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第8章 第3話


 杏佳は僕をベッドに押し込んで、自分もスルっと隣に潜り込んで来た。


 (何だ? 一体何がおきるんだ?)とドキドキしていたら、杏佳が僕に抱き着いて、首筋にやさしくキスしながら、僕の耳元で、

「‥‥‥まだでよかった。そしたら、私が裕をスッキリさせてあげる。私がお手てでしてあげるね」って甘い可愛い声でささやいて、血流が集中した僕の身体の一部に、そっと、優しく、触れてきた‥‥‥。


「のわー。ひーっ。気持ちいい! 分かったから、ちょっと待ってくれ。暴発しそうだー!」

「あ、そんなに気持ちいいんだ。よかった」

「お前、気持ちはすごくありがたいんだけどな、やり方分かってるのか?」


 そしたら、杏佳は、

「今スマホで調べたわよ。エッチでくらくらしたわ。見よう見まねなんで、間違ってたら教えてね。ティッシュは予め持ってた方がよさそうね。あと、私の胸、触ってていいわよ」って言いながら、ボクサーパンツの中に小さな白い手をそっと差し込んできて、優しく包み込み、そして聖母様みたいに微笑んで、静かに上下にさすってくれた。


 僕は、「ううー」って言いながら、杏佳の柔らかな胸に手を回し、波のように絶え間なく押し寄せてくる快感に耐えていた。あ、いや、でも耐える必要ないのか、耽溺すればいいのか。

 しかし耽溺したら、当然長時間耐えきれるわけもなく、多分僕はほんの一分くらいで、「うっ、くっ!」っと声出して杏佳を抱き寄せて、そして小さな手の中に僕を何度も放出してしまった。


 杏佳はティッシュを持ったもう一方の手で優しく受け止めながら、

「うわー、すごーい、こんなに何度も出るんだね。‥‥‥ふふ、すごく可愛い」って言って、優しくさすりながら、また首筋にキスしてくれた。


 僕が完全に果てたあと、杏佳は綺麗に拭き取ってくれて、「これトイレに流していいんだよね」って言ってトイレに行き、手を洗って帰ってきて、僕の隣にもぐり込みながら、

「ねえ、私上手だった? スッキリした?」って聞くので、

「うん。上手だった。夢の中にフワフワ浮かんでるみたいだった。すっごくスッキリした」って答えたら、

「よかった。ホッとした。私が裕をかき乱しちゃったって、すごく心配してたの。それじゃしばらくこうして添い寝してるね」

「そりゃもちろん歓迎なんだが、きっとそのうち復活するぞ」

「そしたら、またしてあげるわよ。ふふふ‥‥‥」って言いながら、杏佳が横向いて僕の胸に顔を埋めてきた。柔らかな胸が当たって、ポインって気持ちいいな。


 それから30分くらい、ベッドで抱き合って「だってそうだろ?」「ちがうよー、やだー、何それ?」とか、いろいろ夢みたいな寝物語をしてたんだけど、そのうちまた僕が復活して元気になってしまったので、杏佳は「うん、いいよ」って言って、もう一度、小さな手でやさしく世話をしてくれた。


 そして、手を洗って、柱の陰から顔だけ出して、

「これでもう大丈夫ね。私もう行くね。これ以上こんなことしてると、私もどうにかなっちゃいそうだから、ごめんね」って、声を掛けてくれた。

 僕は、「杏佳、ありがとうな。よく寝られそうだ。杏佳にもしてあげたかったな」って答えたら、

「うん、ありがと。気持ちは嬉しいけど、そうなったら、きっと歯止め効かなくて最後までいっちゃいそうだから、やっぱり前日はだめよね。コーチが何やってんだ、って感じよね。じゃ、裕、また明日。7時30分にね、お休み」って言って、さっと顔が隠れて、ドアが開いて閉まる音がして、杏佳は帰って行った。


 こうして、決戦前夜は、とっても幸せな夜になった。

 僕は、さっきと全然違う、穏やかな気持ちで眠りに落ちて行った。


 ******


6 翌朝は7時30分に杏佳から電話が入って、すぐ僕の部屋に「裕、おはよう。よく眠れた?」って言いながら入ってきた。僕は、「うん。ぐっすり眠れた。長旅の疲れも残ってない。昨夜ゆうべはありがとな」って答えて、杏佳のおでこにおはようのキスをした。


 おお、今日の杏佳は真っ白なノースリーブのロングワンピだ。こ、これは可愛い、可憐、だけど胸目立つなあ。もちろん、「その白ワンピ、すっごく似合うぞ。清楚で可愛らしい。これで帽子かぶったら、『夏のお嬢さん』って感じだ。郁恵ちゃんだ」って褒めたら、「ふふ、ありがと。新調してよかったな。だけど、食事はすっごく気を付けないと跳ね飛ばしが怖いわよね」って言ってた。名物のカレーラーメン、どうすんだ?


