表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼国物語  作者: 松谷 真良
第20章 日常へ戻る。これが平和なのかはさておき
178/268

肝試し(中)

「で、どうする」

「そうだな…」


クライトの問いにレオは少し考え、暴れまわる準備をしているカガラルトを見る。


「兄様ー?」

『さっさと倒せ。10秒以内で、だ。罰ゲームくらわせるぞ』

『カウントスタート!10-8-』


キャハハという笑い声と共にカウントダウンが始まる。


「待て!9が抜けたぞ!?」

「《滅》」


クライトがカウントを制止させようと叫ぶ傍らで、レオは静かに魔法を発動させカガラルトを消し去る。


『流石、レオ。次はフィリアがやれよ』

「待って!?まだいるんですか!」


フィリアが冗談じゃない、と悲鳴を上げる。


『残念だが、いない。次は…ああ、ツララの…』


ご愁傷様と聞こえそうなライの声にフィリアは膝をつき、嘆く。


「ど、どうして…よりにもよってツララさん!?」

『さっさとすすめー。ちなみに、学校に放送しているからな』

「兄様のドアホ―――!!」


叫んだフィリアの頭上からたらいが落ちてきて、命中する。


「たらい!?」

「たらいだな」

「たらい…」

「痛い!!兄様のバカ―――!!」


同じことを繰り返したフィリアの額に棒が飛んでくる。


「これはまずいだろ…」


レオがフィリアを引っ張りよせて、避けさせる。


「ありがと…」


ちなみに飛んで行った棒はライラの頭に命中した。


「いったいいい!!シャレにならないよっ!?龍の子で良かったよ!!ほんとに!」

「…進もうか」




ワイワイ騒ぎながらフィリアたちは前へ進む。




「えっと…現在地わかる?」

「校舎一階、玄関ホールの渡り廊下を右へ少し進んだところにある、美術棟の中へ一歩踏み入れたところ」

「詳しいな!どうなってんだよ、レオの頭ん中は!!」


尋ねたライラ、レオの答えに謎の逆ギレ。


「最初にライさんからコース説明をこっそり聞いておいた。めんどくさいし」

「裏ルートでのチートかよ!」

「意味が分からないな」


ツララの罠に怯えてしがみついてくるフィリアを抱き寄せ、レオは高らかに笑う。


「なんつー悪役」

「劇とかやるときはフィリア様と一緒に悪役を頼む…か?」

「いや、フィリアはお姫様だよ!そんで私が王子様で、レオがお姫様をさらう悪役!けってー!」


ギャハハハとライラは笑う。


「笑い方が、女の子じゃない」

「お前…バカにしてるだろ」

「っていうか王子がいいのか?」

「すっませんでした―!!」


3人のバカって言ってる視線を受けライラは土下座モードへ入る。


「おいてくぞ」

「ツララさん、怖い…怖いー」


ギュと腕にしがみついてくるフィリアにレオはまんざらじゃない様子。


「役得だなー」


ライラがしみじみと呟いたところで、急にライトが付く。


「で、どこら辺?」


眼を瞬いてから、ライラは頼れるレオへ尋ねる。


「音楽ホール」

「美術棟は抜けていたのか?」

「だろうな」

「早くない?」

「移動する床になっていた。凝っているよな。美術棟では何もしないようだったぞ」


美術棟って広いのに…というライラの心の声を読み取り、レオは説明してあげる。


「へぇ」


で、何が始まるんだろうねーと明るくなった舞台ステージをライラはワクワクと見つめる。


『さって、お一人様の過去暴露―!!待ってましたー!!』

『ヒューヒュー!!』


野次が一斉に飛び交う。


「で、私なわけ!?」

『母上がな。嬉々として渡してくれた』

「ま、さか…!?」

「待て、俺も巻き添えを食らうんじゃ…?」


フィリアとレオに戦慄が走る。


ステージに下がってきたスクリーンをフィリアは嫌そうに眺める。


『では、スタートッ!!』




タイトル:大好きな人

主演:小さき日(4歳)のフィリア。マイドウター。

脇役(エクストラ):レオ

悪役;リラン

ナレーター:わ・た・し



「うん、レオ脇役扱いってすごい…」

「いや、悪役って…」

「待って!?やめよう!!リラン兄様悪役って…あれだよね!?」


フィリアが慌てて叫ぶが、もうすでに遅く。





ニッコリ笑顔のリランが画面一面に映る。


「こわ…」

「やぁっ!?いーやーぁー!!」


もうすでに涙目でフィリアはうずくまる。


「ああ…地獄の特訓、か…」


レオも遠い目をしてなるべくスクリーンを見ないようにする。






以下、映像シーン。





『フィリア、どうしてこんなこともできないの?困っちゃうな』


クスクスと笑うリランに小さいフィリアは持ち上げられている。

バタバタと暴れるが抵抗空しくフィリアはあいていた窓から外へ包含投げの要領で投げ捨てられる。


『きゃあああ!!』


落ちた先は、フラフラと足もとがおぼつかないレオの上。


『うわ!?』

『いーやー!!兄様のバカっ!フィリア、悪くないもん!兄様のバカ―――!!』


バタリと地面へ倒れたレオの上でフィリアは激しく泣き出す。


『ちょ、何があったわけ?後、重い。死にそう。父さんが脱走するから』


もうすでに脱走癖のあるオルノだった。


『兄様がいじめるのっ!ひどいよね!フィリアは悪くないんだよ!』

『…まぁ、リランさんは教育係だから…?』


レオ、すでに言葉を濁すの技を習得している。


『でもでも―――!!』


カーンと高い音を響かせて、レオの額にインク壷が命中。


『レオ!?死んじゃや――!!』


気絶したレオにフィリアがさらに泣き出す。


『バカが…。フィリア、僕と一緒に楽しいお勉強をしようね』


ニコリと微笑むリランにフィリアは怯えて固まる。


『フィリア、返事は?』

『は、はい…!!』

『いい子だねー』


フィリアを抱上げて立ち去ろうとしたリランの足を意識が回復したレオが、つかんで引き止める。


『俺に、壷ぶつけて、どこ行く気ですかー?ねぇ、リランさん?』


『どこへ行くのだって僕の自由だろう?』

『そうですねー。フィリアを持ってなければ?俺のフィリアを!』



ブツ………………………………。



以上。



ブツリと不自然に映像が途切れた。


「何?」

『レーオー?』


フッとレオはライラから顔を逸らし、気まずそうに咳払いをする。


「お前、リランさんに食って掛かって…」

「昔は青かった…」


さらに遠い目をして、レオは先へ進みだす。


「あ、オイ!」

「…兄様、怖い。本当に怖い。兄様、怖い。後母様も、怖い。どこから手に入れたの、アレ」


ブツブツと悲しげにつぶやくフィリアの手をつかんで、ライラもクライトとレオの後を追う。


やっぱおさまんなかった。どうしよう、明日も肝試し終わらなかったら・・・。

っていうか、明日模試だ・・・。フッ・・・ノーベン上等だぜ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