いるよね、そういう奴。
しばし、部屋に流れる沈黙。
「見逃してくれてるんだと思ってた・・」
「…どうしよう。兄上は…色々と言ってたな。よし、未来に賭けてみようじゃないか!!ライラの記憶は消しません!!」
傷の手当てを終えたフィリアが立ちあがって宣言する。
「ただ単に面倒くさくなっただけだろう」
いつの間にか、ライが扉にもたれかかっていた。
「あ、兄上!?な、なんでここに!!ってかしばらく戻らないって!!」
「…それを信じたのか。案外騙されやすいなフィリア?人のことは必ず一回は疑ってかかるべしとかなんだとか偉そうに言ってたのは誰だっけ?」
二ヤリと笑ってライはフィリアを座らせて包帯を解く。
「あ、ひ、ひど!い、痛い!イタイイタイタイタイ!!」
ライに傷口を指で触られて激痛に涙を浮かべるフィリア。その隣には呆気にとられているライラが。
「はぁ…どうしてお前は厄介事に首を突っ込むかね。独りで全部背負いやがって。少しは兄にも手伝わせろってんだよ。いいな?」
「うう…だって、兄上はい、いつも忙しそうだから…」
トンっとベッドに座らされたフィリアはライが綺麗に包帯を巻きなおすのを見ながらいい訳をしてみた。
「あのな、半分以上がお前が突っ走ったことによる事後処理だ!」
「ヒェエ!ご、ごめんなさい!!」
くわっと怒鳴られて反射的に謝ったフィリアをライラは見ていてしみじみと思った。
ああ、王女だろうがなんだろうと兄に頭が上がらないのはどこも同じだな…と。
「まぁ、あれだな。無事で何よりだ」
「…怪我してるし無事じゃないし、色々とめんどくさいことになりそうなんだけど!?」
ライラが小声でライに突っ込んだ。
「何か言ったか、ライラ?」
「い、いえ!な、何でもないです!!」
聞えるとは思わなかったのか焦ってブンブン首を振るライラ。
「それなら良いんだ。よし、巻き終わったぞ。じゃ、本当にしばらく戻らないから。気をつけるんだぞ」
「あ、はい。じゃなくて、何でですか?」
「色々とな。バカからの戦後処理とか…」
「あ、頑張って下さい」
「おう」
ライは包帯を巻き終えるとポンと叩いてから部屋を出て行った。
「ライさんカッコいい!!」
「でさ、ライラの出生マル秘話が聞きたいな」
「え!?い、いや。そ、そそんな聞くようなもんじゃないよ?!」
「聞きたいなぁ」
動転しているライラに近寄るフィリア。
「えーと、フェルオールって龍と銑川風良の子で、緑の国生まれだけど、母さんが龍と人との子はどうなるか分からないし不安だわって言って、通りがかったペガサスに押しつけて10年間白の国で過ごしたんだよ!!」
「おお!!…凄いな、あいつの情報収集能力…半分は予想だとか言って、全部合ってやがる…」
何かに感動しつつフィリアは腹が立ってきたらしい。
「くそ…なんなんだ、アイツは!ねェライラ聞いて。ライラのことを調べた奴がね、これは半分以上予想なんだが…って言ってた割には全部合ってたの。これ、どう思う?なんかムカつかない?」
「さ、さあ…ノーコメントってところで」
ライラは逃げた。
「そっか。私、疲れたから寝るね。おやすみ」
「お休み~」




