体育祭その1
体育祭当日、ブラコン2人は自身の団である白団のテント内で全校生徒の行進や開会式を見届ける。
翔は日に日にたくさんの人がいても大丈夫になっており、1日中外で過ごせるだろうと星夏に言われていた。
団は黒、白、赤、青があり、ひと団にそれぞれの学年が入るようになっている。
青を扱っているという点で、湊は(いつもそうであるが)翔のそばを競技以外の時以外は離れないように言われている。
そばを離れている時は有給を取ってきた星夏が様子を見る形となっている。
「暑くないか?翔」
「平気。今日はいい天気だね」
雲一つない空は鮮やかな青色をしている。
まだ6月だというのにここまで暑く感じるのは太陽が働きすぎているせいか、雲がないせいか。
テントの下にいるというのに暑さを感じるため、太陽の下にいる皆はどれほど暑いのだろうか。
開会式が終わると一気にテントの中に人が入ってくる。
その前にすぐにそのテントを離れ、本部テントへと移動する。
「おかえり。美幸、明日は来れるってよ」
学校関係者ではないが、一番にテントの中に招き入れたのは星夏ですぐに椅子に座らせた。
妖気パフォーマンスは2日目にあるため、湊はホッとした。
自分でも楽しみにしているのかと驚きつつ、ワシャワシャとなでる星夏の手を退かした。
次々に行われる競技。
湊や翔含め、競技をこなしていく。
意外だったのは長時間バランスボールの優勝は美春だったことで、妖気を使えない人が1位になったことに対しざわざわしていた。
もちろん2位は翔で、彼曰く、長時間は飽きたとのことだ。
鏡花が走っているところを何度も見て感じることは頑張ったんだなという褒めである。
何度も上位の順位を取っている姿は汗であろうか、湊の目には輝いて見えた。
そして、鏡花に明日自分も頑張った印を見せてやろうと誓う。
「湊にもアオハルが来たな」
「なんだよアオハルって」
「さぁ」
星夏はニヤリと笑い、また湊の髪の毛をぐしゃぐしゃにし始めた。
半分キレた湊は星夏の手を凍らせたが、すぐに熱妖気で解凍されてしまった。
「お、次は借り物競走か。鏡花も美春も出るんだよな」
「ああ」
「懐かしいなぁ。敦史に一緒に来いって言われてついて行ったらお題が努力家ってあったんだ。まだ付き合ってもないのに美幸に冷やかされたのを思い出すな」
「え、人も連れて行かれるのか?」
「物じゃ大変な物が多いからな。2分の1の確率で人だぞ」
「もしかしたら湊が借り物になるかもな」なんて言う星夏の表情はニヤニヤが止まらないといった感じであり、湊もその表情にイライラした。
翔はと言うと、ずっと遮音ヘッドフォンをつけて小説を読んで自分の世界に入っている。
楽しい体育祭で笑うなとは言えないし、湊はまだクラス対抗リレーが残っているために校舎の中には入れない。
そのためにこうやって静かに過ごしている。
「お、鏡花がお題取ったぞ。なんだろうなぁ」
「あいつならなんでも借りれるだろ」
そう話していると、鏡花はキョロキョロと周りを見渡し、湊と目が合うとそちらに走って向かう。
「おお、予想あたりか!?」
「星夏さん、湊と翔ってどっちが神秘的だと思う?」
「は?」
「湊だ!」
「は!?」
ガシッと音がしたんじゃないかというほど、しっかりと湊の腕を掴み走り出す鏡花。
引きずられないように取り合えず走るが、湊は頭の戸惑いが隠せずにいる。
神秘的、ボクが?と湊は思いながらも、先生の審査では1位でゴール扱いになっていた。
「ボクのどこが神秘的なんだよ」
「湊にはミシュレルットの目があるじゃないか。でも翔もそうなのだろう?それじゃどっちもみたことある星夏さんに聞けばいい、そう思って」
「そ、うか、そぉだったな」
自分の目の色について、最近だれの目線も感じないため忘れていた。
自分はそれほどまでにここ数ヶ月で人間社会に溶け込んでいたのかと驚く。
そして、目について言われたのに怒りも何も感じない。
ふと湊は鏡花を見るとその表情は楽しそうに笑っていた。
鏡花の笑顔は初めてというわけではないが、こんなにも楽しそうに笑う姿は初めてで、魅了されたかのように湊の体は動かなくなっていた。
思い出す、美春の言葉。
鏡花の素に近いと言っていた表情とはこんな顔だったのかと。
そして、星夏が言っていたアオハルとは、青春のことだったのかと気づく。
「どうした?顔が赤いが、熱中症か!?」
「違うから!」
初めての感覚に戸惑ってしまう湊はこれが恋心なのかと脳がぐるぐるして頭の整理ができていない。
最近会っていなかったというのにどうして今彼女を見てそうなったのか、星夏はだからこそだろうなと感じとり、またニヤリと笑う。
それに気づかずに湊は鏡花の隣で他の選手たちが終わるまでいつも以上に暑い頭をフル回転させていた。
「No.3、僕らに恋は出来ないぞ。…っていっても、聞こえないか」




