表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コメディー短編(現代社会)

ヒーローインタビュー、俺なの!?

作者: 多田 笑
掲載日:2026/04/29

少しでも笑っていただけたら嬉しいです。

 俺はプロになって三年目。


 怪我の影響もあり、これといった結果も出せず、鳴かず飛ばずのままここまで来た。


 正直に言えば──今年のシーズンが終わったら、クビになる可能性はかなり高い。


 そんな崖っぷちの状況にいる俺が──


 なぜか今、ヒーローインタビューを受けている。


「本日のヒーローは、背番号87、中嶋なかじま しげる選手です!」


 いや、絶対違う。

 マイクを向けないで。

 ヒーローは、俺じゃないから……。


 だって今日の試合──


 九回裏、三点ビハインド、二死満塁。


 代打で出てきた神崎さんが、文句なしの逆転満塁サヨナラホームランをかっ飛ばしたのだ。


 どう考えてもヒーローはあの人だろ。


 俺? 

 ベンチで座ってただけですけど?

 試合に出てませんけど?


「まずは今の率直なお気持ちをお願いします!」


 いやいや、なんで!

 なんで、普通に進行するの!


 観客も──


「良かったぞ~! お前の応援!! 最高の試合だった」


 とか言ってるし。


 なんでだよ!! 俺じゃないだろ!

 何なの、これ……罰ゲームなの?

 いや、ドッキリか!?


「えー……あの……」


 俺は一応、マイクに向かって口を開くよ。

 開くしかないよね? 逃げ場がないんだから。


「今日は……その……いい試合でした」


 当たり障りのないことを言ったけど……

 というか、それしか言えないじゃん。


「いい試合でしたね! 特に九回の場面はしびれました!」


「そうですね……しびれましたね……」


 いや俺、打席にも立ってないんだけど……。


「ベンチからは、どのようにご覧になっていましたか?」


「全力で応援してました」


 これは本当だ。少なくとも嘘ではない。


「なるほど! チーム一丸となった勝利ということですね!」


「……そう、ですね」


 なんで成立してるんだ、このヒーローインタビュー。


 だ、誰か……助けてくれよ……。おかしいだろ、この状況。どうして誰も疑問に思わない。


 あ、神崎さん!

 タオルで顔を拭いている場合じゃないですって。

 普通にくつろいでいる場合じゃないですって。

 「お前じゃねぇだろ!」とか神崎さんがツッコんでくださいって。


「ナイス応援!! ナイスベンチ!!」


 ……違う……違うんですよ、神崎さん。

 そうじゃないんです。


 ん? 神崎さんに、助っ人外国人のクロマニヨンが近づいていく。もしかして、アイツならこのおかしな状況を打破してくれるかも……。


「ナカジマ、カンザキノ打席デ、“ハナクソ”ホジッテタゼ」


 余計なこと、言うな! クロマニヨン!!


「ナイス、ハナクソ!!」


 違う、違う……神崎さん!

 “ナイス、ハナクソ”って、何すか……。マジでいじめですか?


「ナイス、ハナクソ! どのくらい丸めたんでしょうか?」


 インタビュアー!! お前、何を聞いてるの!?


「えっと、そーですね~、一分くらいでしょうか……」


 俺も何を答えているん!!


「ということは、手に汗握るあの場面で、手に“ハナクソ”を握っていたんですね?」


 インタビュアー! お前、何、言ってんの!! ドヤ顔すんな!


「ハナクソ!! ハナクソ!! ハナクソ!!」


 観客まで、ハナクソコール……。

 いやいや、ちょっと、俺……ハナクソキャラになっちゃうじゃん!!


「今シーズン三年目ですが、ここまで苦しい時期もあったかと思います」


「……はい」


 急に話題を変えてきたな。さすがに、ヒーローインタビューで、ハナクソはマズいと思ったのか……?


「その中で、今日この舞台に立っている今の気持ちはいかがですか?」


 いやいや、“この舞台”がおかしいんだよ。

 でも、答えるしかないよね!?


「……正直、自分がここにいるのは不思議な感じです」


「そうですよね! 何で選ばれたか分かりませんからね!」


 いや、お前も分からんのかい!


「……でも、チームの勝利に少しでも関われたのなら……」


 関わったか、俺?

 ハナクソを丸めていただけじゃないか?


 いや、きっと勝利に貢献したよね……。


「……それは嬉しいです」


 パチパチパチパチ


 観客席からの拍手は嬉しいけど……。


「ハナクソ!! ハナクソ!! ハナクソ!!」


 ハナクソコールは、止めて……。


「素晴らしいコメントありがとうございます!」


 違う、違うよ~

 満足そうに頷かないで、インタビュアー。


「では最後に、ファンの皆さんへ一言お願いします!」


 来てしまった、締めのコメント。

 どうせここまで来たんだ。開き直るしかない。


「その……正直、自分はまだ何も結果を出せていません。今日も、試合には出ていません」


 なんか緊張する……。


「だからこそ──次は、ちゃんと試合に出て、ちゃんと結果を出して、ここに立てるように頑張ります」


 パチ、パチパチ……

 パチパチパチパチ──


 ワァァァァァ──ッ!!


 次にこの場所に立つときは、ちゃんと胸を張って、“ヒーロー”として呼ばれたい。


「ありがとうございました! 本日のヒーロー、“ハナクソ”でした!」


 お前までハナクソ言うな、インタビュアー!


「ハナクソ!! ハナクソ!! ハナクソ!!」


 ハナクソコールは、マジで止めてくれ……。




 翌年。


 俺は登録名を“ハナクソ”に変えて、首位打者を獲得した。

なんだ、この話!?


最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
たまーに、なんかわけわからない現実があってもいいですよねー ʕ^ᴥ^ʔ←だけかもしれませんが。 意外と周りが温かいような煽りのような感じも素敵でした。 ラスト、本人も受け入れていて→首位打者獲得ハッピ…
助っ人外国人の名前がひでぇ(苦笑)。 ヒーローインタビューを先に経験させて、奮起を促す監督の配慮。 ひょっとするとハナクソのバースデーサプライズかとも、想像しながらの登録名変更のと首位打者のオチ。
 シュールな笑いの世界に思わずくすくす笑ってしまいました。読了後に何故か「世にも奇妙な物語」のテーマ曲が脳内を流れて行きます。でも、首位打者になれて良かったです。謎のヒーローインタビューは、彼の輝かし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