表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/42

2周目 終




 満天の星空がそこにあった。


 現実世界と違ってここには雑多な建物がない。遮るものが何もないから、夜空を彩る星々がよく見える。


 ここは空に浮かんでいる島だから、きっとどこよりもあの星たちに近いはずだ。


「…………」


 静寂な平原のなかを歩く。日が高いうちは魔物たちの姿が散見されたが、もうソレらはどこにも見当たらない。みんな消えてしまった。


 全身が真っ黒で、ドロドロに粘ついたモノに殺されてしまった。


 一人っきりで前に進んでいく。歩く度に傷口から血がこぼれる。生命の数値であるHPが減り続ける。


 三日目の夜に結界が崩壊するのはわかっていたので、今回は最初から学校にはいなかった。 


 学校から離れた洞窟の奥に待機していたが、そこにもヤツらは現れた。どこからでも湧いてくるようだ。


 一周目よりも遙かに強くなっていたから戦うことはできた。しかしそれも最初のうちだけだ。もっとレベルの高い闇の眷属たちが新たに出現してきた。


 仲間たちと必死にレベリングしたが、足りてなかった。


 それから洞窟を出ても、闇の眷属たちは襲ってきた。


「……すまない。もしも続きがあるのだとすれば、次の俺に託す」


 そう言って、友則は倒れた。


 一緒にその言葉を聞いていた静音は「ありがとう」と鉄真に感謝を伝えてきた。


 どうしてそんなことを言うのか尋ねてみたら……。


「鉄真、わたしたちのためにがんばってくれたから。二回目だから、わたしたちよりも辛かったよね」


 鉄真のことをねぎらうと、静音はやさしく微笑んでくれた。


 それが静音が見せた最後の表情だった。そのまま静音は動かなくなった。


 満足なんてしていない。ぜんぜんこんなんじゃ納得できない。


 それでも、静音が笑ってくれた。ありがとうと、言ってくれた。


 がんばって良かった。そう思えた。


 ユイナは……一日目に別れた後から、学校には戻ってきていない 


 今頃どこで、何をしているのか?


 あいつのことだから、死んではいないはずだ。


「……そろそろか」


 視界全体が白く濁って、目まいがした。生命の数値であるHPがなくなりかけている。


 倒れることはしない。膝を折ることはない。


 意地を張るように、最後まで立ち続ける。


 夜空を見あげれば、ぽっかりと天に穴が穿たれている。満月を黒く塗り潰したような真円。そこから半透明な光の階段が伸びている。


 生温かな風が吹いて、ザワザワと草木が音を立てている。


 遠くのほうで、銀色の髪が揺れたような気がした。


「……そんなに離れてたら、【鑑定】できねぇよ」


 今回はまともに出会うこともできず、近くで顔を見ることすらできなかった。


 ――夜空が引き裂かれる。 


 空の割れ目から、ドロドロがこぼれ落ちてくる。


 とめどなくあふれ出てきて、止まらない。


 天の地にソレがひろがっていき、全てを呑み込んでいく。


 まもなく終焉がもたらされる……。


『ゲームオーバーを強制的にキャンセルします』


『【レベルループ】を発動します』


『『隻眼の騎士を撃破』『魔剣士を撃破』『巨人の騎士を撃破』『氷の魔術師を撃破』』


『以上の項目を達成しました。報酬として経験値が与えられます』


『――――コンテニューします』


 …………どうやら、またやり直せるようだ。


 高宮鉄真の冒険は、まだ終わらない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