ハナイ退治ー
怒れるレオとライラ(クライトは王宮へ報告をしに行ったので、お留守番)は闇の王宮へワープで直行します。
「わー…!?や、やめ!こ、この変態!何処触ってんの!!」
「どこって、胸?」
とかいう会話が聞こえてきた辺りで、レオはライラを部屋の中へドアもろともぶち込む。
「ちょ、ひどい!!」
「龍の子は丈夫だろ」
「そういう問題じゃない!!」
流石に傷だらけになったライラはレオを怒鳴りつける。
どこ吹く風でレオに流され、ライラの怒りはヒートアップ。
「む…邪魔が入るなんて。フィリア、ここにずっといるんだよ」
フィリアを襲う寸前の所だったハナイは、邪魔者を消しに立ち上がる。
すかさず逃げようとしたフィリアをハナイは前回の教訓から、鎖で壁につなぎとめる。
「鎖か…」
「らくらっ!?」
雷をおとっして鎖を燃やそうとしたライラは、レオに床へ叩きつけられ悶絶する。
「バカが。雷を落としたらフィリアも怪我するだろ」
「あくまでもフィリア基準なんですね…」
思わず敬語を使ってしまうライラ。
「ライラ。フィリアを助けてこい」
「命令!?拒否権は!?」
「あるわけないだろ、バカ」
「バカじゃない!!って言えないのが悲しい!!」
ブツブツ言いながらもライラは、ハナイの後ろで鎖と格闘するフィリアを助ける方法を考える。
「フン」
鼻で笑ったハナイが、レオへ見せつけるようにフィリアへキスする。
「…」
無言で笑みを浮かべたレオにライラは恐る恐る、
「あっのぉ~…」
と声をかける。
「…なんだ?」
ちらりとライラを一瞥するとレオは右手に魔力を集め始める。
「もしかしなくても、レオさん怒ってらっしゃる?」
尋ねたくなさそうに、ライラはレオへ確認する。
「さぁ、ね」
レオの右手の、バスケットボールの大きさくらいまで集まった魔力が凝縮し始める。
「えっと…」
レオへ近づくハナイから遠ざかろうと、ライラは一歩ずつフィリアの方へ後退する。
「なんだ、負け犬が!」
睨み付けられたハナイは精一杯の虚勢を張る。
「…人様の婚約者に何してんだよ、あぁ?勝手に監禁したり、結婚式をあげようとしたりするのは、まぁいい」
ハナイがレオに睨まれて、動けなくなっているすきにライラはフィリアの元へ走り込み、鎖を外そうとする。
「いいの!?それ、いいの!?」
ライラは律儀にツッコミを入れる。
レオとハナイにはガン無視されるが。
「だがな。目の前でキスされて怒らずにいられるほど俺は寛大じゃねぇよ」
バスケットボールサイズから親指サイズになった魔力の塊は、レオの指示を受け赤黒く輝き出す。
「前者がセーフで後者がタブーなの!?レオの怒りって謎だ…。そして怒ってるじゃん」
小声で、フィリアにしか聞こえないようにライラはつぶやく。
「ライラ、そこの輪に剣か何か突き付けてくれれば外れるから…」
ライラへフィリアは鎖のはずし方を言う。
「え、そうなの?わかった」
ライラは懐から護身刀を抜き、鎖の輪に思いきり突きつける。
カン、と金属音を響かせてフィリアの鎖は外れた。
「ありがとう、ライラ。魔法防止の鎖でさ。外せなかったんだ」
「どーいいたしまして。じゃあついでにレオも止めてよ…」
「無理です」
キッパリとフィリアは言い切る。
「だよね」
「フィア!!逃げるなっ!!」
ライラと一緒に逃げようとしたフィリアに気付いたハナイが叫ぶ。
「てめぇが、フィアとか呼んでんじゃねぇよ」
「フィアは僕のモノなんだ!!」
ハナイの手がウニョンと音を立てて伸び、フィリアの腕をつかみ引きずり込む。
「きゃ!?」
「きもっ!!」
「フィリアは渡さねぇ」
右手から離れようとする魔力の塊をとどめ、レオはフィリアを結界で包む。
が、それよりも早く、ハナイがフィリアをつきとばした。
「うっわ、さいてー!」
フラめいて倒れたフィリアをレオが左手で抱える。
「絶対に許さねぇ。覚悟しろよ?」
赤黒く輝く魔力の塊をレオはハナイへ投げつける。
フヨフヨとゆっくり魔力の塊は宙を漂いハナイの元へと向かう。
「おそぉ」
「仕方ないだろ。重量があるんだ」
「魔力の塊に!?」
「避ければいいじゃないかっ!!」
避けようとしたハナイ。
「避けるな」
そんなハナイをレオが言葉一つでその場にとどめる。
「ど、どういう!?」
「俺の力は、な」
フィリアを抱え上げ、レオはその場を立ち去る。
「え、いいの?」
ライラも慌てて後を追いかけ、部屋を出る。
「あんな奴の最後なんか見たって面白くない」
「最後になるかあなぁ…」
「あまりフラグを立てないでくれ」
レオはすぐにワープをしないで、王宮の奥へと向かう。
「どこへ行くの?」
ライラの問いには答えないで、レオは機密保管庫と思われる部屋の扉を蹴って破壊し、中へはいる。
「…保管の仕方、甘くない?」
「そこまで歴史があるわけではないからな、この国は」
機密書類をレオは、作った空間の中に放り込む。
「フィリアは、寝てるんだよね?」
「ああ。眠らせた」
書類があったところにレオはメモを残し満足そうにワープして青の王宮へ戻る。




