送り道
いつもよりも遅い時間に訓練室を出る4人。
空はもう暗くなっており、星夏がいたからこそ教室は使わせて貰っていたが、本来であればとっくに下校時間は過ぎていた。
寮に住んでいる2人と、美春と星夏の2組に分かれてそれぞれ家に向かう。
女子1人に遅い時間帰らせるのは心配という事で星夏が送ってくれるのだそう。
「お前たちのパフォーマンス、いいじゃないか。1位を取れるかは別として」
「目指しているんですけどね、言い訳にはしたくありませんが、やはり2人って言うのがどうしてもキツくて」
「まぁ、5位ならギリ届くんじゃないか?」
「それも結構難易度高いですね」
こうして2人だけと言う状況が初めてな美春は、星夏がこんなに笑う人だと初めて知った。
ニコニコ笑う姿はどこか、紗奈に似ている事を感じ、話しやすい人だと再認識する。
1学年4クラスある学校、つまりは全クラス12ある中での3位と言うのはとても高い。
ましてや、美春たちはまだ1年生で、順位発表のある5位以内に入る事はほとんどない。
だからこそ必死に努力しようと魅せてみせると決めた。
「そうだ。一つ聞きたいんだが、あの2人を負担に思ってはないか?」
「え?」
立ち止まったと思えば、突然星夏がそう言い放った。
真剣な顔で、燃えるような夕方の太陽のような瞳は少し寂しそうな雰囲気を出していた。
どうして聞くのだ、そう言った方がいいのだろうが、実際に彼女の質問の意図は何となく察しがつく。
別に気にしていないと言えばいいが、思う事は少しある。
なんと返事をするべきなのか迷っている姿を星夏に見せてはいけないと思いつつも、返事に困った美春を見て、星夏はポンポンと頭を叩いた。
「素直に言っていいぜ。あたしはあの子らに君が言った事を言う気はないし、ただ、気になっただけさ」
今までどうやって生きて来たのだと思うほど、なにも知らなかった2人だ。
食べ物の食べ方から排泄まで。
8という年齢であり、体付きもしっかりして来たというのに何も知らない姿を見て、恥ずかしいという感情より、子供の全てを奪っていた研究施設の方に苛立っていた。
何から何まで教え込んだ2人を、数年間、まるで我が子のように思っている星夏だ。
美幸だって、彼らの事を自身の子供のように思っている。
そんな存在と仲良くしてくれている相手。
負担に思っているのなら、できる限り環境を整えようとそう思うのは自然な事である。
「大切な存在だと思っています。仲間として、守ってあげたいとも。負担に思っているかいないかで言ったら、少し思ってます。しかし、人間誰しも誰に対しても不満に思う事ってあるでしょう?それが少し大きいだけです」
爽やかな桃色の髪が風で揺れる。
結んでいるが肩甲骨まで伸びている髪は、強い風が吹くと月明かりに反射して銀色に見える。
美春が言った発言に対して、星夏は満足したかのようにまたニカっと笑った。
「そうか。君のような人が2人の友人であたしは嬉しいよ」
「あっ、これ絶対鏡花ちゃんも思ってます!」
「ああ。あの子にも聞いたさ。そしたら、逆に自分に対して負担に思っていないか心配していたよ。あの子達は恵まれたな」
どうして鏡花が自分が負担に思われていると思ったんだと疑問に思いつつも、あの刀によって変わっている元の性格がそういう事を気にするのだろうと何となく予想した。
星夏は2人が美春達と友人になったことに対して恵まれたと言っていたが、
「私は星夏さんに育てて貰ってる時点で恵まれてると思いますよ」
「そうだな。その通りだ」
彼女の笑顔は太陽を宿しているかのような瞳によく似合う明るい笑顔だ。
いつか、翔がそんな笑顔を受け入れられるようになって欲しいと美春は感じる。
勿体無いと感じてしまう。
「2人の笑顔をいつか見てみたいですね」
「あ、湊なら幸せそうな夢を見る時は笑ってるぞ。いつかお泊まり会したらいいんじゃないか?それこそ体育祭の打ち上げとかで」
「えっ」
本人不在の中スルッと知らなかった事を聞き、なぜか罪悪感が生まれる。
笑っている湊のことは気になり少し想像できないが、それはきっと翔に本来向いているが我慢している笑顔なのだろうと考える。
笑顔を我慢するのは正直に言ってきついし、星夏の言う負担もそのことについてが8割と言ったところだ。
美春は言った通り、他の人よりも付き合いにくいという点はあれど、仲良くしたくない、苦手だ、と思っていない。
ただ、そんな生きにくいトラウマからいつか開放されてほしいと願っている。
「お泊りの件、考えてみます。両親に相談してみます」
「ああ」
星夏の親心。
彼らのことをもっと知って欲しい。
支えてやって欲しい。
そして人間の優しさにたくさん触れてほしい。
どこか縛られているように見える湊と、幼い翔の成長のために。
遅れてしまい、申し訳がないです、、




