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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第20章 日常へ戻る。これが平和なのかはさておき
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ふ、吹雪いてますっ!

翌々日~。


「おはよう、レオ」

「おは…どうした?」


隣へ座ったフィリアに少し低いトーンで挨拶をされたレオは読んでいた分厚い本から目をあげ、返事をしかけてから一瞬固まる。


「母様が、ね?」

「ああ…。そうか。大変だったな」


それだけで事情を察すると、レオは深く問い詰めずに読書へ戻る。





「フィリアー!!置いてかないでよっ!っていうか、この格好はなんなの!?」


いつもよりはるかに露出の高いメイド服のようなものを着ているライラが半泣きで教室へ駈け込んで来て、フィリアを問い詰める。


「私だって知らない。ライラが勝手に寝ている間に自分で着替えたんじゃない?」


フィリアは青いフード付きマントをしっかりと着込むと、フードを引っ張って全体的に隠す。


「フィリア、ずるい!!」

「え、なんのこと?」


自分だけ隠せるもの用意しやがって!という怨念のこもったようなライラの叫びを流すと、フィリアはレオが読んでいる本を覗き込む。


「フィリア…髪が垂れてるぞ」


ページへ垂れさがってきたフィリアの髪を脇へ寄せると、レオはパタンと音を立てて本を閉じる。


「あ、ごめん…」

「いや?」

「何の本―?」


興味津々なライラはレオへ聞く。


「これか?…ライラにはまだ、早い。100年たってから聞きにこい」

「ひどぉっ!?」


目をむいたライラに思う所があったのか、それともフィリアの責めるような視線に負けたのか、定かではないがレオは渋々と何の本なのかを告げる。


「…政経の本だ」

「せーけー?え、美容整形とかの?」

「フッ」


思わずレオは鼻で笑ってしまう。


「ひどい!!」

「あの、ね?ライラ…レオが整形の本なんて読むと思うの?」


嘆いたライラへフィリアは黙っていられず笑うのをこらえながら聞く。


「思うよ!」

「え、なんで!?」


即答された答えにフィリアは驚く。


「だって、老け顔じゃない?」

「なっ!?そこへ直れっ!レオに向かって失礼だよっ!!レオは老け顔なんかじゃないんだから!何処をどう見たらそうなるのっ!!人の恋人に向かって…!」


ライラの答えにフィリアが怒って机をたたいてから立ち上がる。


「ご、ごめん!!失言でした!!」

「レオに謝れっ!この大馬鹿!!」

「友達に向かってひど…もうしわけございませんっ!!もうしない!!言わない!しばらく黙ってる!!」


フィリアの言葉にケチをつけようとした途端、クラスから浴びた非難の視線にライラは全面降参する。


「フィリア、そこまで怒らなくても…」

「いい?あのねっ!!レオは自分の容姿に頓着しないからどうでもいいかもしれないけど私が嫌なの!!」

「え、レオ容姿に頓着してない!?」


黙れよ、とフィリアに睨まれたライラはすくみ上る。


「はいはい、わかったら落ち着け。フードが外れそうだ」


フィリアを椅子へ座らせると、レオは外れかかっていたフードを引っ張って直す。


「…ありがと」


恥ずかしそうに俯くとフィリアはちんまりとレオの肩へ頭を乗せる。


「フィリア――!!なんでそんな奴にっ!!私の肩へカモォーン!!」

「いや」


叫んだライラへ届く冷たい拒絶2文字。


「くっそぉ―――!!」



「フィリア、眠いのか?」

「ううん?気分だよ」

「そ」


叫んでいるライラは無視してフィリアとレオは止める人がいないのをいいことにイチャイチャする。



キンコンカンコン。そんな幸せなひと時も終わりを告げた。…なんて大げさな。


「ハァイ、皆さん。転入生のおっしらっせでぇす!」

「せんせー、キャラが違うー」

「ええぇえ」


冷静な生徒たちのツッコミに一瞬ルーピンはしょげた。


「あ、兄様!!」


ドアから教室へ入ってきたレーブは、レオを見つけ一直線にそこへ走りこむ。


「なにっ!?お前はバカと一緒に黒国に…ああ、フられて戻ってきたのか」


レーブの顔をつかんで抱き着くのを阻止したレオはどうするか悩む。


「レーブは、兄様が第一ですっ!!」


そう言ってフィリアのことをレーブはシャーと威嚇する。


「…ちょっとだけ、かわいい…かも?」

「フィリア!惑わされるなっ!!」


それを見て少し和んだフィリアへレーブを投げ捨てたレオが叫ぶ。


「えー…妹、かぁ。羨ましいな」

「俺はお前がいればそれだけで十分だっ!!」


珍しく必死なレオに、クラス唖然。


「どんだけ問題児なんだ…?」


と呟いたのは、はたして誰だったのか…。どうでもいいことだから謎の一言で片づけさせてもらう。





「む―――!!」


む、と叫んだのはライラ。レオに魔法で口を無理やり閉じられたせいだ。


「うるさい黙れ。声が出なくなるようにしなかった俺に感謝しろ」

「ムムムムム―――!!」

「俺様だ。何か文句でも?」




「なんで通じてるのっ!?」


なぜか通じてる2人に思わずつっこんだルーピン。


「先生。レオの規格外は、今に始まったことじゃないから…ね?で、レーブはいったい?って言うか、この人小学生、だよね?」


レオに踏まれてるレーブを指してフィリアは聞く。


「失礼なっ!レーブは列記とした中1です!!」

「じゃあ、中1の教室へ行ってくれる?ここは2-3なの」


フ、吹雪がっ…!?と何度か下がった教室の温度に生徒たちは慄く。


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