ラックと仕事
翌日。
「ゴメン、ライラ。リラン兄様が呼んでたよ」
なぜか謝るフィリアがライラを王宮へ送る。
王宮の政務室の前に送り届けられたライラは部屋に入る。
中ではマルクが忙しそうに文官たちへ指示を出していて、リランの姿は見当たらない。
「ん?ああ、ライラ。どうかした?」
「あ、マルクさん。リランさんは?」
「リランは今、外出中だぞ」
「…フィリアに送り届けられたんだけど」
あれ、すれ違ってる?とライラは首をかしげる。
「そうだな…フィリアが届けたんなら、アースの所に行くといい」
しばらく悩んだのち、マルクはライラをアースの所へ行くよう指示する。
というわけで、ライラはアースの実験室の前へ立っている。
「入りたくないよぉ」
「あれ、ライラ?どうかしたの?」
僕っ子バージョンのセイロウが部屋の前でうろうろとしているライラへ声をかけた。
「アースさんに用事があるんだけど、この中には入りたくない」
「頑張れ」
セイロウも入りたくないのか、事情を聴くと素早くその場を立ち去った。
「あっ!?」
思わず叫んでしまったライラ。
「誰だ?…ってライラか。どうしたんだよ?」
騒音に気が付いたアースが扉を開ける。
「え、あ…フィリアが勝手にここに送り届けて」
「ああ。成程。じゃあ、ちょっと頼むな。ラック!!ライラと一緒にカガラルトを退治して、巨猿の毛皮を20枚捕ってきてくれ」
ライラの説明で思い立ったらしいアースは奥にいるラックを呼び寄せて、ライラと一緒に送り出だす。
『あ、兄様。首尾はどうですか?』
ライラが消えた実験室で、連絡水晶がほのかに灯り、フィリアを映し出す。
「ん。良好だ。Rは何も疑いなしに出かけた」
『…兄様。シベリスとライラがくっ付くと、私が困るんですよ。上手に誘導してくださいね?キューピッド』
呆れた声を出したフィリアに言われ、アースは苦笑する。
「…キューピッドって柄じゃないんだけど。それ、誰から聞いた?」
『レオがこっそりと教えてくれました。兄様、仲人やってらっしゃるんでしょう?』
「やってないからな?話が曲がって伝わってないか?」
『気にしないでください。で、ライラたちは?』
「つなごうか?」
『あ、なら、そちらへ行きます』
フィリアはレオと共に実験室へやってくる。
そして実験室の奥にある隠された部屋に、アースと共に入る。
「ライラのモテ期がウザくなってきたから、そろそろ誰かとくっつけてやる!策戦、始動!!!」
政務室にいなかったリランが、いて。音頭をとる。生徒会長の仕事でパシられているライを除く兄妹全員がそろっていた。
「リラン兄上…」
「お兄様、お疲れですね?」
「ライラが面白すぎて止まらない」
「さて。ライラのようすは?」
ワクワクと子供の用に目を輝かせてリランは遠視を使う。
『ちょ、ラックさん!?』
『精霊魔法第6界王セヌブフ召喚!!』
ラックが、日頃の鬱憤をぶつけるかのように暴れまくっていた。
「あらあら」
「リナ。それで片づけるな。それからアース。手加減をしてやれ」
「うぃ」
ウフフと笑ったリナへ注意し、アースを諌めてからファイナはフィリアの方を振り返る。
「なんですか、姉様」
「…フィリア。レオと離れなさい」
「へ?」
べったりとくっついている2人の姿を見たファイナは、悔しげに命令する。
「ファイナさん、横暴」
「レオ?私のかわいい妹を独り占めにできるとか、考えてはいないだろう?」
「ライラで遊んでいればいいじゃないですか。俺はフィリアと楽しんでますから」
「考 え て は い な い だ ろ う ?」
ファイナの力強い笑みに、レオはしぶしぶフィリアを放す。
「っていうか、最初は抵抗していたのに、普通に馴染んじゃってるねぇ、フィリア」
「え、そうですか?」
リランの言葉にフィリアは目を丸くする。
『あ、あのさ!!ライラ。僕、君のことが、好きだよ!!』
一体どうなってか、荒れていたラックの告白。
「何があったの?」
「カガラルトを倒し終わったのよ」
『へ?』
気の抜けたライラの声にラックは畳み掛ける。
「ラックもセイロウと一緒でお姉さまがたにモテるからな」
アースが補足説明をする。
『返答は?』
『え、えっと…シベリスより、かっこいいし、イケメンだし、頭いいし…尊敬はしているけど、そういう感情でとらえたことはなくって…』
シベリスのときの発言、《私を惚れさせてみれば》よりはましになったライラの返答。
「振っちまうのか?」
「持ったいない」
無責任な王家の方々の言葉が聞こえたかのようにライラは宙を睨む。
『だ、だけど!!別にラックさんが嫌いなわけじゃないよ!!シベリスよりは断然好きだもん!だから、ちょっと時間が欲しい…かな?』
『わかった…。待ってる』
顔を2人とも赤くする。
「…ベタだな」
「レオ、それは言っちゃいけないよ」
「そろそろ帰ってくるね。じゃあ、自分の仕事を再開しようね。ライラたちにこのことがばれないように細心の注意を払ってね」
リランが隠し部屋から出ていく。
アースへ報告し終わったライラがラックのことで悩んでいると、後ろからフィリアが声をかけてきた。
「ライラー」
「っえ!?フィ、フィリア!?」
「俺は?」
「あ、レオもいたんだ」
「ラックと、2人きりで任務だったんだって?」
「な、なんで知ってるの!?」
驚くライラを2人はにやにやと見る。
「ラックってさ、ライラのことが好きなんだよ。知ってた?」
「さっき知ったよ…もっと早く教えてよ」
ライラの顔が赤くなるのを見て、2人は目配せする。
「うまくいきそうだな」
「そうだね」
小声でつぶやいた2人の言葉が聞こえたものの意味が分からないライラは首をかしげるのだった。
さて。珍しく恋愛フラグがたちました。
どうなることやら
王家の方々の横槍によって折れるのか。
それともまっすぐと建築され続けるのか。




