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君の妖に願いを  作者: 雨y
青一章 学校
6/12

2人の事情

放課後、湊、翔の2人は寮へ戻り、赤崎、山谷は2人について知るために職員室へと向かっていた。


「湊は意外といい奴だったな」

「そうですね。翔さん以外敵だと思ってる方だと思ってましたよ」

「翔は全然喋ってなかったが、過保護になる理由もわかる。まるで小学生を見ている気持ちになる」


少ない会話の中で、彼女らは2人のことを分析していた。

2人とも、そういった癖がついているのだ。

赤崎は退治師の有名一家として、山谷は観察士の資格を持つ者として。

職員室で清水を呼び、相談室へと向かう。

清水もなんで呼ばれたのかわかっている。

相談室は防音となっており、これも退治師のルール上でそうなっている。

犯罪行為などと言った悪用は厳禁である。

相談室に彼女らが入ると、内側から鍵を閉め、パイプ椅子に腰をかけると清水は質問をした。


「どんな事が知りたいの?」

「2人から許可はもらっています。2人のことについて、教えていただきたいです」

「まずは湊からだな。プライベートすぎることは教えないからそこは許して欲しい」


清水は幸美と星夏、2人から聞いた情報も込みで2人に教えていく。


「湊は青色を長時間見続けると、研究所に入る前と入っていた時の痛みかなにかで暴走する事がある。湊にとって青が何を意味するのかは本人もわかっていないが、私たちはそれを発作と呼んでる。止められるとするなら、翔だけだろうね。拾われてから長期間ずっと一緒にいたから止められるんだと思う」


湊の発作は1週間に1回ほど起こる。

青はこの世にたくさん存在する。

ふとした時には起こっており、毎度翔によってすぐに落ち着いている。

発作が起こるよりも前に翔が気づくからか、実際にどのくらいの被害が出るかはわからない。

と言っても、下手すると校舎を半分壊せてしまう可能性があることだけはわかっている。

授業中、教師達は出来るだけ青を使わない。

湊の弱点と言ってもいい事を他の生徒に漏らさないためである。

発作の後、湊は何も覚えていない。

まるで封じられているかのように、綺麗に忘れるのだ。


「あと、人が苦手なのは研究所のせいだ。翔はともかく、湊は慣れて行ってくれるから、友人になってくれ」

「そこは今日話してわかった。いい奴だ」

「よかったよ。ま、ツンデレ野郎だと思えば可愛い奴だよ。問題は翔の方だ」


生徒2人は唾を飲み、表情が暗くなった先生の方を見る。

湊のことを話していた時はいつもと変わらぬ明るい表情だったため、緊張が2人の体を締め付ける。


「翔は湊以外に懐かない。2人を拾った幸美せんぱ、美幸さんや星夏さんにも時々怯える。笑い声や笑った表情が特に苦手なんだ。大きな音も時に翔を苦しめている。正直言って、翔は学校に来るべきではなかった」


「あと、翔の精神年齢が10歳ぐらいから上がっていない。だからと言っていいのかわからんが、湊という唯一安心できる存在がいないだけで翔は精神が壊れかけた。勉強は頑張れる子で根もいい子。妖気の扱いも優れているが、その…優れすぎている。つまりは、妖気適正が97%を超えているんだ」

「きゅっ、⁉︎」


2人は声を失った。

妖気適正は妖気使いにとって重要である。

40%を超えると2級の退治師にだってなれるぐらい強い。

1級となると50%もあげる事ができる。

しかし、通常の妖気使いは30%。

適性を上げる行為は体に負荷をかけている状況である。

また、適性のパーセントは人によって違うが、時に70%もの適性を持つ者が生まれてくる。

そう言った者は強い妖気使いとなるが、寿命が短く、いつ死んでもおかしくない、そう言う脆い存在なのだ。

寿命が短いと言っても、急に体の調子が狂いだし、心身が徐々に弱っていくらそんな一種の病気。

その病気は突然倒れて死ぬことだってある。

それに、妖気適正が高い人間は妖魔に好かれやすい。

つまりは、食されたり、物珍しさにコレクションされる事が多い。

それが97%を超えている、と言うことは、


「翔さんは、常に死と隣り合わせであり、いつ妖魔に狙われてもおかしくない…」

「ああ。退治師としては囮役にピッタリであると考えればいいし、本人もそう思っているが、正直そうさせたくはない。妖気適正を下げる方法を星夏さんが教えて常に下げている状況であるが、それでも50%はある」


