誕生日前日談
うん、ごめんなさいもう一回7月6日。
今回の6日は月曜日。
学校の教室にて。
「なんか…どうする?デジャブ感が…」
「無限にループしている気がするよ!」
「7月6日から一生抜け出せないかも…!?」
そんなことは起こらないのでご安心ください。
「さて!そんなどうでもいいことは置いておいて!明日は何の日だ?」
「え…?何の日?」
フィリアが首をかしげていると、隣で突っ伏していたレオが呆れたように言う。
「…フィリアの誕生日だろう?」
「ああ。そんな日もありましたね」
「覚えとこうよ…自分の誕生日でしょ?そういえばクライトは?」
ライラの問いに返ってきたのは沈黙。
「ねぇ、レオ?」
フィリアの問いでも沈黙が返ってくる。
流石に訝しくなったフィリアが机に伏せられたレオの顔を覗き込むと。
「フィリア?」
「…寝てる」
「え、マジ!?きょーうはー祭りだー!」
キーンコーンカーンコーン。
「おはよーございます。早速授業を…」
「あ、今日はフィリアさんの誕生日をお祝いしたいので寝ててくださいですの」
「《ホワワワーン》」
今。リンゴさんの指揮の元、盛大な (ただし、他クラスの先生に怒られない程度にはつつましい) 誕生日パーティが開催される!!
ルーピンも眠らせたし準備万端!何でも来いっ!(←ちょっと違う)
「フィリアさん!?ど、何処へ消えたんですのっ!!」
ところが。フィリア喪失。
「レオ!フィリアがいないよっ!!」
生徒たちがこれ幸いと派手に騒ぎまくっているのにも拘らず、ぐっすりと眠っているレオをライラが揺すり起こす。
「…っ。フィリアなら…ああ、逃げたな」
突然触られて思わず殺気を出しかけたレオは慎重に気を静めるとライラに答える。
「ありがとう!」
「いや…別に」
再びレオは机へ突っ伏し眠りだす。
「ずいぶんとお疲れのようですね」
「ですねぇ」
セノーテとソフィーがコソコソと会話する。
「フィーリーアー?レオも抱き込んで隠れようとか、無駄だよ」
灯台下暗し。フィリア、隠蔽魔法を使って教室の隅に隠れていた。が、ライラの嗅覚には負ける。
「っ!!レオのばかぁ。もうちょっと考えて誤魔化してくれてもいいのにぃ」
「ハイハイ。主役なんだから逃げないの」
「じゃあ、主役が発見されたところで王妃様撮影!フィリアさんの成長録~!!」
「ヒューヒュー」
吹き荒れる紙吹雪と、鳴り止まぬ喝采に、リンゴの言葉を流しかけたフィリアは慌てる。
「ちょ、ちょ!?な、なんですかそれは!!」
「王妃様撮影!フィリアさんの成長録ですの」
フィリアに仕方ないなぁと言いたげにリンゴは繰り返しす。
「…題名を聞いているわけじゃないんだよ?」
「断られたら明日のパーティで流しちゃうからね、だそうですの」
「う…し、仕方ないね!そこまで言うんならっ…よくないんだからねっ!?」
再度流されかけたフィリアは、乗りツッコミを発動させる。
「でも明日…」
「明日の方が見る人多いよー」
リンゴとライラのダブル攻撃にフィリアのHP0。
「もう…好きにして…」
「はい、させて頂きますの。じゃあ第一部!レオさんとの出会い~チャララ~」
リンゴが映像端末を操作して黒板を魔法で変えたスクリーンに第一部を映し出す。
『一話。レオ君との馴れ初め。フィリア5歳!!キャア!』という字幕が浮かび上がった。
「待って…待って待って!?」
「「3!!2!!1!!Go!!」」
映像に合わせて声をだし、クラスメートノッリノリ。
視点はどこからとっているのだろうか…かなり上空のようで全くブレがない。
映されているのはおそらく青国と緑国の国境付近。
丘の上に一人立って空を見上げている金髪の男の子っていうかチビレオ。
『兄様、あの子…』
レオを見つけたチビフィリア、隣に立つリランの袖を引っ張った。
『ああ。…そう、だねぇ。行ってくればいいんじゃないかな。僕は止めないよ。あんまり危険な真似はしないでね』
注意と共に少年リランはフィリアの背中を押し出した。
「ちょ、ちょちょ!?や、ダメだよっ!!ダメなんだってば!!」
泣きそうな声で騒いでフィリアはライラの拘束を逃れようと身をよじる。
「…っ!何を…」
寝ていたレオが目をさまし、映像を見て絶句するとすぐさま消し去る。
「な、何するんですの!?」
「誰にだって…知られたくないものはある」
リンゴが持っていた映像端末を遠隔操作してレオはデータの消去をもくろんだ。
「だめですのっ!」
「いい加減にしてくれ。俺は疲れている。怒らせるな」
「レオを怒らせちゃだめだよっ!?今日はフィリアが止めてくれなさそうなんだから!!」
「うう…映像はやめにしますの。仕方ないですの。ビンゴゲームでもするですの」
いじけながらリンゴはビンゴゲームの用意をし出した。
あ、前日談はここまでです。




