美幸と初めまして
「こんにちは。美幸と言います」
「はじめまして」
鏡花もそうだが、美幸のキレイな顔に女である美春も一息吐いてしまう。
桃色に近い紫の髪は優しく、美幸の柔らかい雰囲気をより引き立てている。
しかし片手には大きな矛。
これが有名な最上級妖魔の封印系妖魔武器かと美春は目を輝かせる。
現在、最上級妖魔の武器は2つしかなく、もう一つは特殊任務についている美幸の弟が持っている。
「きれいな顔だろー?学生時代はよく告られていたけど、最愛の弟中心な考え方過ぎて恋愛一つしてこなかったんだぜ。もったいないよなー」
「いらない情報教えなくてよろしい!」
頭に軽くチョップを食らわせる美幸に美春はつい笑ってしまった。
まさかのブラコンとは。
湊になんとなく似ているなと思いながら、目線を湊と翔に移す。
昨日のように夢中になりすぎてはいない姿にホッとしながら、逆にこちらをちらちら見ている姿に、頭を傾ける。
「久しぶりね。二人共。無理、してたんだって?」
美人の怒った顔は恐ろしい。
鬼といった理由がよく分かるほど、顔だけで恐怖心が生まれる。
さすがの翔も気づいてか、湊の後ろに隠れている。
湊はいろいろな先生から怒られ慣れているが、美幸の怒りには弱いらしく、足が震えている。
ジリジリと後ずさりをするが、それよりも美幸の歩みのほうが速い。
「翔くんはまず怪我が完全に治ったわけじゃないんだからね!妖気パフォーマンスは体でも表現する分負担が多いんだから、無理は厳禁!」
うるうると目が潤っているのが遠目でもわかるほどしゅんとしている。
いつもの湊ならこういう時逆ギレのように怒るが、相手が相手である。
次は自分の番なのだと心の準備で忙しい。
「湊も、君は翔のお兄ちゃんでありながら冷妖気の使いすぎはなに?前にもこんなことが合ったわよね。風邪引くって言ったら反省したって聞いたことあるのだけど」
美幸は最愛の弟がいるという点でこう言った叱りをよくしているし、弟がいる者同士として思うところはズバッと言う。
そこが湊にはささり、今にでも膝から崩れ落ちそうな表情である。
にしても、前回のが初めてではなかったのかと美春は少し困ったような表情を浮かべた。
「まったく、しっかりしなさいよ。練習するんでしょ」
「美幸さんやい、ちょっと精神休ませてやれ、2人はまだ子供だぞー」
目を細めながら面白いものを見るかのような表情のまま、そう美幸に言ってやった星夏は、軽く湊のところへ行き、肩を叩いてやった。
すると、やはり崩れ落ち、「だめだこりゃ」といいながら、両脇を掴み、訓練室の端っこへと連れていく。
そんな湊にいつもの翔ならついていくが、しゃがみ込んだまま下を向いていた。
美幸はそこまで叱ったつもりはない。
が、予想はしていたのか翔の元へ行って、事前に買っておいたリンゴジュースを翔目の前に置き、星夏の元へ行った。
そのリンゴジュースを取った翔は走って美幸に感謝を伝え、湊の隣に座り込んで飲み始める。
「子供って単純だ」
「おやおや、星夏だって好物の苺があると変な人にも付いていくじゃない」
「あっ、あれは高校の時で、今は!」
「へぇ」
「絶対納得してないな⁉︎」
この時、美春は思った。
強くてかっこいい人の好物は苺好きが多いのかと。
鏡花も苺が好きで、2人で休日買い物に行った時なんかはよくいちごのパフェやクレープを食べていたことを思い出す。
そして同時に心配になるのが、星夏と同じで純粋で騙されやすいのではないかと言う点である。
そのため、しっかり頭の中にメモをしておき、一級退治師の会話を聞きながら彼女らを色々を観察していく。
「星夏さんはBで美幸さんはF…」
「おい待てそれなんのアルファベットだ」
「安心してください。鏡花ちゃんはAです」
「安心もクソもあるか!!」
そういう美春はDである。
なにとは言わないが鏡花は少しサイズを気にしている所があるため、更衣中、美春はよく視線をよく感じている。
赤崎家の女性で大きな人はいない。
そういう家の特徴というわけではなくたまたまなため、気にすることではないが鏡花の胸への関心は高い。
もし彼女がここにいたら迷わず美幸の胸をまじまじと見ていただろう。
「大きくてもいい事なんてないわよ。戦う時邪魔なんだから」
「いいよなぁ!ボンキュボンは!!」
これだから恋人を作る気のない奴は!と星夏は思いながらも自身の胸を見る。
ある程度は膨らんでいる。
しかし相方はでかいため気にするなと言われても気にしてしまう。
「男がいる部屋でそんな話すんなよ」
「だって湊は興味なんてないじゃない。翔は性意識すらないし」
「そういう話をしてはいけないと教えたのは誰だよ…」
美幸は「はて」といいとぼけ、翔はため息をつく。
仲の良さそうな姿を見て今からでも鏡花が来ないかなと思う美春は静かに翔の方へ近寄り、ポツンと座る彼の隣に座る。
まだジュースを飲みながらうるうるとしている翔の背中をゆっくりと撫でる。
湊はどこかその光景に嬉しくなる。
「嫉妬するわね。あそこまで仲良くなるのに私達は何年もかかったっていうのに」
「何いってんだよ。あたしらのおかげで人に対する警戒心が和らいだんだろ」
「ええ。翔も成長しているわ」
美幸は思い出す。
とある上司と2人の時に言われたことを。
「けして、彼らを人を怖がるような生活をさせてはならない。人を好きにさせなければならない。その武器を持つ君だからこその命令だ」
その人は接点のない者だったが、優しい雰囲気と悲しそうな瞳に湊たちに同情してのことだとわかった美幸は「はい」と短く返事をしてその場を離れていた。
少なからず湊は人を怖がらず、用があれば話しかける程度には成長している。
そして翔もある程度の人ならば触れることを許す様になっている。
「さてと、私に見せてくれないかしら。星夏ほどにはできないけど、一般的な人からの意見をはっきり言ってあげるわ」




