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回想2
ピエリス様は、ご自身の威光よりも人間の刹那の幸福を優先されるお方でした。
その在り方は、女神としては不器用で不完全だったのかもしれません。
それでも私はピエリス様のお考えに異を唱えることはできませんでした。
女神としては優しすぎる、ピエリス様のその在り方が好きだったからです。
時代が進み、信仰が減り、女神としての力と姿を保てなくなった時も、ピエリス様は笑って仰いました。
「人として余生を過ごすのも悪くないわね。これからはわたしのことはモニカと呼んでくれるかしら」
人の身になったピエリス様はよく体調を崩すようになりました。
それでも、かつてのように信仰を受ければ、その身は回復します。
奇跡の聖歌。
女神へ捧ぐ讃美歌が、この学院で受け継がれ歌われている限り、ピエリス様は健やかに過ごせるのです。
どうか学院が幸福に満ち溢れ、聖歌の調べが鳴りやむことがありませんように。
それが、従者の、私の願いです。