1日目の終わり
そこから先生が交流を深めるためにとミニゲームを近くの人とやることになった。
が、2人の班はそこまで盛り上がらず、静かな空気の中ゲームを行なった。
理由は翔の怯え用のせいだろう。
湊にひっついて離れない。
一緒にやることになった人には申し訳ない気持ちになりながらも、湊はできるだけ翔のサポートをしながらゲームを行った。
幸い、1番遅くゲームが終わった班にはなったが、終わらせることが出来た。
終わっただけだけマシかと担任である清水先生は笑い、そのあとは学校案内、部活説明などされた。
下校になると2人はすぐに教室から出た。
翔がそろそろ限界になっていたためである。
慣れていくものだとは思っているが、入学式でたくさんの人を見た上に初日というので、流石にきつかったらしく、急いで寮まで向かった。
初めての大人数だったが、ここまで耐えたことを誉めようとベットに寝かせ、湊は翔の細い藍色の髪をサラッと撫でる。
「湊、今日のご飯なに?」
「翔の好きなエビグラタンなんてどうだ?」
「やった。それじゃあ、明日は湊が好きなかぼちゃのスープが飲みたい」
「そうしよう。ゆっくり休んでろ。出来たら呼ぶから」
湊は眼帯を外してやると、電気の反射でうっすら黄色に光る瞳が目立つ。
湊は自身も持っている色だが、翔の右目が深い緑なだけあり、黄色に光る目がより綺麗に見える。
湊以上にこの目をコンプレックスに思っている翔には申し訳ないと思いつつも、彼は翔のこの目が好きなのだ。
自分の目に対しては嫌いだと言うのに。
少しの間見てからベットから立ち上がり、キッチンへと向かう。
慣れた手つきで料理するのは美幸仕込みだ。
いつか嫁ができた時に困らないようにと。
教え込まれた時、なぜ自分が作る側なんだよと言うと、そう言うのは差別だとデコピンを喰らった。
寮に入って数日だが、美幸の手伝いなしに料理できるようになった事を今では喜ばしく感じていた。
外食は出来ないし、コンビニでは栄養の偏りがある。
健康と貯金のために料理できると言う点は素晴らしい。
材料は時々星夏が持ってくる。
特に湊の大好きなかぼちゃは山ほど。
なぜかはわからないけれど、かぼちゃを食べると湊落ち着くらしい。
作り終わってからはベッドの上に寝ていた翔も匂いに誘われて机までやってくる。
箸や飲み物は翔が出し、それ以外は湊が準備する。
「「いただきます」」
熱々のエビグラタンを食べながら、湊はこれからどうやって学校生活を送っていこうかと考えるのだった。