第6章 オマケ 後編
~ 府中市テニス大会ミックスダブルスAクラス決勝 スコア7-3 40オール マッチポイント ~
さあ、全力でスライスサーブだ。このポイントで決めよう。
僕はトスを外側に上げ、思い切りボールの左上を擦りながら打ち抜いた。
今回は内腿注視は封印。いいサーブが行ったぞ。だけどトスでバレてるので、相手男性は瞬時にバックに移動し、僕はストレートをケアしてエンドライン上を右手に走る。
リターナーはストレートに打たず、クロスに高い球を打ってきた。確かにこれは僕らの泣き所。高さのない杏佳の背後は弱点だ。
ああ、でも届くかな、ギリギリだな。杏佳は、ネット真ん中まで飛び出してきて、だけと球が上に来たから二歩くらい後ろに下がりつつ、大きく跳ねた。
おお、いい! 白い脚が大きく開かれながら宙を舞い、スコートがめくれあがってパンツ全開! これは久しぶりに見た、テニスの妖精。まさにバタフライ!
杏佳、決めろ!
杏佳は、がら空きの逆クロスにスマッシュを放った。不十分な態勢だったのであまりスピードはなく、相手ペアが必死に追いかけたけど、ボールはスローモーションのように、ゆっくりとその間を抜けていった。ナイスコントロール。お見事。
ゲームセット&マッチバイ 奈良、吉崎ペア。スコア8-3。
今年度の府中市ミックスダブルス王者は、僕たちだ。おめでとう、初タイトル!
僕は「やったー!」って、杏佳に駆け寄ってハイタッチ。そして汗びっしょりだったけど、しっかりと抱き合って、頭を撫でてあげた。
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5 「お待たせー」と言いながら、杏佳が女子ロッカーから出てきた。
濃いブルーデニムのホットパンツにアンクルストラップの白いヒールサンダル。上は、タイトで丈の短い白Tシャツ。形の良い豊かな胸が盛り上がって、綺麗な縦長のおへそが見えてる。栗色の髪はポニテのまま。あと、濃いめのピンクのペティキュアがいいね。色っぽい。
「体育館と併設のテニスコートだと、シャワーが使えていいわね」
「ホント、ホント。汗びしゃびしゃで帰るの嫌だもんな」
「それじゃ、どこかのファミレスで打ち上げしようか。いこ!」
一階からエレベーターで地下駐車場に降りたところで、杏佳が、
「ねえ、また抱っこしてよ、抱っこー。顔が遠いのよー」って言ってきた。僕は、
「おやすい御用。任せろ。今日はボールのカゴ持ってないから、忘れる心配もないしな」って言いながら、杏佳の背中と膝下に手を回し、ヒョイと持ち上げた。
筋トレ始めたせいもあるけど、いやー、軽いな。40㎏ないかもしれない。
あれ? ちょっとメイクしてる? 漆黒の細い眉を綺麗に引いて、小ぶりなピンクの唇もルージュでツヤっと光ってる。ちょっと日焼けした白い脚も、シャワー浴びて何かスプレーしたのかな、さらさらすべすべになってて、腕に心地いい。
杏佳は、僕を見上げて、顔を綻ばせ、「裕、初タイトルなんだね。おめでとう」って言ってきた。
「ありがとう。今日は杏佳の活躍に助けられた。市民戦のミックスが初タイトルなんて、なかなかに渋い感じだな」
「ふふ、私、裕の初めて、頂いちゃった」
「なんか、ヤラしい言い回しだなー」
「だって本当のことじゃないの」
「はは、まあそうだな。初タイトルを杏佳と一緒に獲れてよかったよ。楽しかった。また出たいな」
「そうね。私もすごく楽しかった。ミックスって色々独特だけど楽しいわよね。来年もタイトル防衛しよう」
「うん。来年も、その先も、ずっと杏佳と一緒にいたいな」
「うん。私もそうよ。ずっと裕と一緒にいたい。二人で努力して上手くやっていこうね。たまに喧嘩とかするかもだけど」
「そうだな。俺も頑張るよ」
そしたら、杏佳が、「‥‥‥ねえ、先週お預けになってた、ご褒美のことなんだけど」って言いながら、僕の眼を覗き込んできた。すごく近い。杏佳の大きな黒い瞳に、僕の眼が映りこんでいる。
「ああ、『精神的な活動』だったっけ?」
「そう、それ。今日、優勝できたから、ご褒美あげるね」って言って、でも、杏佳は眼を逸らせて一呼吸おいてから、僕に向き直り、
「‥‥‥私の、初めてよ。どうぞ。召し上がれ」って言いながら、花のように微笑み、そして、そっと静かに、長く黒い睫毛を伏せた。
ああ、頂いていいんだな。それじゃ遠慮なく。
僕も、杏佳の綺麗なピンクの唇にそっと顔を近づける。
静かに唇が触れた。杏佳が一瞬ピクってなる。杏佳の唇はとても柔らかい、なんかいい匂いがする。
そしたら、杏佳が僕の顔を両手でそっと挟んで、強く口づけてきた。僕もそれに応え、二人は、とても長く、深く、激しい口づけを交わすことになった。強く抱き合いながら、何度も何度も口づけを交わし、そして、僕たちはおでこを合わせて見つめ合って、細く息を吐いた。
