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君の妖に願いを  作者: 雨y
青一章 1学期
21/23

親友と

次の日の休日。

美春は紗奈の家へ向かった。

玄関のベルを鳴らすと、紗奈の母親が少し引きつった顔で家へ招いた。

部屋は綺麗で、彼女の父親も美春を見ると優しそうな顔でいらっしゃいと言って歓迎した。

部屋の前に着くと、ノックをするよりも先にドアが開き、痛々しい手が伸びて、美春の腕を引いた。


「いらっしゃい美春!実は今日いい話がありましてな〜!」

「ごめんっ、その前に…いい?」

「およ?私の報告よりも先にですかぁ?」

「うん。大事な話」


そう美春がいうと、ゆるい口を閉じて、真っ直ぐ美春をみた。

美春も真っ直ぐ彼女の目を見た。

いつも火傷の跡ばかりを見る美春とは違うと紗奈は驚きながらも、今回の話が終わってからはきっと美春は罪悪感から解放されるのだと察した。


「まずはごめん。そして、謝るのはこれで終わり。これからは、友人としてこれからもよろしくしたいの」

「やっと?」

「遅くなってごめん。昨日同じチームの人に相談に乗ってもらってね、自分がバカだってことに気づいて。逆に紗奈の事責めてたんじゃないかって」

「大当たり。私が暴走したせいなのに自分のせいだって何度も聞かされるこっちの身にもなってよね。お母さんなんて、貴女を見るたびに申し訳なさそうなんだもの」


やっぱり、いい人だ。

そうお互いに思った。

長年の付き合いなため、もうわかっている。

これからは、対等な立場として仲良くしていける事を。

そして、また親しい友人として本当の笑顔で過ごしていける事を。


「そして話は変わりましてー!私、早いうちに美春と同じく南半海高校に転校するから。それと彼氏出来た」

「……は?」

「いやぁ、父さんを説得するのに時間かかったよ〜。本当なら高校もそっちがよかったのに文系に行かされてさぁ」


美春の頭は止まった。

彼女の通う高校は南半海高校よりも偏差値が高く、有名だと言っても良い高校である。

しかし、そんな学校から転校してくるという事は、確定で彼女は退治師を目指すと言い張ったのと同じだ。

そんな事、どうやって脳内で処理しろと言うのだ。

そもそも彼女は妖気が使えなくなったわけではないが、暴走の経験がある。

妖気を使うにあたって、恐怖心があってもおかしくはない。


「なんで、」

「ん?彼氏のこと?」

「違う違う、学校だよ」

「私はね、美春とチームを組みたい。小学校からずーっと思ってたことなんだよ。努力家でまっすぐで誠実な美春に憧れてた。そのために火傷負った後も練習頑張ったんだから。どう、驚いた?」


それを聞いて美春は驚いた。

それはもう、涙を流すくらいに。

自分の知らないところで彼女は努力し、美春が退治師に憧れるように彼女も美春に憧れ、退治師を目指したいと思っている事に対して。

それと嬉しかったのだ。

美春は自分を責めてこう思ったわけではないが、自分を傷つけた相手に対して憧れを抱き続けられたその一途さに。


「驚いたよ」

「ふふん。だからさ、待っててよ。一年も待たせないからさ」

「うちのチーム、強い人しかいないけど」

「なっ、こっちは才能あふれる土系妖気使いなんですけどー!」

「聞いて驚け。こっちはあの星夏さんに鍛えてもらってるんだから」

「ななっ、一級退治師じゃない!くー!負けてらんないんだから!美春!私の家に来る時はトレーナーとして来てよ!」

「ふふ、任せて。その才能磨いてあげるんだから」


2人のいる部屋のドアの向こうにもまた2人いた。

その2人は幸せそうな声が響く部屋に耳を覚ませて、幸せそうに笑った。

今までの会話をも聞いて、どこか感じていた罪悪感も消えて、コーヒーでも飲もうかとその部屋を離れた。

しかしまぁ、父親の方は少し悔しそうにもしていた。


「そして彼氏って何よ」

「貴女のクラスメイトよ」

「嘘⁉︎誰なの!」

「かっちゃん」

「……本気で言ってる?彼、告白されても丁寧に断るから女に興味ないとか、実はゲイだとか言われてるけど。てか出会いは⁉︎」

「そっれっはぁ、SNS」


美春もだが、Cチームは全員SNSをライソ以外基本的にはしていない。

する必要あるか?という意見が多数。

時々動画をみたりアニメを見たりなどはしているが、それ以外は全くない。

思っていた出会いではなく、まぁ、最近の子らしい出会いではある。


「私の火傷の跡まで愛してくれてるのよん。私もこの跡愛おしいし」

「そう思ってくれてるの?」

「もちろんよ。性格悪いだろうけど、この跡のおかげでよくお見舞いに来てくれてたし」

「あはは…」


自分はどういう感情でそれを聞けば良いのだろうと複雑な気持ちになりながらも、意外な組み合わせに美春は驚く。

あの高吉か…と。

彼は確かに良い人ではあるが、翔はの事を思うと少々言動を大人しくしてほしいとも思っている相手である。

まぁ、いちいち気を遣われるのもあの2人は望んではいないが。

そのために翔も対策としていろんなものを持っているわけだし。


「でも、私と高吉くんは別のチームだよ」

「別に関係ないかなー。かっちゃんも美春と似て誠実だし、告白されても断るだろうし。そうそう、かっちゃんがたくさん出場するから私体育祭行くから。妖気パフォーマンス、美春がトレーナーとして支えるんでしょ?私も未来のチームメンバーとして見るから」


その言葉に美春は心を震わせた。

そして、彼女以上に大きな声ではないが、美春も大きく笑って「任せて」と言った。

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