Deer my sister
そして2日後。
引きずってみる。
引きずられてみる。
あ、一文字多かった。
よしこのまま多くしよ。
ええと…どうしようかな。
日記を、普段書かないから。
困ったな…ライラに押し付ける。
段にするの失敗してしまった。
今度は下げて行ってみよう。
熱が下がらないから暇だ。
早く下がらないかなぁ。
もう大丈夫なのにさ。
心配性のレオが…。
うん、言わない。
なんでもない。
気にするな。
「…フィリア。暇なんだね?」
フィリアが何を書いているのだろうかと覗き込んだライラは速読して目元を押さえる。
「もう下がったー!部屋にいつまでも監禁しないでー!」
「あのねぇ…。赤い顔をして、そんなこと言われても頷けません!」
バフバフと布団を叩いてフィリアは主張する。
「うー!けちー」
「そんなかわいい顔されてもダメなものはだめなの!」
唇を尖らせたフィリアにライラは一瞬傾きかけて思いとどまる。
「ライラはどーしてバカなのー?」
「お母さんが馬鹿だからだよ。遺伝だねっ!ってひどいこと言わせるな!…ねぇ、リィって結局何しに来てたの?」
「うんー?ドラグニルから貞操を守りに来てたんでしょ?」
フィリアの言葉にライラは固まる。
「え…。ドラグニルってそっちの人!?」
「あのね?龍って性別決まってないんだよ?…決まってるのと変わんないけどさ。その…数が少ないから、雄雌どっちかだけ残っても大丈夫なようになってるの!わかった!?」
「うん。すごくよくわかった」
頷いてから、ライラは新たな疑問がわいて首をかしげる。
「あれ…。私もそうなのかな?」
「…………ノーコメント」
気まずそうにフィリアはライラから視線を逸らす。
「あ、そうだ!私、用事あったから少し学校行ってくる。フィリアは寝てるんだよ?」
「わかってるよ。ライラじゃないし」
「ひどいな!」
とにかく何の用事なのかはわからないが、ライラは学校へ歩いていく。
それを見とどけるとフィリアはベッドへ横になる。
数秒後、穏やかな寝息が漏れ出した。
「…」
足音を忍ばせて、そんなフィリアへ近づく人影が二つ。
「兄上!ちょ、待ってください!?寝てますから!」
「いーからいーから。罰ゲーム」
必死に抵抗するライの頭をにこやかに笑うリランがつかみフィリアへ近づける。
「嫌ですよ!?妹になぜ…」
「キスしないといけないんだって?それはね。君がサボるのがいけない」
「俺…生徒会長ですから!!サボれない用事だったんです!」
ベッドのふちをつかんでライはリランに抵抗する。
「なんでそんなものになったんだー。そして学校と王家だったら王家優先だー」
「…酔ってるんですか?というか、そんなの知りません!俺が言いたいです!」
「ほら、2人っきりのときにしちゃったほうがいいんじゃないかな?ライラ辺りが帰ってくると面倒だよ」
ライの抗議を無視してリランは続ける。
「そ、それは…!?いや、だからなんですること前提なんですかっ!」
「ほーらーぁー」
頷きかけたライは、そもそも間違ってるだろ、と叫ぶ。
完全に面白がってるリランへライはなおも抗議する。
「なんで俺がっ!」
「良いから早く。僕だって時間がないんだよ?」
「じゃあしなくていいでしょう!!」
もっともなライの叫びを無視してリランはグッとライの頭を押さえる手に力を入れる。
「っ」
「う…?あ、あれ!?に、兄様!?」
流石に気配を察したフィリアが目を覚まし、状況を見て布団の中へ潜り込む。
それを見てリランはライの頭から手を放し、椅子へ腰かける。
「あ、兄上!!」
凄く気まずいライは顔を赤くしてリランを睨む。
「ライがそうやってごねるから、寝ていたフィリアが起きちゃったんだよ」
「し、知りませんよ、そんなこと!!」
「…兄様たち、どうしたの?」
少しだけ顔を布団から出すとフィリアは言い合っている2人へ尋ねる。
「ど、どうもしてない!!」
「いやねぇ。ライに罰ゲームでフィアにキスしてねって言ったのに、ごねたんだよ~」
「り、リラン兄様…」
身の危険を感じたフィリアは布団にうずくまったまま壁の方へ下がる。
「ほ、ほら…!俺は帰ります!まだ用事があるのでっ!」
ライがそれを見て全力で逃げた。
という訳で、どうしてもリランには強く出られないライだった。
「兄様。ライ兄様の罰ゲームって口実ですよね?最近会えないからってわざわざ…」
立ち上がったリランにフィリアはデコピンを食らう。
「君がそんなことを気にする必要はない。フィアは早く病気を治すこと。わかってるよね?いつまでも僕のお姫様でいてくれればいいんだよ、フィアは」
「う…?頷いていいような、いけないような」
それでも刻々頷いたフィリアはリランの方へ近づく。
「な、なんだい?」
珍しい末妹の行動にリランは驚く。
「兄様は私のこと、独りにしませんよね?」
「あたりまえだろう?何をいまさら」
「じ、じゃあ…私が寝るまで、そばにいてください!だ、ダメ…ですか?」
上目づかいでフィリアはリランへ頼む。
「珍しいね、フィアがお願いを使ってくるなんて。セイロウを拾った時以来じゃないのかな?もちろん、いいよ」
椅子を引っ張るとリランはフィリアのベッドの隣へ座る。
「兄様、ありがとう。私のわがままに付き合ってくれて」
「妹のわがままに付き合うのは兄の役目だよ。それでなくてもフィアに我慢をたくさんさせてしまっているからね。病気の時くらいなんでも言うといいよ…って、寝るのは早いね、フィア」
いいこと言ってる途中でフィリアに寝落ちされたリランは少し悲しそう。
「でも…そういう所がかわいいんだよね」
リランは、フィリアの頭をなでると頬にかかった髪をそっと脇へよせる。
「ただいまー!って、リランさん!?な、なぜ!?」
ライラが帰ってきて、フィリアの髪を弄っているリランを見てつい叫んでしまう。
「うるさいよ。別に僕が何をしていようと、僕の勝手だよね?妹の見舞いもしてはいけないのかな?」
「ご、ごめんなさい!!」
「うん。別にいいよ。今の僕は機嫌がいいからね。フィリアに感謝しておくといいよ。それじゃあね」
ニッコリと笑うとリランは姿を消す。
「んのっ!いい加減にしろ、バカが!」
それと入れ違いで、レオがドアを開けて入ってくるとすぐに閉め、誰かを外へ閉め出す。
さて、出す出す言ってたアイツの登場だ。
やっと出せたよ・・・。本人出てくるの遅っ!?みたいなー。
後悔はしてるかもしれないけど反省はしてない!




