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第9章 第2話

~ 裕VS小武海戦 開始 ~


1 小武海と一緒にコートに入る。僕よりひと回り小さいが、それでも十分大きい。185㎝くらいあるように見える。真っ黒に日焼けした、精悍な面構え。全身が鍛えられていて筋肉質。パワー、スピードとも申し分ないのだろう。


 ネットを挟んで軽くストロークを行う。フォアバックともにシングルハンド。ショットのキレがいい。スイングスピードが速い。その分、ギリギリまでボールを引き付けられるから、ストレートかクロスか読みにくい。杏佳が言ってた「独特の間合い」とはそういうことなのだろう。

 とはいえ、僕も、打ち負けることなく、きちんとスピンかけて、あるいはスライスで深く返せている。師匠が言ってた、「相手二割減と自分二割増し」を考えると、いい勝負なんじゃないかな。小武海もラリーしながら、「こいつやるな」って考えてるかも知れないな。


 そして、やっぱりサーブがいい。スッと低いトスを上げ、取り立てて身体を反らすわけでもなく、真っすぐ立ったまま、シュッっとコンパクトに打ち抜いてくる。安定した、再現性の高いフォーム。確かに、これなら殆どフォルトしないだろう。だけどかなり速いフラットサーブ。逆取られたらエースになるな。スピンほどバウンドしないうえに、無回転でボールが重いから、壁を作ってブロックするようにリターンしないとうまく返らないだろう。ファーストをセイバーするのはかなり困難だ。


 さあ、試合始まるぞ。小武海のサーブからだ。

 初球はまず間違いなく、クロスへ、僕のバックにフラットを打ち込んでくるだろう。繋いで我慢比べか、それともしょっぱなからハッタリかますか?


 小武海がスッとトスを上げる。その瞬間、僕はバックの構えで、ススっとサービスラインに詰める。「パン!」とサーブがクロスに打ち出され、僕の構えたラケットに向かって来る。僕は、グっとグリップを握り、しっかりブロックしつつ、スピンをかけながらストレートに打ち出して、前に詰める。いいリターンだ。小武海は不意を突かれて一歩も動けない。ボールを見送るだけだ。

 が、「アウト!」の声が主審から発せられる。惜しい。ボール一個、サイドラインを割った。サーブに力があって、ちょっとだけ押されたんだろう。15ー0。


 アドコートに移動。さっきのリターン、ギャンブルなのか実力なのか、もう一回バックに打ってみたくなるよな。僕はトスに合わせて、バックの握りでまた前に詰める。が、「バンッ!」って速っ、速い! 本気で打ってきやがった。ラケットが弾かれ、リターンは大きくアウト。このサーブが入ってはセイバーは困難だ。一回戦は本気で打つ必要がなかったんだな。だけど、そうなるとフォルトも増えるから、セカンドは狙い目になるぞ。これで30-0。


 デュースコートから、今度はセンターにスピンサーブ。バックで前に詰めてた僕は逆を取られて、もうカットして返すだけ。三球目攻撃を喰らって、やっと追いつくもネットを越えず。40-0。


 アドコートから、今度は対角線にフラットサーブ。3ポイントリードの余裕もあって、全力で打球してきた。フォアでブロックするようにして何とか返すも、リターンは真ん中に。

 あっ! 小武海は前に詰めてた。ファーストボレーをオープンコートに流し込み、ようやく追いついた僕がバックで上げたロブを簡単にスマッシュで決めた。ゲーム小武海。1ー0。

 

 ******


 コートチェンジの時に、タオルで顔の汗を拭く。いやー、これは確かに強いな。1ポイントも取れなかった。技術に隙がない。何でもできて、全てが一流。しかも体幹が安定していてミスがない。こうなると、僕のサーブにプレッシャーがかかって来る。(一つでも落としたらヤバい)と、対戦相手は皆がそう思って、自滅していくのだろう。


 2ゲームめ。さあ、仕切り直しだ。まずは正攻法から。

 僕は、トスを後頭部にあげて、体を反らし、戻しながらボールの左上を思い切り擦り上げ、対角線にスピンサーブを放つ。小武海はコースが分からないから、打ち出されるまでは真ん中にいて、弾道を確かめてすぐフォアに寄るが、想定を上回るバウンドにジャンプしながらリターンを放つ。ハードヒットできず、力なく真ん中に返って来る。僕はそれをオープンコートに力強く押し込んだ。

 普通なら返ってこないけれど、小武海はすぐにバックに全力で戻り、なんとかロブを上げてくる。高いが短いロブだったので、一旦落としてから、オープンコートにスマッシュを叩き込んだ。


