もう・・・いっそのこと、ね
「…お、王様でも襲撃しましょうか?」
ラックと2人きりは気まずいライラがどもりながら提案する。
「あ…そうだね」
ラックはライラのことを、フィリア達王女の次にかわいいと認識している。
「よっし!フィリアの仇だ!」
つまりラックは王女は無理なんで、ライラを狙っている腹黒さん。
でもその心の中は。
ふ、2人きり!!告っちゃう!?いっちゃう!?あーあ。ライラ捕まって王子様―みたいなことしたいな…アースさん鬼畜だよな…レオ様羨ましいな。
…まぁ8割がたヘタレなんで、ラックは。
「あ、れ?」
ナニカに気付いたラックが妄想をやめるが、何かをつかむ前に、何かは霧散する。
「ラックさん?置いて行っちゃいますよ?」
「あ、待って!」
さて、闇の王宮を疾走中のフェカは。
「ハナイ!テメ、見つけたぞこの野郎!」
「ああ!!愛しのフィア!」
実体化しているので、フィリアとは似ているようで似ていない容姿のフェカにハナイは抱き着こうとする。
すかさずフェカがハナイの顔面を蹴り飛ばした。
「ちげーよっ!近寄んじゃねぇ!!」
「フィア…?」
「フィアって呼んでいいのは!!俺の特権だ――――!!」
ガスガスとフェカはハナイを足蹴にし出す。
「フェカ神…」
「ダメだ、止まらないと思う」
「とめられないですよー」
追いついたセイロウとマルク、リラが唖然とそれを見守る。
「ぶっ殺すぞ!!こらぁ!!あ!?俺が骨までちゃんと焼いてやるぜ?なんなら蒸し焼きでもいい。なんか言えよ、バカ野郎!!」
「フェカ神、気絶してるので無理だと思います」
セイロウがハナイの状態を見て進言する。
「んなのわってんだよ!!俺のフィリアにあんなこととか…!!レオにも許してねぇのに!!ざけんな!!」
「あ、俺無理だ。本性押さえらんねぇ」
フェカの言葉にストッパーのセイロウもぶち切れる。
「あんなことって…」
「あんなことなんじゃないー?」
「セイロウさん!?ま、待とう!噛みついたらダメだ!」
敵を殲滅しながらやってきたペソとルピーが、セイロウを止めようとするが、間に合わず。
『俺のフィーに…手を出したとか…マジありえねぇから?フフッ…フハハハハ!!』
狼姿になったセイロウはフェカに足蹴にされているハナイの足へ牙を突き立てる。
「…悪役の笑い方だな」
「ところで、ライラとラックは?」
「さぁ…。イチャイチャしてるんじゃないですかー?」
ペソの素朴な疑問に答えた無責任なリラの言葉にルピーが目をキラリと光らせる。
「やっぱり!?あの2人って、できてるんだ!?」
「ルピー。落ち着こうぜ」
ドウドウとペソが落ち着かせる。
「現実逃避はそこまでにしろ。あの御2方はどうやって止める?」
「もうさ、止まりませんでした、でいいんじゃね?」
マルクが深いため息を吐いて、フェカとセイロウをどうするか聞くと、ペソが投げやりに答える。
「「「それだ!!」」」
それは全員一致で採用され、4人は青の王宮に戻る。
「ん…?何か、忘れてないか?」
「…?」
「あ…!?」
「ラックとライラ、忘れてきちった」
4人は顔を見合わせて笑い、気付かなかったことにする。
その頃忘れ去られた2人は。
迷子ってた。
「ここ…どこでしょうか?」
迷路よりも複雑な作りの王宮の、十字路でライラはラックへ尋ねる。
「とりあえず、破壊音がするところに向かえばいいよ」
的確なラックの言葉に従い、ライラは一番音がする方向へ進む。
「あ…見なかったことにしましょう。それで、ワープで逃げましょう」
曲がった先にあった血の海と笑っている2人のフィリアバカを見て、ライラは即座に帰ることを提案する。
「そうだね…。僕らおいてかれてしまったようだし。そもそも迷子になった瞬間にワープをするべきだったね」
「そうですね。まぁ、後の祭りですけど」
フフフと疲れたように笑い2人も青の王宮へ帰る。