 朝食は二階のレストランで、ビジホだから当然バイキングだ。

 おー、すごい豪華。和洋中全部揃ってる。サラダもデザートもばっちりだ。これは1500円の価値は十分にあるな。

「お! ホッキ飯があるぞ。ホッキの炊き込みご飯なんだ。いい出汁が出てそう。おお、ホッキカレーもある! これいいな。大盛で二つとも食べよう。あとはサラダとコーヒーでいいや。絶対コンプリート不可能だし」

「あはは、これから全力で動くのよ。食べ過ぎないこと」って釘を刺されたけど、結局、ホッキ飯もホッキカレーもお代わりしてしまった。だって、肉厚で甘くてプリプリしてて美味しいんだもん。

 これが苫小牧のホッキ貝なんだ。よく「名物に美味いものなし」って言うけど、これはなかなかだ、いや相当だ。また明日も食べよう。

 

「ゲフー。やっぱ食い過ぎた‥‥‥」「もう、しょうがないわね」ということで、少し食休みして、8時45分にホテルを出、車で近所のコンビニに寄り、おにぎりとバナナ、ドリンク類を購入して、会場の緑ヶ丘公園に向かう。歩いても行けるくらいの距離なので、9時過ぎには到着した。

 もう、ホテルでウェアに着替えてあったから、クラブハウスに寄る必要はない。今日はもちろん米山さんに頂いた昭和ウェアだ。ラケットもシューズもリストバンドも全部ヨネックス。昭和ヨネックス男。


 会場で受付を済ますと、トーナメント表と進行予定表をくれた。

 僕はやはり9時45分開始、1番コートの第1試合だ。小武海も第1試合だけど、16番コートだから、全然離れてるんだな。16番は受付の前だからメインコートの扱いで、僕みたいなノーシードは1番から順次入れていくんだろう。

 

 9時30分に集合がかかり、男女のシングルス選手がクラブハウス前に並んで、競技委員長から簡単な訓示があった。「お天気もよくて、絶好のテニス日和。普段の練習の成果を存分に発揮して下さい」っていう程度だった。開会式はすでに31日に済んでいるので、こんなアッサリしてるのかな。

 

 解散後、さあ、一番コートで試合開始だ。

 日傘を差した杏佳と一緒に移動すると、相手の選手がもう来ていた。新潟銘訓高校の選手。あんまり大きくない。170㎝ちょいくらいか。真司と同じ、テクニシャンだろうか。

「奈良です。宜しくお願い致します」「こちらこそ、宜しくお願いします。うわー、すごい背高いんですねー」とか言い合いながら握手を交わし、試合球を持って一緒にコートに入った。


 ******


7 さあ、裕の第1試合が始まるぞ。相手は中肉中背の選手で、アップを見る限り、ストローク中心に組み立てるようだ。かと言ってトップスピナーでもなく、オーソドックス。サーブは特に強力ではない。オールラウンダーなのかな。パワーとスピードで勝負する裕は、くみしやすい相手だろうな。


 って、思って見てたら、誰かが観覧席に上ってきて、日傘を覗き込んで、

「あれー? 杏佳さんじゃないですか。インハイ見に来てたんですねー」って、穏やかで耳に心地よい声を掛けてきた。背の高い女子選手だ。高校生では珍しいノースリーブの白いワンピースのウェアで、水色のキャップからポニテを垂らしている。

 一瞬誰かと思ったけど、

「ああ、澄香か。久しぶりね。そうよね、あんたもインハイ出てたはずよね」って、すぐに記憶が蘇った。


 山本澄香やまもとすみかは、埼玉県代表で、所沢麗明高校のエース。

 去年のインハイの16で当たって、私はこの子に3-8で敗れた。

 中学の頃から、関東大会なんかで何度も対戦してきたけど、一度も負けたことなかったし、負ける気もしなかった。だけど、指導者が良かったのかな、高一の冬に、女子ではすごく珍しいんだけど、長身を活かしたサーブ&ボレーに特化して、そこから手が付けられなくなった。

 女子は、基本ストローカーばっかりだから、ボレーヤーと対戦することがない。何とかしなきゃって、対処方法を考えてるうちに試合が終わってしまった。

 

 だって、コートから追い出されてボールに触れないんだから、もうどうしようもないでしょ。

 裕と対戦した真司君が感じたように、私も澄香と試合して、もう私もこのあたりが限界なんだって、よく理解できた。きっと、この先競技続けても、この子との差は開くばかりだろうって。