 が、なんと、小武海がそこにいた! フォアの厚い握りでストレートにカウンターを放ち、ボールはネットを越えて、綺麗にサイドライン際に着弾した。僕は啞然として見送るだけだ。

 なんという俊足。なんという反応速度! まあ読みが全部当たったラッキーショットではあるけれど、とにかく全て返って来ると思っていないとだめなんだな。

 0-15。勿体ない。今のはプラマイ2ポイントだ。


 アドコートに移動し、今度も正攻法で行く。トスを外側にあげて、スライスサーブを放つ。角度がついてライン際に着弾する、かなりいいサーブだった。が、小武海はトスをみてすぐバックに移動し、ボールに追いついて、ダブルハンドを伸ばしてブロック。ストレートにロブ気味に返してくる。

 いやー、これ返してくるのかよ。しかも嫌なところに‥‥‥。だけど落ち着け、相手はもうコートの遥か外だ。僕はボールに追いついてバックボレーでオープンコートに流し込む。まず返ってこないボレーだけど、さっきのこともあるから、ネット前に詰めて返球を待つ。が、さすがにこれは小武海も諦めた。

 あれ? ラケット叩いて拍手してる。こっち見てニヤっとしてる。「やるなあ。こいつ」って思ってるのかな。まだまだ余裕なんだな。15オール。とりあえずは初ポイント。


 デュースコートで、今度はスピンサーブをセンターへ。小武海は、トスでさっきのサーブを想起して思い切りフォアに寄っていたため、慌ててバックで飛びつくも浅いロブになり、僕はコース狙わず真正面に爆撃のようなスマッシュを放ち、ボールは小武海の頭をはるかに超えて、金網上部に着弾した。これで30-15。とにかく接点作っちゃだめだ。

 

 その後、お互い、一つずつポイントを取り合って40-30。僕のゲームポイントでアドコートへ。

 僕はまた正攻法でスライスサーブを打ち、前に詰めるも、わずかにサイドアウト。惜しい。セカンドはクロスにスピンだな。小武海はバックの高い球は返すだけって言ってたからな。

 そう考えつつ、僕が対角線にスピンサーブを放った瞬間、「バチッ!」って音がして、ボールは大きくサービスラインを越えて行った。ああ、ガット切れた。だいぶ使ってきたからなあ。ダブルフォルトで40オールか。


 僕は、主審に、「ガット切れたのでラケット替えます。サーブはアドコートから打ちます」と断って、ラケットバッグからもう一本のブイコアを取り出す。まだガットは新品同様だから、この試合は大丈夫だろう。

 

 僕は改めて、アドコートに立って、小武海に手を挙げて「悪い」ってやってから、ボールを2回ついた。

 てか、今、小武海もブレークポイントなんだな。嫌だな。最初のサービスゲーム落としたら、後が辛そうだ。‥‥‥なんてこと考えてても腕が縮こまるだけだから、全力で打球しよう。

 僕は、トスをまた体をの外側に挙げた。小武海がバックに走るのが見える。反らした身体を戻しながら肘をボールにぶつけにいく。あれだ。僕はボールの左上を擦らずに、フラットでセンターに打ち抜いた。7割の力でいい、とにかく入れるんだ。打球はハーフスピードでネットを越え、オーバーするかなと思ったら、あまり勢いがないので、サービスライン内に落ちて、センターに抜けていった。

 小武海は一瞬追おうとするも、距離がありすぎて、すぐに諦めた。

 ゲーム奈良。1ゲームオール。


 ああ、なんとかキープしたけど、息も絶え絶えって感じ。まあ仕方ない。相手は高校無双の男だ。師匠の教え通り、この展開でなんとかくっついて行こう。今のサーブでスライスはまたリセットされたし。


 ******

 

2 裕がなんとかサービスをキープして、これで1オール。際どかった。

 コートチェンジせずに、すぐに3ゲームめが始まる。裕はファーストではセイバーせず、安全に深く返してストローク戦を挑む。だけどラリーは小武海君がさすがに上手い。最後までコースを隠して、切れのいいショットを左右に散らしてくる。裕は次第に追い込まれて、ミスるか、ネットを取られて次々とポイントを失う。

 あっという間に40-0。強い。つけ入る隙がない。


 アドコートからのサーブ、小武海君はまたフラットサーブを対角線に打ってくる。返ってきても、どうせストローク戦で優位に立てるという考えなのか、一発でエースを取るようなサーブは打たない。裕は、フォアで小武海君のバックにリターンして後ろに下がる。フラットの低く長い弾道だったので、小武海君はバウンドを合わせて、安全に真ん中に深く返してきた。


 今だ。裕、あれ使えるわよ!


