セノーテに奪われ音読された。
「えっ、じゃあ、私一緒にやりたい!」
ライラは彼女の言葉を聞いて嫌そうな顔になったフィリアの腕をつかむ。
「………」
「いいよね?うわぁ~い!やったぁ!」
「嫌だ」
勝手に決めて、返事もしていないのに、喜んでいるライラを見てフィリアは短く言う。
「でも!1人必要なんでしょ?誰とやるの?」
「こんな任務やる訳ないでしょ。くだらないじゃない。王様なんて…。ごちそうさま。それじゃ、また明日」
かたんと椅子を引いて席を立ったフィリアは任務内容が書かれている紙ゴミ箱へ捨てようとする。
「あ~!!だめ!一緒にやろうよ!」
ライラが大声を出してフィリアを止める。
「私はあなたとチームを組む気もないし、任務もしたくないの。分かった?」
叫んだライラへ一線を引くように、静かに拒絶したフィリアへ彼女は、その線をものともせずに踏み越えて言い切る。
「これは決定事項だから変えることはできませーん!残念でしたー!」
ライラは唖然としているフィリアから紙を奪い取って紙の最後の欄へ署名した。
「はぁ?ってちょっと!それどうする気なの!?」
「先生に持って行って、フィリアと一緒にやりますって言うんだよ。決まってるでしょ」
「だから嫌だって…」
ライラはなおも言い募ろうとしたフィリアを遮って言った。
「ほぉ、フィリアはライさんが言っていたことなのにサボれるんだ。凄い凄い!」
「…分かった。しょうがないからチームを組んであげる。でも、これだけは言っておくから。足手まといにはならないで」
こうしてフィリアはライラと同じチームになりました。
とても険悪なムードが漂っているけれど