40%も下げているというのはすごい事である。

上げるより下げる行為は難しい事ではないが、妖気をずっと抑え込んでいるようなものだ。

それを続ける行為は苦しいものであり、感覚で例えるならば、気持ち悪さが続き、吐き気がずっとある状況だ。

そりゃ気が弱くなるし、元気のないように見える。


「翔は研究所にとって大事だったんだろうな。誰よりも“大切”にされ、弱りきっていたらしい。本当に生きているのが奇跡かと言うほどに」

「湊さんはそのことを、」

「知ってるさ。翔は知らない。すでに痛みと恐怖を覚えているんだ。内容思い出させたくはない。そりゃ人にだって慣れはしない」


先生の目には怒りが満ちていた。

質問をした2人も胸を苦しめていた。

小学生を見ていた気持ちになる。

そう言った赤崎は恥じた。

確かに心は幼いが、そんな心を持った少年が今も苦しんでいる。

初め彼を見た時、彼女はなんて弱そうな人間なんだと感じていたのだ。

実際、2人を誘った理由は湊が強そうで、翔がどこか守らなければならない、そんな弱々しさを感じていたためだった。

だが、彼は強い。

そして、また強く守らなければならないのだと感じた。


「私からお願いがある。2人を守ってくれ。教師としてではなく、彼らを見守った1人としてのお願いだ。彼らの友人になって欲しい」


清水先生は優しく微笑んだ。

2人は強く頷き、先生に感謝を伝える。


「教えていただき、感謝します。任せてください。私も美春も2人を守るために日々努力します」

「はい。私はトレーナーとして、絶対に死なせたりしません。妖気適正が高くても、です!」

「頼もしいな。それじゃ頼む。明日の訓練、過保護第2号の星夏さんが来るから、頼んだぞ」


その言葉にまた2人の背筋が伸びた。

緊張がまた別の緊張へと変わったのだ。

有名退治師の星夏が明日来るのだから。







時間が少し経った相談室。

1人、まだ清水が残っていた。

そこに入ってきたのは四角のメガネをかけた男性。

慣れた手つきで鍵を閉め、清水の向かい側の椅子に座ってニヤリと笑った。


「No.03がNo.3の位置情報をつかんだ」

「ゼロスリーが?厄介ね」

「No.03が妖魔を使ってこの学校を襲いに来る可能性が高い。絶対に“流精氷牙の調停”の力を開花させるな」

「安心して。No.3の近くには妖魔が好きな97%がいる。ゼロスリーも妖魔をコントロール出来ない」

「は、俺としてはその97%の方を取り戻したいんだがな」

「ダメよ。1級退治師を怒らせるのは怖いんだから。私がスパイだってバレたら即殺されちゃうわ」


清水 澄菜、本職はフリーズ研究所所属の研究者。

担当、No.3

研究所が潰される2年前に退治師の免許をとり、退治師協会のスパイを行っている。

現在、湊と翔の回収のため、学校の教師をやっている。


「にしても、ゼロスリーめ、あんなに言うこと聞かないやつに成長するなんて。あー!イライラする!」

「声がでかいわよ堀山。いくら防音でも学校ここでは気をつけて欲しいわ」

「はっ、お前と違ってこっちは研究対象がいなくて過去の資料を漁るしか出来てねぇんだよ。おかげでやりたいことばかりだ」


堀山 響、フリーズ研究所所属の研究者長。

担当、ゼロナンバー。

妖気使いで、属性は水。

通常カメレオン。


「じゃあ私は関わらないからその研究対象を回収しちゃえばいいじゃない」

「は、No.03の回収が終わったすぐにでも」


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