完璧なる負け惜しみですがなにか!!もう、いいんだよっ!
夕食をとってきたレオは隣に座らせたチビフィリアがライラが食べるパスタ見て目を輝かせているのを見て、苦笑する。
「フィリア、ケーキならあるぞ」
「けぇき!!食べる!」
笑いながらレオはチビフィリアの前にショートケーキを置く。
「…どっから?」
「とってきた」
「レオが!?」
サラリと言われた言葉にライラは目をむく。
「お前には関係ないだろう?」
「まぁ…そうなんだけど。ところで、レオ。ハナイ対策は?」
ライラは食堂で斜め向かいに座るレオに尋ねます。
「ハァ?わざわざする必要なんてないね。フィリアを3回もつれさらわせる気はない」
「いや、だったらなおさらした方が…」
ため息をつくと、レオはフィリアに渡そうとしていたフォークをライラに突きつける。
「王家の守護壁なめるなよ」
「…どういう意味で?」
「レオぎょーぎ悪い」
レオとライラの真剣(?)な話し合いに若干チビフィリアが飽きたらしく口を尖らし始めた。で、レオからフォーク貰おうと一生懸命手を伸ばす。
「まず、ハナイをぶち殺す。終了」
そんなチビフィリアにフォークを渡すとレオはもう一度ため息をついてライラに説明してあげた。
「怖いよ。っていうか…」
ハナイってそもそも生きてるんだっけ?とライラは首をかしげてしまう。
「はないってだぁれ?」
「フィリアが気にするようなことじゃないよ」
チビフィリアにかわいらしく頭を預けられたレオは微笑して答える。
「そなの?レオ、強い?」
「…どこからその質問に?」
チビフィリアの問いにレオは質問で返す。
「泣いてたから?」
チビフィリアからは疑問形で返ってきた。
「いつ?」
レオも疑問形で返す。
「初めて会ったとき!レオ泣いてたっ!」
なぜか嬉しそうにキャキャと笑ってチビフィリアは答える。
「その話詳しく教えてもらってもいい?」
ライラがそれに食いつく。
「ラァラ?んとね。レオ、泣いてたの。だからね、助けてあげたの!ドォンって!!」
「うん、もう少し詳しく」
ちょっとよく意味が分からないなぁって笑顔を浮かべてライラは、チビフィリアの身振り手振りが付いた説明を聞く。
「えとね、レオがドォンって!魔力バァって!」
キラキラと瞳を輝かせて、チビフィリアは興奮して手を机にペチペチ叩きつける。
「…レオ、何が言いたいのフィリアは」
ついぞ意味が分からなかったライラはレオに困った視線を向ける。
「お前に説明してやる義理がないからな」
やり遂げたっ!っていう笑顔のチビフィリアの頭を優しくなでるレオはライラに答える気がない。
「っう―――!フィリア、レオがいじわるするの。メッって言ってあげて」
「レオ、ラァラいじめてうの?」
ケーキをほおばりながらチビフィリアはレオを見上げる。
「そんなことはない。コイツが被害妄想しているだけだ」
チビフィリアがフォークでつついていたショートケーキから苺をレオはつまみ上げる。
「ひがいもうそう?んぁ…レオ、食べちゃや!」
「はいはい。フィリアは苺が好きだもんな」
レオが差し出した苺へチビフィリアは嬉しそうにパクリと食らいつく。
「うわ…すっげぇいい絵。なんだろう…こう、写真とりてぇ!!」
悶えるライラに冷たい視線を向けてからレオは、チビフィリアの頬についているクリームを指ですくい取る。
「クリーム!」
それを見てさらに瞳を輝かせるとチビフィリアは、パクリとレオの指ごとクリームにかぶりつく。
「っ…」
「あ、レオが照れたぁ」
流石に動揺したレオにライラはニタニタと視線を送る。
「気持ち悪いぞ、お前」
「ぐっ!?」
「?」
チビフィリアはレオの指をくわえたまま首をかしげる。
