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君の妖に願いを  作者: 雨y
青一章 1学期
23/27

放課後練習その2

「湊に言うことなんだが、本番は太陽の下でここみたいに密閉されているわけじゃない。お前の使う氷が溶ける可能性だってある。退治中は溶けることなど気にしなくても良い事が多いが、今回は違うだろ」


夏が近く、中間服の季節だというのに冬服を着ている美春に湊は目を向ける。

二人は気づいていなかったが、練習室は寒い空間になっていた。

そんな状態では本番とは違う条件でのパフォーマンスになってしまううえに、何度も成功したとしても本番で成功する確率はあまり上がらない。

それに、寒い場所にいるのに汗を掻くのは風邪をひこうとしているのと変わらない。


「外で練習できるのは何回だ?」

「グラウンドは他の競技に取られててだめだな。1回ならあるかも」

「おいおい、妖気パフォーマンスなのにそんなしかないのかよ」

「あれ?星夏さんってこの学校は母校ですよね?」

「ああ。だが、1日で終わってたし、そこまで客が集まるようなものじゃなかったからな。ま、パフォーマンスはお前らよりも客引きのいい出来だったが」


まるで煽るように言う星夏に対し、美春も湊も少しムッとした表情を見せる。

しかし、星夏が言っていることは本当であり、その映像を実際に美春は見たことがあるため何も言えない。

翔も星夏の力をよく知っている。

ムスッとした顔に星夏はもっと煽るようにドヤッと表情を変える。

幸い、翔はアイスに夢中だが、二人は競争心に火がつくように目を会わせた。


「雪を散らかす所ありますよね?すぐに溶けるのいいと思ったですが、客席とは離れたところであればこけない程度に残して下からの光を感じさせたいのです」

「一面じゃなくて所々だよな?」

「はい。よくわかってるじゃないですか」


ゆっくり部屋の温度が上がっていくのに気付いたのは翔だけだった。

星夏の方を向いて、小さくお辞儀をした。

その姿を見た星夏は、こういうたまに見る翔の雰囲気によく研究所のことを思い出す。

上には報告する事ではないと勝手に判断し、美幸と共に見たある一枚の資料。

【No.__の__に___N___が関わ___いると____、こ_____者を______ために、No.0_の記__去を行う】

やや新しめの紙であったがくしゃくしゃにしてあり、誰かが爪で消したかのようにも見えるその資料。

かろうじて少し読める部分はあったが、ほんの少しで内容はよくわからないもの。

不確かなものなど報告しても意味がない。

しかし、2人を救い出した時と同じ見た目の翔の写真と共にあったため、それは翔のことだと考えられる。

記憶消去とでも言ったことか。

本当に、研究所で2人はどんな存在であったのか。

星夏はこういうことを何度も考えてしまっている。


「星夏?」

「あぁ、よく食べるなと思って」


ずっと翔の方を向いていたため、翔は自分に何か用があるのかと首を傾けた。

しかしまぁ、本当によく食べている。

今日の夜あたりにお腹でも壊さないかと心配になるほどである。

10個入り箱のアイスだが、何本目だと言いたくなるほど。

星夏はこう言う状況の時に止める女ではない。

そういう仕事はよく美幸にお願いしている。

美味いものは沢山食べてて損しない、何かあったらその時だという考えのもと、見守るだけする。


「そういえば星夏さん。美幸さんってどんな方なんですか?噂だと八方美人だけど彼氏がいない。その理由は心が鬼だからとかいう噂がありますが」

「美春もよくあたしの前で失礼な事を言うようになったな」

「あっ、すみません…気をつけます…」

「いや、いいぜ別に」


完全に外の温度と室内の温度が一緒になった時、休憩は終わりにして練習に取り掛かる気ではいたが、気になるものは気になる美春はついそんな質問をした。

噂通りの人だった場合が怖いなと美春は体を震わす。

流石に捻くれ者の湊がいるため、鬼がすぎる事はないとは思っているが、それでも一応聞いておいて損はしない。


「美幸は確かに鬼のように怖いかもな。だが、怒るって事は悪い事じゃない。美幸の怒るは心配と優しさしかない。あいつが自分のためだけの怒りを見せたところなんて、1回しかないぜ」

「1回を主張されると気になるんですが…」


だが、相手は1級退治師。

プライベートの事を聞かれるのは好ましくは思わない。

どんなに友人の知り合いであろうと、ズカズカと踏み込む気はない美春は、すぐにまた黙々と考えている湊の方へと目線を移した。

その行動に星夏はゆるく頬を上げた。

笑っているのがバレないように、後ろを向きながら。


「さて、休憩を終わって一から最後まで見せてみろ」

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