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蒼国物語  作者: 松谷 真良
第18章 ライラが!ついに!
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お前、どうするきなんだよ

ポタポタと全身から水をしたたらせてフィリアは唸る。


「なにを…してるのかなぁ?すごく、不思議だよ」


人は本当に怒ると、冷静になるという…。


「……ひー」


ライラを水の中に引きずり落としつつ、フィリアはプールサイドへ這い上がる。


「少しだけ…魂を貰って…操ってあげようか」

「頭冷やせ、バカ」


フェカが再びフィリアをプールへ突き落す。

ブクブクと泡が上がってくる。


「お?」

「フィリアが沈んだぞ」


そのまま沈んだらしいフィリアが上がってこないのでフェカはプールの中を覗き込む。


「おー?」

「…」


今回は髪が前にたれ下がらなかったフィリアは、無言で水を狼の形にする。


「えっとぉ…なにするつもりですか?いや、わかるけど…」


ライラが尋ねるが、わかるだろそのくらい、と言いたげなクライトの視線に言葉を付けたす。


「おっおー。わりぃわりぃ。まっさかあんまま落ちるとは思わなかったぜ」


咢を開いた水の狼を前にフェカは笑う。


「いけ」


そんなフェカにフィリアはかなり本気で狼をけしかける。

フィリアの指示で飛びかかってきた狼を避けるとフェカは手のひらに焔を浮かび上がらせる。


「っていうか、ルーピンも止めろよ!」

「せんせーを呼び捨てにしてはいけませんよ、クライト君」


ライラがクライトを茶化す。


「おまっ…呑気だな」

「兄弟げんかなんていつものことだしー」


ちなみに、ルーピンは微笑ましいなぁ、水遊び楽しそうだなぁ。とか見当違いなことを思って見つめているので、先生ストップは入りません。


「うわぁ、マジで怒ってんなぁ」

「フェカ。自分が引き起こした惨状なんだから収拾方法はわかるんだよな?」

「いやぁ、深く考えてねぇからぁ?」


レオのこぶしがフェカの頭に振り落された。


「神様殴んな!!」

「生憎と俺はお前を神だと思ったことはない」


権限を振りかざして抗議したフェカにレオはサラッと真顔で言いかえす。


「フェカの、バカ野郎!」


増えた狼がフィリアの怒号と共にフェカへ襲い掛かる。


「燃えちまえ」


フェカの一言で、襲い掛かる狼(水)は炎に巻きつかれ蒸発する。

狼を蒸発させた焔はそのままフィリアへと巻きつこうとする。


「おい」

「だいじょーぶだって」


レオの制止を片手で止めると、フェカはフィリアがどう出るか見物する。


「《焔よ、凍りついて燃え上がることを止めろ》」


プールの水を蒸発させつつフィリアに迫っていた焔は、動きを止めてみるみる氷と化す。

ついでに、フェカを襲うために作り出された数十体の狼たちも凍りついた。


「さ、寒いよ!?」

「…どれだけの魔力を使う気なんだろうな、フィリア様は」

「あ、様付なんだ」

「…俺は、レオが恐ろしい」


クライトの言葉に反応したレオが、すかさずライラたちを睨みつける。


「私なんも言ってない!!」




「うっわー。マジか」


逃げるが勝ち、と言わんばかりにフェカは実体化を解いた。


「にげやがった!?」


フェカが消えたことで行き場を失ったフィリアの怒りがレオやライラ、クライトへと向かう。


「こっちっすか!?」

「ちょ、レオなんとかしろ!」


凍りついた狼から逃げつつライラとクライトは叫ぶ。


「こっちはこっちで精一杯だからな?」


さて、クライトが情けなく助けを求めたレオだが、壊しても壊しても復活してくる龍に、行く手を塞がれていた。


「うっわぁ!?フェカのあほ―――!!」


ライラが叫んでも仕方がないことを叫ぶ。


「ちっ。めんどくさい」

「じゃあ、早くどうにかしろよ!俺はフィリア様の魔力に勝てないからな!?」

「俺だってそう…いや、まぁ…違うか」


クライトの叫びに答えるレオは言葉を濁してしばし考える。


「レオ!えーと…巻き込まれたバカが一人いますっ!」


ポラルが巻き込まれたのを見て、ライラが報告をする。


「放っておけ。そうだな、うん」


レオはおもむろにプールの中へ足を踏み入れると、フィリアの頭を軽くたたく。


「逆効果じゃね!?」


意外に痛かったらしいフィリアは涙目でレオを睨む。


「っ…」

「まぁ…プールに落とされたのが悲しかったのはわからなくもない。が、そこまで起こることではない。そうだろう?俺の賢いフィリアならばわかると思うんだが」


真顔でレオはフィリアを諭す。


「そういうオチ…」

「どういうオチだ?」


フィリアが落ち着いたのを見計らってレオは言葉を続ける。


「フェカに第2陣食らって悲しくなったのはわかる。というかアイツはバカだから?やるだけやって逃げたしな。何がやりたかったのかがわからない」

「あ、それ同意!!激しく同意!右に同じく!」


レオの言葉にライラが激しく賛成を表す。


「後、フィリア。お前は魔力を使いすぎだと思う。体調が悪くなっても知らないぞ?」

「っていうか、さっきからフィリア、無言なんだけど?」


カクンと、フィリアの体から力が抜けてプールの中に3度沈みそうになったところをレオが抱え上げる。


「ちょ、大丈夫!?」


プールから上がってきたレオにライラが尋ねる。


「魔力の使いすぎだろ」

「え、でもそんなに使ってなくない?」


「フェカが実体化している時点で2分の1.これをさらに王家は結界を張ったり色々と魔力を使っているから3分の1。実際に使えるのは全体の3分の1くらいの量だぞ」

「難し…」

「だから、6等分したうちの2個分」


頭を抱えたライラにクライトがわかりやすくレオの言葉を噛み砕く。


「なるほー」

「…まぁ、言いたいことがないわけではないが、いいか」


めんどくさいし、とレオは小声でつぶやく。




『さて、水泳の授業終わりにしますよー!!さっさと着替えてくださいねー!』


ルーピンが拡声器を使って叫ぶ。


「えっと…フィリア、どうする?」


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