「…なんかさぁ。ハナイの気持ちがわからなくもないんだよね、こうやって見てると」
ドキドキと波打つ胸を押さえながらライラはレオに呟いた。
「そうか。お前も変態の仲間入りだな。…ああ、元からか」
フッと鼻で笑うとレオはチビフィリアの口から指を引き抜く。
「うぁ?」
「フィリア。人の指は食べ物じゃない」
「あぅ…」
レオに注意されてチビフィリアはシュンとうなだれる。
「でもね、フィリア。いいこと教えてあげるよ」
コソコソと指を拭っているレオに聞こえないよう細心の注意を払ってライラはチビフィリアに耳打ちする。
「そなの!?」
「何を言った」
ギロリとレオに睨まれてもライラは得意顔をするだけで、答えようとしない。
「あのね、レオ!ラァラ、優しいんだよ!」
チビフィリアの鮮やかな光を放つ青色の瞳に見上げられレオはなんと言葉をかけるか一瞬迷う。
「…そうか。ちなみにどこら辺が?」
「ラァラ、いいこと教えてくれた!」
「へぇ…。なんて?」
若干目が笑っていない笑いをレオは浮かべて鉾重に胸を張っているチビフィリアに問いかける。
「レオ、フィリアのこと好きなんでしょ!ね、ロリコンって言うの!」
空気が凍りついた。
「へぇ。いい度胸だな、ライラ」
ニコリ、と完全に目が笑っていない口元だけの笑みをレオは浮かべて立ち上がる。
「ぐっ!フィリア!言っちゃダメって言ったでしょ!」
レオに詰め寄られたライラはフィリアに咎めるような声色で小さく叫ぶ。
「ふぇ?だって、だってぇ」
モジモジと指をつつき合わせてチビフィリアはケーキを見る。
「レオ…まさか、ケーキに結界張ったの!?」
「それがどうした?フィリアは賢いな。何も言わなくても、どうすればいいかわかったんだもんな」
「うん!ケーキ食べていー?」
「ああ、もちろんだ」
よしよしとチビフィリアの頭をなで、レオはライラの胸倉をつかみ上げる。
「く、苦しい!!死ぬッ!ギブっ!!」
「お前は何教えちゃってんの?なぁ、オイ?俺とフィリアは同い年だぞ?わかってんのか、そこんところ」
耳元で低く囁くとレオはライリアを突き放す。
「レオ、ラァラいじめちゃだめだよ?」
いまいち事情がつかめていないチビフィリアに言われ、レオは笑う。
「大丈夫、ライラはいじめられるのが好きな奴だから。フィリアもいじめてあげると喜ぶぞ」
「わかった!今度、水かける!」
嬉々として頷いたチビフィリアにライラはストップをかける。
「待って!?根に持ってるな、レオ!」
「あたりまえだ!ロリコン呼ばわりされて根に持たないやつがいるとでも思っているのか」
椅子に座りなおしたレオに今度はライラがつかみかかろうとして、逆に投げ飛ばされた。
「ぎゃぅ!?」
「ばぁかって言ってやれ。喜ぶぞ」
「ばぁか!!」
レオにそそのかされて意味がよくわからないままな満面の笑みのチビフィリアに、言われたライラは莫大なダメージを食らう。
「ふぐぅ!」
「ラァラ嬉しそう!」
追撃食らってライラはさらに落ち込む。
「そ…んなバカな!私が嬉しそうっ!?何、新たな性癖!?」
落ちこんでいるライラを捨て、レオは立ち上がるとわずかに眠そうなチビフィリアを抱え上げる。
「さて、フィリア。そろそろ寝ようか」
レオに抱えられで超ご機嫌なチビフィリアは笑顔で致命的なことを言う。
「ん!レオと一緒!」
「わかってるよ」
「嘘、待って!私はっ!?私と一緒じゃないの!?」
がばりと身を起こすとライラはレオに縋り付いて叫ぶ。
「邪魔だ。お前に任せてられるか」
「ラァラ、また明日ー!」
「くっ…戦略的にレオに負けたぜっ…」
チビフィリアになつかれてないなんて思いたくないライラは、負け惜しみを呟いた。




