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「君は心が狭い」と言ってくる婚約者に言い返しました

作者: 徒然草
掲載日:2026/08/14

 婚約者に「心が狭い」と言われ続けたヒロインが我慢できなくなるお話です。あっさりと終わります。


「シルフィ、僕の分の宿題もやっておいてくれ。」


「シルフィ、そのドレスは地味じゃないか! 僕はもっと華美なデザインの方が好きなんだよ。」


「シルフィ、今日のデートは行けなくなった。」


 シルフィ・ランダー子爵令嬢の婚約者、ダンドル・アーダー子爵令息は何時もシルフィに自分の考え、都合を押し付けてくる。シルフィが反論したり自分の考えを言っても聞き入れて貰えず、シルフィは渋々ダンドルの言う事を今まできいてきた。


「シルフィ、今日の夜会だが僕はサナのエスコートをさせて貰う事にした。」


 だが今回ダンドルに言われた事は、今まで以上に酷いモノだった。


「ダンドル、夜会では婚約者同士で参加するのが常識です。それなのにエルボー男爵令嬢のエスコートをするだなんてどういうつもりですか?」


 サナ・エルボー男爵令嬢はダンドルの友人だ。2人が親しい事はシルフィも知っていたがダンドルがエスコートをするだなんてはっきりと言ってあり得ない。


「サナに頼まれたんだ。サナはまだ婚約者が居ないし何も問題はないからな。」


 いや問題しかない。シルフィは思わずそう言い返してしまいそうになるが既のところで我慢した。


「そのような事をすればダンドルとエルボー男爵令嬢の仲を誤解する者が現れますよ。それに私と不仲だという噂だって…。」 

 

 サナに婚約者が居なくてもダンドルには婚約者(シルフィ)が居る。婚約者の居ない令嬢を傍に置くダンドル、婚約者がいる令息と近くにいるサナ、そして放って置かれるシルフィ。誰がどう見ても問題でしかない。


「はぁ、いいかシルフィ。」


 シルフィの話をうんざりした顔で聞いたダンドルが面倒臭そうな顔をして言う。


「何時も言っているが君は心が狭いよ。これくらいの事で苛立たないでくれよ。」


 ダンドルは何時もシルフィの心が狭いと言ってシルフィを非難し、自分の主張を通してきた。ダンドルは今回の事もシルフィの心が狭いと言えば通ると思っているのだろう。


「…私の心が狭い?」


 だが、今回についてはシルフィはダンドルを絶対に許す事は出来なかった。


「貴方が図々しいだけなのでは無いのですか?」


「…なっ!?」


 今まで言い返してこなかったシルフィからの反論に、ダンドルは驚いた顔をした。


「確かに私は貴方に何かを言われる度に不満を口にしました。でも、それでも最終的には貴方の思い通りにしてきたでしょう。本当に私の心が狭いのなら貴方の頼みなんて聞きませんでしたよ。」


 宿題をしてあげた。ドレスもダンドルの好みを意識して買い直した。デートをキャンセルされても怒らずに許した。ダンドルの言葉に何も言わずに従う事はなかったが、そんなシルフィに感謝せずに当たり前のように振る舞うダンドルにこそ、問題があるのではとシルフィは非難する。


「な、何だと!」


 ダンドルはシルフィを睨み付けてくるが、今のシルフィには恐怖よりも怒りの方が強かった。


「今回の件は看過できません。私の心が狭いのかダンドルが図々しいのか、私達の両親に意見を聞いて判断するのはどうでしょうか?」


 どちらの主張に問題があるのかを第三者に、両家の当主達に判断して貰おうとシルフィは提案する。


「態々そんな事をする必要なんて無いだろう!? 本当に君は心が狭いな!」


 ダンドルは拒否してきたが、シルフィは失笑する。


「あら、お互いの両親に意見を聞くだけなのですからすぐに終わりますよ。そんな事もしてくれないのですか、心が狭いのはダンドルも同じなのではありませんか?」


「〜っ、口が過ぎるぞシルフィ!」


 今までダンドルに言われた心が狭い、という言葉でこんなにも憤るダンドルにシルフィは呆れてしまう。


「もうこれ以上話していても埒が明きませんね。兎に角、私はエルボー男爵令嬢のエスコートの件は認めたくありません。この事は両親に相談させて頂きますね。もし両親がダンドルの言う事が間違っていないと言うのであれば謝罪しますね。」


