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4周目 3




 友則と静音にも、三周目の最後に夜闇の王と会ったことを話しておいた。元の世界に戻るためには、アイツとの戦いは避けられないことを。


 夢のなかで出会った老人から、巫女の秘境に行って、王剣を入手するように助言されたことも説明する。そして王剣を手にするには、英雄と呼ばれる者に勝利しなくてはいけない。


 鉄真の説明を聞き終えると、英雄というのが不滅の三王の一人なのだろうと友則は推察していた。


 それとは別に、夢のなかの老人のことも気にかかる。別れる直前に鉄真に剣を向けてきて、また会うことをほのめかしていた。あの老人のことも留意すべきだ。 


 学食で食料や飲料を【アイテムボックス】のなかに収納すると、もう一度ヨゼッタに会うために三人で校舎を後にする。


 この世界に来てから、ずっと学校には助けられてきた。結界に守られていたことで、この世界の夜を安心して過ごすことができた。


 その学校も、これで見納めになる。


 鉄真は心のなかで拠点に別れを告げると、平原に踏み出していった。


 そこからしばらく歩いて魔女の森に到着すると、前の周でさんざん苦労した甲斐もあって、道順をしっかり記憶していた鉄真の先導により、ギミックを一発でクリアできた。


 立ちこめる霧のなかで出現する巨大な虫や獣人たちは、今の鉄真たちの相手にならないので瞬殺していく。


 森の奥にはアーネルとガブスが待ち受けており、伸ばしてくる糸に注意することや、操られている魔物たちは糸を断ち切れば動かなくなることなど、事前にその対策を友則と静音に伝えていたので楽に戦えた。


 あんなに苦戦したアーネルとガブスを短時間で撃破する。 


 ガブスを倒すと、二本目の獣王の大剣をドロップした。それは脳筋武器を得意とする友則に渡しておいた。 


 アーネルを倒すと、今回は【支配の糸】はドロップできなかった。代わりに人形使いのローブという、アーネルが身につけていた黒地に赤のストライプが入った防具を入手する。


 魔術師系の装備なので静音に渡したが、渋い顔をされてしまう。


「あんなヒスったヤバい女の服なんて、着たくないけど?」


 という理由から、受け取りを拒否された。その気持ちはわからなくはない。鉄真も、あぁいう女が身につけていたものにはあまり触れたくない。呪われていそうだし。


「生存率をあげるためなんだから我慢しなさい」


 友則が叱りつけると、静音はしぶしぶ人形使いのローブを受け取って装着していた。


 魔女の森での戦闘を終えると、鉄真のレベルが840まで上がる。これでまた強くなった。


『人形使いを撃破したことで、魔女の森の霧が消滅します』


 アーネルを撃破すると、前回と同じくシステム音が聞こえてくる。森のなかに立ち込めていた霧が消えていく。


 魔女の森のギミックが解除される。道を間違えてもスタート地点に戻されることはなくなった。


 ……もしもユイナが自分たちの後を追ってきたら、これで森を抜けられるはずだ。


 そのもしもはないのかもしれないが、少しでも可能性があるのなら鉄真はそれを信じたい。


 正しい道のりを知っていたとはいえ、魔女の森は広大だ。抜けるまでに相当な時間を要した。とっくに辺りは暗くなっていて、一日目を消費する。


 でも今回は友則を失うことなく森を抜けることができた。三周目よりも良い方向に進んでいるのは間違いない。


 森を抜けたすぐ先に神意の像を発見したので、一日目の夜はそこで結界に守られながら野宿する。


 地面に寝転がって睡眠を取らなきゃいけないので、いつもみたいに静音が寝心地の悪さについて不満をもらすと、また友則に叱られていた。


 ……こんなやりとりも、もうすぐ聞けなくなるんだな。


 それを思うと、なんだか鉄真は一抹の寂しさを覚えた。




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