リィとセイロウ
「で、フィリアはどうしてきたの?」
「…」
ライラの素朴な疑問にフィリアはソッポを向く。
「お、オイライラ!?な、何バカなことを…フィリア、機嫌直せよ!」
リィがいじけた感じのフィリアを揺すって懇願する。
「リィに頼まれたってヤダもん」
「あれ…失言だった?」
「ライラなんかもう知らない!!勝手にくたばってればいいんだ!心配して損した!」
涙を浮かべてライラを怒ると、フィリアはいじけて布団へ潜り込む。
「かわいー」
「そうじゃないだろ…」
「そんで、リィはどったの?」
「ドラグニルがな?」
フフ…と笑いリィはフィリアの横へ腰かける。
「ドラグニルが?」
ワクワクとライラは尋ねる。
「フ、フハハハはハハハ!!」
「壊れないで!?」
壊れたように笑い出したリィへライラが叫ぶ。
「いろいろとあってさ」
「だからそのいろいろを聞いているんだよ!?」
「もう、お国に戻れません!!」
さめざめと泣くリィに、残念なイケメンの部類だったか!とライラは新たなる事実を知る。
「なんで?」
「ドラグニルにっ!貞操が!!」
「え」
ワッとリィはミノムシ状態のフィリアに抱き着き、泣き出す。
「ええええええええ!?ど、ドラグニルってそっちの人!?」
「…るさい」
騒いだライラへフィリアが不機嫌そうに呟き、リィをくっつけたまま体勢を入れ替えようともぞもぞ動く。
「フィリアー。ドラグニルに襲われたぁ」
「眠い。知らない」
固く閉ざされたフィリアの布団の中へ、小龍へ変化したリィが潜り込もうと格闘する。
『そういわないで、フィリアー』
「や。寒い。眠い。知らない」
ぐにぐにと格闘する2人(一人と一匹)を見て、ライラは混ざっちゃおうかなーなんて考える。
「決めた。混ざろ。混ぜてー!」
ライラも小龍へ変化するとリィと一緒にフィリアの布団へ潜り込もうとする。
「やぁ!ちょ!?っど、何処にさわ…ヒャウ!?」
バタバタと暴れたフィリアは力尽きたのかリィを抱えて丸くなる。
『ずるいー』
『フィ、フィリア!胸!!当たってる!』
『もっとずるいー』
「ふわふわー」
幸せそうなフィリアと対照的にリィは逃れようと羽をバタつかせる。
「フィリア様?…」
ゼリーっぽいのを持って現れたセイロウがその状況を見て、ニッコリ笑顔を作る。
『フィリアー』
『…ほっとしていいのか、なんだか』
「オイ、バカ龍ども。てめぇら何してんだ?」
2匹の龍をそれぞれ片手でつまみあげたセイロウは、ぶらぶらと揺する。
『うぐぉ!?』
「早くこたえろ。なにしてんだ」
『レオが増えた気分だよ。セイロウさんってレオとそり合わないでしょ』
眼を回しつつもライラは余計なことを漏らす。
「一辺生まれたことを後悔してくるがいい」
それについての答えは、ライラをしまっている窓へ思い切り投げつける、だった。
『ぎゃうあ!?』
女子としてどうなんだろうという悲鳴をあげ、ライラは窓ガラスを突き破って空の彼方へと消えた。勿論キラーンという効果音付きで。
『風が寒いぜ、セイロウ』
「リルナントゥアも俺のフィーへ手ぇ出すんじゃねぇ」
「こらこら本性」
人型をとったリィはセイロウをなだめつつ、ライラが突き破った窓ガラスを直す。
「うぅー…?あ、セェロ!フフ」
フルリと震えたフィリアはセイロウを見つけ、嬉しそうに両手を伸ばす。
「フィー。ちゃんと寝てろ」
フィリアを抱きかかえるかどうしようか悩んだセイロウは、寒そうな服装なのに気が付きベッドへ押し戻す。
「ひどい!!どうしてくれるの!?ガンジー村に襲われた時よりもボロボロだよっ!」
宇宙の彼方へとばされたライラが、傷だらけで部屋へ戻ってきた。
「なんだ、生きてやがったのか」
「そこっ!?舌打ちした!!」
チッと舌打ちをしたセイロウへライラはクワっと目を開いて怒る。
「はん。俺のフィーと一緒の布団で寝るとか、絶対にゆるさねぇ」
「まだ俺様継続か…」
遠い目をしたリィは、隙あり!!と言わんばかりに変化をしてからフィリアの布団へ潜り込む。
「あっ!」
「んのやろっ」
しかしさすがにセイロウも、フィリアの布団の中へは手を突っ込めないので、怒りをライラへと向ける。
「てめぇのせいで…!!」
『ガンジー復活なり!!』
宙からお告げのごとく、声が響き渡る。
「またぁ!?」
素っ頓狂な声が出てしまったのは愛嬌、ということで。
『去れ!!』
すかさず狼姿へ変化したセイロウが遠吠えっぽく叫び返す。
「…で?」
変化を解いたセイロウへ今のはなんだったの?とライラは尋ねる。
「向こうで声が実体化して、衝撃波を放っています」
「あ、僕っ子に戻った」
遠吠えをしてスッキリしたのか、セイロウは僕っ子へと戻る。
「ですから、フィリア様。ご安心ください」
「んー。セェロ、大好きだよー」
ギュウとセイロウは感激してフィリアを抱きしめる。
「フィリア様っ!!」
「きゃあ!?」
「ぐふぁ!?」
間に挟まれたリィの口から魂魄が飛び出たのを見てしまったような気がしたライラだった。