杏佳は、僕の眼を見つめながら、
「ずいぶん大胆なファーストキスになっちゃった。‥‥‥裕も初めてなんだよね」
「えー、どうだろ?」
「な、何ですってー!」
「はは、冗談冗談。初めてが杏佳でホントによかったよ」
「やめてよー、そういうの。今度そんなこと言ったら許さないわよ!」って、杏佳が綺麗に引いた柳眉を逆立てて睨んできた。まあ、なんて可愛いんでしょう。
さて、ちょっと名残惜しいけど、打ち上げ行くか、ということで車に乗り込んだら、杏佳がなかなか車を出さないので、どうしたのかと思ったら、腿に両手を挟んでモジモジしながら、横目で僕を見上げ、
「ねえ‥‥‥、さっきのね、おかわり頂戴‥‥‥。とっても素敵だったの。表に出たらもう今日はできないから」って白い頬を紅に染めて、恥ずかしそうに言ってきた。
「お前も食いしん坊だなー。はは、『キス・ミー・モア』か。積極的でいいな」って言いながら、僕は杏佳の顔に手を添えて、そっと顔を近づけ、再び、優しく唇を重ねた。
お、しかし、さっきと違って両手が自由だぞ。これは、やはり、思い切ってあれか? でも怒るかな? 僕は、キスしながら、こそっと左手を杏佳の右胸に回し、ためらいがちに、おずおずと、触れてみた。
「ちょっ! あんた、何てことすんのよ!」 うわー、怒ったー。
「ああ、ごめーん。嫌だった? やっぱりそうだよな」って即座に謝ったら、杏佳は、
「‥‥‥ううん、まさか、嫌なわけないでしょ? ただ、びっくりしただけ。急に触ってくるんだもん。‥‥‥こういうの、まだ慣れてないから」って、瞳を伏せてつぶやいた後、僕に向き直って、
「でも、裕なら、私、いいよ。ご褒美のおかわりあげる。好きにしていいよ。胸だけじゃなくて、私の心の奥まで触れてきて‥‥‥」って言いながら、顔を近づけ、僕の左手を持って、そっと右胸に乗せてくれた。
僕は、また杏佳と深い口づけを交わしながら、杏佳の素敵な胸を堪能させて貰った。杏佳が、思わず、細い吐息を漏らしながら、「あっ!」「んんっ!」「だめ‥‥‥」って可愛い声をあげる。
杏佳の胸は、手の平に収まらないくらい大きくて、ツンって尖ってて高さがあって形がよくて、そしてとても柔らかかった。甘いお菓子みたいな胸だった。ポヨン? プルン? ああ、いつまでも触っていたい。
しかし、そういうわけにもいかず、しばらくして杏佳が顔を離し、鼻にかかった色っぽい声色で、「はい、今日はもうこのくらいね。なんか、思ってたよりずっと大胆になっちゃった。ずっとこうしてたいけど、またいくらも機会あるよ」って、僕に抱き着いて耳元でささやいてきた。
「うん。そうだな。杏佳、ありがとう。とっても甘美な体験だった。いい思い出になった‥‥‥が!」
「が?」
「例によって血流が局所に集中していてな、もはやずきずきと痛いくらいなんだ。どうすんだよ、これ」
「し、知らないわよ! 自分で何とかしなさいよ」
「またそれか。だけど、ホントにあとで何とかするぞ。旺盛な想像力の翼が羽ばたくぞ。いいのか?」
「‥‥‥い、いいわよ。あんたも男の子だからね。許してあげる。その代わり、私のことだけ考えるのよ。よその女なんてもってのほかよ」
「お許しが出ましたー! では、是非そうさせて頂きます!」
そしたら、杏佳がおでこを僕の胸にくっつけて、小さな、消え入りそうな声で、
「でもね、この先は、もうちょっと待ってね。私も裕とそうなりたいけど、やっぱりまだ怖いから。こんなに急に、深く、誰かを好きになったの初めてだから怖いの。だから、そういう勢いだけじゃなくて、ちゃんと、穏やかで、安定して、お互いが理解して納得してから、裕としたいのね。だから、必ず、私を裕にあげるけど、もうちょっとだけ我慢してね‥‥‥」ってささやいてくれた。
「もちろん、待つよ。急ぐ必要なんてない。お前が、『今がそうだ』って思えるまで待つ。二人にとって大事なことだもんな」
「うん。ありがとう。ごめんね。‥‥‥さ! じゃ、いこ! 今日は二人の初タイトルとファーストキスの記念日だ!」
「イエー! レッツゴー! すき家でいいぜー。腹減った、特盛で食べよう!」
「‥‥‥私は並盛とプリンでいいわよ。ふふ」
読者の皆様、いつも本作をお読み頂いてありがとうございます。固定の読者様も、どうやら40名くらいになったようで、pvも100を超えて安定しております。本当に毎日、「ありがてー」って感謝しております!
本作も半分を超え、裕がインハイを決め、杏佳との仲も順調のようです。今回、R指定入れなかったんですけど、大丈夫でしょうかね? 通報はやめて下さいね。アカウント削除されると皆様に二度とお会いできませんから。
さて次回からは、インハイ本番に向けて、また練習強度を高めて特訓に入ります。
毎日頑張ってアップしていきますので、また宜しくお願いします。
2024.8.4
小田島 匠