 裕と私の考えは一致し、裕は厚いバックの握りでボールを擦り上げ、トップスピンロブを小武海君のバック深くに打ち出す。今日初めて打つショット。

 小武海君は弾道見て、後ろに下がるけれど、裕のロブはもっとずっと強力だ。大きく高くバックに跳ねてくるボールに、スピンでは対処できず、小武海君は頭の上からスライスでカットすることを余儀なくされる。返球は真ん中に浅く返り、裕はネット際にドロップボレーを落とす。小武海君は必死に追うが届かず、コート上を「シャー!」ってスライドしながらラケット叩いて悔しがった。


 今のはいい展開だった。できるときは全部これで行こう。(ストロークが少しでも甘くなると、この展開に持っていく)って、小武海君に突きつけた。少しずつ心の余裕を奪いたい。

 

 次のデュースコートのサーブも対角線にフラット。裕は勝負を掛けてセイバーで前に出る。リターンが真ん中に行くが、カウンターになったのと、偶然ポケットに行ったことで、充分な態勢で打球出来ず、勢いのない返球を裕が簡単にボレーで決める。あれ? いつのまにか40ー30だ。チャンスか?


 アドコートから、小武海君は、今日初めてフラットサーブをセンターに打ち抜く。だけどオーバーしてフォルト。(ファーストを全力で打たないとセイバーされる)って分かったからだろうけど、そうするとフォルトが増えてくる。

 さあ、セカンドはねらい目よ。小武海君はスピンサーブを裕のフォアに入れてきた。裕は、サービスライン付近からスピンで小武海君のバックにハードヒットして前に詰める。だけど小武海君は予期してた感じで、既に片手バックを構えて待ってた。カウンターでストレートにパッシング。裕は飛びつくも、ボールはラケットの先を通過した。

 ああ、さすがだな。1ポイントのリードを使ってリスクを取って来る。

 ゲーム小武海。これで2-1。だけど、裕は、少しずつ自分のテニスができるようになってきた?


 やっぱりそうだ。4ゲームめは、割と楽にキープできた。

 さっきのゲームで、裕が同じトスからワイドにもセンターにも打てることが分かったので、小武海君はどちらかに寄れず、真ん中で構えざるを得なくなった。いかに反応速度に優れていると言っても、それでは追いつくので精一杯。逆襲することは困難だ。

 裕は、基本、正攻法でワイドにサーブを放ち、ボレーで勝負。時々エースをねらってセンターを打ち抜く、というセオリーでポイントを取った。

 甘くなったスピンサーブでリターンエースを一つ喰らったけれど、リターンミスも二つ取り、最後は40-15から、センターへのフラットサーブでエースを決めた。

 もう目で追うことも難しい、すさまじいサーブ。センターラインが「ビッ!」って白くなり、思わず観衆がどよめいた。小武海君がピクリともできない、閃光のような一撃。


 これで2ゲームオール。

 私、笑顔で澄香とハイタッチしちゃった。


 裕が、少しずつ小武海君のレベルに適応しつつある。





 読者の皆様。いつも本作をお読み頂いてありがとうございます。

 裕も覚醒の気配を見せ、火花を散らしつつありますね。


 昨日、現実世界(恋愛)連載中の日間で48位、週間で75位にランクインして、pvも突如跳ね上がって482もつきました。何日か前に「3000pvありがとう!」みたいなこと書いた覚えがありますが、すぐ5000も超えそうです。ランクインするからpvが集まるのか、pvが集まるからランクインするのか、そのあたりのカラクリはわたくしにはよく分かりませんので、ただ日々丁寧に校正してアップするだけでございます。


 その読者様への感謝の気持ちということもあるのですが、小武海戦は、息詰まる展開がずーっと続いて、書いている私はもちろん、読んでる方も「ふーっ」て疲れると思いますので、途中で書下ろしのオマケ編を一つ挟みたいと思っております。書いてて楽しかった「if」ものを、もう一本書いてみようと思います。まだ書いてないので、こうして告知することで、自分を追い込むという効果を狙っております。

 そうじゃないと、今お盆休で、早朝に筋トレ行って、お昼ご飯食べながらハイボール(濃いめ)を1リッターも飲んで昼寝するだけなので。生産的な活動に励みたいと思います。


 台風が来てるみたいです。買い物は今日中に済ませたほうがいいですね。


 それでは、また明日。


 小田島 匠


 







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