 それで私、選手は諦めたの。この子に引導渡されたの。

 私は第8シードだったけど、それを守れなかった。澄香は、ベスト8で第1シードの選手に果敢に挑んで、だけど激戦の末7-9で敗れた。どっちが勝ってもおかしくないゲームだった。悔しいけどかっこよかった。輝いてた。

 相手の選手は、そのあと、準決勝と決勝とも1ゲームしか落とさなかったから、事実上の決勝戦だったのね。


 しかも、この娘、性格が穏やかで優しいうえに、長身でスタイルよくて、しかもすっごい美人なのよ。ほんと憎たらしいな。何頭身あるのかしら、細くて長い手足と、小さな顔。なんでか知らないけど、胸だけやたらでっかいし、一体どうなってんの。天は何物を与えてんのよ?

 顔立ちは私とタイプが全然違って、二重だけど切れ長のすっきりした眼で、ええとなんていうのかな、化粧品のポスターのイラストみたいな感じ? あれなんだっけ、カネボウ、それともノエビアだったっけ? 肌は小麦色に日焼けしてるけど、そんなに黒くない。秋になって色抜けたら絶対色白よね。

 

「あんた、また背が伸びたんじゃない。今、何センチあるの?」

「今、174㎝です。まだ伸びてるから、どうだろ、177とか8になるのかな。女子的には微妙なんですけどねー」

「へー、まあ、スケールはあった方がいいわよね。あんたみたいなサーブ&ボレーの選手滅多にいないし、今年は優勝できるんじゃないの」

「どうだろうなー。8ゲームマッチは何があるか分からないですからね。苦手なタイプの相手に当たって、対処する前に終わっちゃったりしますから。‥‥‥あれ、でも何で杏佳さんここにいるんですか。W実業の選手いないのに」


「うん、今私がコーチしてる選手の応援に来てるんだ」

「あ、この試合? どっち?」

「手前、背の高い方」

「うわー、すっごい背が高い。なに、彼、何㎝あるんですか?」

「197㎝。まだ伸びてるって言うから、そのうち2mくらいになるのかな」


「197もあるんだ‥‥‥って、あれ? WOW! すっごいイケメン。なんですかこれ? 長めの黒髪に白のヘアバンドがいい。なんかクラシックなハンサム。あのパツパツのウェアと相まって、なんか『貴公子』って感じ? いまや死語ですけどね」

「ふふふ、そうでしょ? だけど、テニスもすごいのよ、あと性格もいいの。優しくて面白くて誠実なの」


「えー、私、背の高い人好きー。私より背の高い人限られるんですよ。もしかしてっていうか、絶対そうだと思いますけど、杏佳さんの彼氏さんなんですか?」

「そうよ。4月からずっと指導してて、今日はその集大成だしね、ここまでついてきたのよ」

「そうなんだ。それじゃホテルも一緒なんですか?」

「‥‥‥あんたも優しい顔してズバズバ聞くわね。そのとおりよ。部屋は別々だけどね」

「ふーん、そう。そうなんだ。ちぇ、仕方ないな。じゃ、しばらくここで見てていいですか?」


「いいけど‥‥‥裕は私のだからね。変な事考えちゃダメよ」

「ふふふ、どうしようかな」

「ちょっと、あんた!」

「冗談ですって(笑)。もう、意地になっちゃって、分かりやすいな」


 ああ、この子、いい子でテニスもすごいんだけど、背高くて色白で髪も栗毛だし、まるで細い尚さんだ。ピンポイントで裕にどストライクだ。


 いやいや、こんな娘、絶対裕に見せらんないでしょ。気をつけなきゃ。





 読者の皆様。いつも本作をお読み頂いてありがとうございます。

 今回から、本作はR15指定になりました。まあ、そりゃそうですよね。

 わたくしも、「ここまでずっと読んできて、突然読めなくなった人がいたら悪いな」とも思ったのですが、中学生以下の読者も極めて限られるでしょうし、内容が内容なので仕方ないな、と判断致しました。 純愛の小説ですので、いかがわしくはないんですけどね。


 それから、昨日でpvが3000を、ユニークも1000を超えました。沢山の方に読んで頂いて、すごく嬉しいです。ありがとうございました。

 pvを解析すると、大体50人くらいの固定読者の方が読んで下さっており、連載当初からちょっとずつ増えている状況です。「ああ、毎日コツコツ丁寧に校正してよかった」と実感しております。もちろん流行作家の方とは比べるべくもなく、タイトルに「3000pv感謝!」とか恥ずかしくて入れられませんが、読者の皆様には大変感謝しております。


 それではまた明日、お会いしましょう。


 小田島 匠

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