「なっ、待て!」


 ダンドルの呼び止めようとする声を無視してシルフィはその場を離れる。ランダー子爵家に帰ったシルフィは早速両親にダンドルの事を伝えると両親は憤った。後日、アーダー子爵家にシルフィが両親と共に抗議しに行くとダンドルの両親は謝罪してきた。ダンドルが落ち込んでいる様子を見る限り、ダンドルも正直に話してアーダー子爵達に叱られたようだった。


 その後、今までダンドルに心が狭いと侮辱されながらシルフィが我慢を強いられた事も話し、友人であるサナをエスコートしようとした件を重く見てダンドルが有責の婚約破棄をする事になった。


「実は私共は今までダンドル令息が(シルフィ)の事を心が狭い、と侮辱していた事を知らなかったのですよ。」


 シルフィの父はにっこりと笑みを作りながらダンドル達を見た。


「もっと早くに知っていれば婚約解消で済んだのですがね。シルフィの心が広すぎたせいでこのような事になってしまい残念でしたね。お互いに…。」


 この言葉にはダンドルへの嫌味だけでなく、シルフィへの文句も含ませている。


 シルフィが父に報告した時、何故もっと早くに言わなかったのか聞かれた。元々シルフィとダンドルの婚約はお試しのようなものだった。強制力もなく恋愛でも無かった為、シルフィが嫌だと言えば解消出来るモノだった。


 それなのにシルフィが言わなかったのは、ダンドルの言う通り自分の心が狭いのかもしれないという考えを持ってしまった事。そして不貞行為をされたり暴力を受けた訳でもないのに婚約解消したいと言うのは恥ずかしい事なのでは? という変なプライドがあったからだった。婚約者を放っておいて、友人の令嬢をエスコートすると言われた事でようやく目が覚めたのだった。


「…。」


 シルフィは心が広いのではなく、ただ馬鹿だったなぁと自分に内心で苦笑する。


 ダンドルは気不味そうな顔をしてシルフィを見た後目線を逸らした。今までの言動はシルフィへの嫌味ではなく、本当にシルフィの心が狭いと思っていたのかもしれない。ダンドル以外のこの場に居る全員から非難されてダンドルの感覚が可笑しい事に気付き始めたのかもしれない。


「本当に申し訳ありませんでした…ダンドル、突っ立っていないで頭を下げろ!」


「っ…。」


 アーダー子爵に謝罪を促されるもダンドルは自分の非を認めたくないのか、それともプライドなのか黙り込んでしまう。


「…謝罪して下さい。」


 シルフィの言葉にダンドルは驚いた顔をする。この場にいる全員からの視線を集めたシルフィは穏やかな笑みを作る。


「そんな事も出来ないようでは私のように心が狭いと言われるか、また図々しいと言われてしまいますよ?」


「〜っ…。」


 ダンドルはシルフィを睨みつけてきた。


「ダンドルッ!!」


「っ! す…、すみませんでした。」


 アーダー子爵の怒りに怖気づいた様子で、ダンドルは渋々頭を下げた。ダンドルの様子をシルフィは小気味良さそうに眺めた。


 その後、シルフィとダンドルの婚約破棄の話が広がりダンドルの行動は問題視され、ダンドルは周りから敬遠された。ダンドルがエスコートしようとしていたサナだが、サナはエスコートの話なんてしていないと主張しているらしい。ダンドルとサナは互いに言った言わないで言い争っており、まだ決着はついていない。


「いい気味だわ。」


 どちらが正しいのかは分からないが、ダンドルの状況を楽しんでいる自分はダンドルの言うように、心が狭いのかもしれないなとシルフィは思うのであった。


 心が狭いと言う人ほど、図々しかったりしますよね。なろう小説でヒロインの心が狭い、それくらい赦せと言って自分の都合を押し付ける婚約者は図々しいなと思いながら読んでおり、「心が狭い」と言われるなら「図々しい」と言い返して欲しいなと思って書いてみました。


 最後まで読んで下さり有難うございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
レッテル貼りは強力ですが、貼る側も思考停止してしまう罠がありますよね。
>互いに言った言わないで言い争っており なんだよ。 もうお互いしか結婚できる相手なんていないんだから、喜んで結ばれなさいよ┐(´д`)┌
いちいち心が狭いとか抜かす輩は、いろいろ広くていらっしゃるんだろうな!と要求してみたくなりますね 「焼きそばパンくらい奢ってよ〜売り切れる前に確保してね!心広いんでしょ!」とか「心の広いあなたにお願い…
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