とりあえず、自由だぜ!?
―フィリアとライラの部屋―
「今日はもう寝るね。…おやすみライラ」
「おやすみ~」
フィリアが寝室に入って勉強部屋からいなくなったのを見るとライラはノートを出して何かを書き込んでいく。
「ふんふん~」
ノートの表紙には〝フィリアの観察&分かったこと″と書いてある。
バレたら殴られること間違いなし。それも分かってて書いているライラの度胸に感心。
―1日後―
今日は土曜日。授業も任務もない、自由の日。
ライラが起きるともうすでにフィリアが起きていて本を読んでいた。
「おはよーフィリア!!」
「…おはよう」
ライラが声をかけるとちょっとだけ顔を上げてフィリアが挨拶を返した。
「今日、何するー?」
「あ…今日はちょっと用事があって。ごめん」
「え、誰と?何すんの?」
聞いてからライラがしまった!怒るかな?!というような顔をするとフィリアが少しだけ笑ってから答えた。
「兄上とね。ああ見えて妹が心配でたまらない人だからさ。一緒にい…この学園にも入ってくれたしね」
「何?いって何!?」
「内緒。それじゃ、また後で」
フィリアはライラの質問に微笑して部屋を出て行った。
「もしかして、私が起きるの待っててくれたのかな…?しかも、すっごくきれーだよなぁフィリア」
妙におっさんくさいセリフを呟くとライラは例のノートを取り出してパラパラめくる。
「フィリアって…もしかしなくても、第3王女なんだろうなぁ。昨日のアースさんの言動と言い、フィリアの行動と言い…」
ライラがフィリアの謎を明かそうと頑張って観察ノートをめくる。
「よし、フィリアが帰ってきたら鎌をかけてみよう」
そう呟くとライラはノートと教科書を取り出して机の上に置いてから食堂に行った。
―そのころ、フィリアは…―
学園から少し離れたところに有る街のとある広場に有る休憩所のようなところでライと2人向かい合って座っていた。
まわりの人からは仲の良いカップルだなぁとか思われている。
「兄上、用事って何?」
何を言われるかは予想が付いているフィリアは必死に平常を保とうとしている。
「なんか昨日ドラグニルを見た気がして…」
「私は召喚していない。ポラルがいけない」
フィリアは怒りを抑えるのもすぐに諦めて|反論(いい訳)をしてみる。
「ウォータープリズムを見た気が…」
「ドラグニルに襲われたから」
「目立つなと…」
「目立っていたのは私よりもライラです」
「…ライラが可哀想だぞ、それは」
「可哀そうなのは私です!」
それは自分で言うべきじゃないだろう?と偶然聞こえてしまったSさんは思った。
「先生が召喚で失敗したからって…」
「先生が見本を見せろって、それにライラが…」
なんだかだんだんライラが可哀想になってくるフィリアのいい訳でした。
「…それで、昨日の任務で分かったこと、とやらについて聞くが?」
なんだか疲れたライは怒るのを中断してフィリアに報告を頼んだ。
「あ、はい。ええと、反第3王女の勢力が大きくなってきました。私も気をつけますけど…」
「…それで、いいんだな?」
「はい」
ライの言葉にフィリアが頷いて席をたち学園に戻ろうとした時でした。
いきなり、平和だった広場に妖しい黒づくめの男たちが現れたのです。
そして、フィリアの周りを取り囲み、言いました。
「お前が…で合っているか?一人で来てもらおう」
「…嫌と言ったら?」
フィリアが難しい顔をして代表らしき男へ聞き返しました。
「お前のいる学園に月旗軍を差し向けた。断れば攻め込む手はずになっている」
「待て。月旗は王直属の軍だ。何故お前らが動かせる?」
ライは輪の外にいたけれど、代表者に聞きます。
「それは…王様がお許しになったのですよ。第3王女討伐を」
「ウソでしょ!?なんで…だって…」
代表者の勝ち誇った言葉にフィリアは掴みかかって叫んだ。
「とにかくそういうことなので、ついてきてください」
「…わかった。兄上は王宮に…真偽を確かめて…」
フィリアは悔しそうに頷くと男たちについて広場から何処かへ移動した。
ライはそれを見ると静かに王宮へ移動をした。
―少し前のライラ―
カリカリカリ…
勉強机で何かを書いています。
カリカリ
昨日の授業(召喚)のまとめです。
「あ゛~、ヒマっ」
パリポリ…ポテチを食べている。
「フィリアいつ帰ってくるんだろ~」
フゴフゴフゴ…何かを食べています。
「はやくフィリアをいじりたいなぁ~」
ライラがそんな嫌な奴発言をしたときです。部屋に黒づくめの男が来てライラを引きずり出しました。
「うわっ!な、何?!」
「お前がフィリアの親友で間違い無いな?」
「えっと…本人がどう思ってるかは分からないけど、私としてはそのつもりです」
バカ正直に答えるライラ。
「よし、他の奴らと一緒に校庭に集めとけ」
男は遅れて入って来た部下に言うと、フィリアの机や本棚をあさり始めました。
「え!?な、何?!何なの~?!」
ライラは校庭に事情が呑み込めないまま連れて行かれた。
校庭に行くとセノーテや、ソフィーも男たちが張った結界の中に閉じ込められていた。
「セノーテ!ソフィー!何なの、これ?」
ライラが聞いてみる。
「分からないの…説明も受けてないし…。でもね、あそこに旗がかかっているでしょ?」
結界の周りに立っている音達が掲げる旗と学園の前に陣を敷いた軍隊の旗を指すセノーテ。
「うん。あの旗に三日月が描いてあるね」
ライラが旗を見て言う。
「あれはね、この国、青の国の王様直属の軍隊の旗で月旗といって、王族以外は動かすことができないの」
「今、ここに居る軍隊は第3王女直轄の軍隊だね」
セノーテの後を継いでソフィーが説明する。
「へぇ~。どうしてわかるの?」
「えっとね、旗のてっぺんに有る飾り房の色だよ。この軍は銀色でしょ?」
「そうなんだ。ところで、なんで生徒と先生が校庭に集められたの?悪いことはしてないよね?」
「わからないよ。王女様の考えてることなんて」
なんとなくライラが落ち着いてきたら、男が一人来てライラを連れ去った。
「ちょ?!は、放してよ!!」
ライラの叫びは無視された。
男に引きずられて、ライラは結界内に居る生徒たちから離れたところに移動し、男たちに囲まれる。
「な、ちょ、え、ま…」
混乱していて言葉にならないライラであった。
「よし、殺れ」
「ハッ」
この言葉を理解するまでにライラは少々時間を無駄に費やした。
「え~…こ~ろ~さ~れ~る~!!誰か~!!」
緊張感が皆無なライラのこのセリフを聞いて、大刀を振り上げていた男から力がやや抜けた。
トンっと何処からか小さく音がした。




