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君の妖に願いを  作者: 雨y
青一章 1学期
10/23

仲良くなりたい

数Iの授業、教科書と先生の解説を見聞きしながら問題を解いていく。

スルスルと解く者、あくびをして眠そうにしている者、わからないというのが伝わってくるぐらい解説を見ては解いて引っかかるを繰り返す者が教室にいた。

美幸による教えで湊と翔は苦戦しながらも解ける方だ。


「次の時間は小テストやるので復習しておくように。それでは授業を終わります」

「起立」


学級委員である高吉の号令により、授業は終わった。

ザワザワと教室がうるさくなる中、湊達の元に赤崎と山谷が来る。

これはいつもの光景で、彼女らはせめて湊と仲良くなろうと休み時間中は彼らと一緒にいようとしている。


「すまない美春、ここを教えてくれないか?」

「うわ」

「うわって、失礼じゃないか」


赤崎のノートはシャーペンで書く黒よりも赤の方が多いノートで、ほとんど解説を書いていた。

そこまで解けているとのに教えてと言うのかと3人は思うほどに。

こう言う時、山谷が丁寧に教えると赤崎は感謝を伝えてやっと解けるようになる。

理系の授業後は大体こう言う風景が見える。

数字や、式が関わってくると頭が回らなくなるんだとか。

湊はこう言う日々を繰り返しているため、2人への警戒心はほとんどなくなっていた。

翔も湊が楽しそうにしているならそれでいいとたまに喋ったりもするぐらいには仲良くなっていた。


「これで小テスト合格できる!体育祭で勉強するヒマがない期末テストも早めに勉強しておきたい私としては勉強会を開いて欲しいのだが」


山谷とアイコンタクトを取る赤崎はよくこうやって4人での時間を増やすために放課後を使う。

彼女らは部活を入ってはいるが、休みの日は湊らの部屋に集まることになっている。


「私としても復習できていい点数取れるから開きたいな」

「湊が行くなら…」

「じゃあやるか」


そう言った会話をあれこれしているうちに古典の授業が始まる3分前になり、皆自分の席に座った。


放課後


「それじゃまずは買い物からだな」

「おいまたボクに晩飯作らせる気だな!」

「美味いのがいけない。2人の食費も浮くからいいだろ」

「確かに湊くんのご飯は美味しいです」

「美春まで乗り気なのかよ」


「と言うか晩飯の時間になるまで勉強するのか」と突っ込み、女子組は頷く。

湊は呆れたよう表情になり、ため息を付く。

女子2人は寮ではなく家族と共に家に住んでいるため、心配されないかとも思うが、山谷家では友人と仲良くするのは良いことだと許可を元々もらっており、赤崎の方も使用人に言っておけば問題ないとのこと。

湊のため息を見ながら翔はボーッと前を歩く女子組の後ろ姿を見る。

悪意のない笑顔をしているのはわかっていても、どうしても怖くなっている事を隠すかのように足元の影を見て、ぎゅっと目を閉じ、また開けるを繰り返していた。


「肉じゃがが食べたい気分です」

「おぉいいな。米と醤油ならまだあったよな?その他の食材を買いに行こうか」

「ノリノリすぎるだろお前ら」


赤崎家はデカい一家ではあるが、分家の者達は農業や鍛治師と言った職業に就く事がある。

時々本家に食料が送られてくることがあり、横流しとして湊らの部屋にいくつかある。

仕事については、本家の使用人として働く人もいる。

退治師になりたいという分家の者もいるし、赤崎家の血を引くのであれば剣の教室は平等に開いてはいるが、大体は挫折するほど赤崎家の授業は苦難である。

本家は逃げる事が出来ず、分家が本家を羨むより、本家が分家を羨ましいと思うことが多い。

噂としては、逃げさせないために武器に性格を変えられるのだとも言われている。


「肉じゃが、食べたい」

「翔が食べたいなら作るしかないな」

「流石のブラコンですね」

「あぁ。溺愛だな」

「兄弟じゃないんだが…」


一旦寮に戻り、翔は自室で留守番をし、3人で買い物に向かう。

離れてもいいのか?と言われた時は、「本当は嫌だが、何を買えばいいのか教えなきゃいけないだろ」と言ったことに2人は驚いた。

この2人が離れることがあるのかと。

2人にとっても1人の時間も大切で、四六時中一緒にいるわけでもない。

足りなくなった食材を湊は1人で買いに行くし、翔が好きな本屋にいる間は湊が日用品を買う、なんて事もある。

買い物中に発作が起こった事はないし、発作が起こった時はすぐに美幸達にわかるよう、麻酔入りのチョーカーをつけているため、何かあった時は美春と星夏が急いで来るようになっている。

発作といえば、赤崎達の前で起こった事があるが、翔が抱きついて撫でるだけですぐに治ったのを見た。

起こって一瞬の事だったが、その一瞬だけで2人は恐怖で立たなくなるほどに恐ろしいものだったと言う。

妖気を見たことのない2人だったが、強い妖気により白いモヤの妖気を初めて見る体験にもなった。


「ついでにりんごも欲しい。翔の1番の好物なんだ」

「エビグラタンだと思ってました」

「2番目だな」

「ではアップルパイを作ろう」

「お前はキッチンに立つな!」


カートを引きながら肉じゃがで使うであろう食材以外も入れていく。

時々赤崎がお菓子を持ってくるが、後でその分を鏡花に請求するからいいやという気持ちで無視する。

会計を済ませ、お菓子は赤崎自身が持ち、その他の必要なものは湊が持った。

美春は作ってもらうわけだから自分が持つと言ったが、女の子に荷物を持たせるのはいけない事なのだと星夏に言われた、いや教わったことを言い、断った。


「そこは女の子には持たせられないって言うところだぞ」

「別に紳士になりたいわけじゃない」

「星夏さんいい人ですよね」

「それでは私の分待つか?」

「それはお前のものだろ自分で待て」


ははっと笑い、寮へ向かう3人は本当に仲が良くなったのだと思えるほどに楽しそうだ。

湊にとって初めての友人で、頼れる仲間な2人は湊の扱い方も理解し、より仲を深めようとしている。

寮へ着くと、長い階段はめんどくさいのでエレベーターに乗る3人。

そこでも楽しそうに話すが、

突然エレベーターが止まる。


「なんだ⁉︎」

「すぐに連絡します」


急いで美春が寮を管理をしている先生に電話するが繋がらない。

いきなりのことで混乱しながらも湊は思い出していく。


翔が言った、星夏の優しい嘘を。

自分の事なのですがひとつ。

私今日誕生日です。おめでとう!

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