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第6章 オマケ 昭和テニスマン、妖精と初タイトル獲得す! そのあとのご褒美は何?

 

第6章 オマケ(前編) ご褒美おかわり 7月6日(土)


1 府中市テニス大会ミックスダブルスAクラス決勝。

 

 さあ、マッチポイントだ。40オール。

 ミックスの場合、40オールはサーバーと同じ性別のサイドで行うルールだから、男性の側のアドコートで、続けてサーブを打つことになる。


 前衛の杏佳が、前かがみになってラケット構えながら、左手をお尻のとこに回してサインを送って来る。二本指のあと、引っ込めて、改めて一本指を立てた。

(スライスサーブを打て、そして私はポーチに出る)ということだ。最後までアグレッシブだな。


 どうせ見えないけど、僕は、頷いて、ボールを二回つき、スっとトスを上げた。


2 インハイ予選で傷めた右足首は、もう翌日にはかなり回復していた。

 三日くらい運動を控えていたら、痛みも腫れも殆ど収まったので、僕は、吉崎院長の言いつけを守らず、早朝に壁に行って、軽くストロークとサーブをやっておいた。なにしろ次の試合が土曜日なので、なるべく感覚は維持しておきたい。


 木曜日の部活から練習に復帰し、金曜日に杏佳と平和の森で練習して、ほぼコンディションは元に戻った感じだった。杏佳も、「これなら大丈夫そう。明日頑張ろうね」って言ってくれた。


 試合当日は、朝9時に平和の森公園テニスコートに参加16ペアが集合。いつも練習しているコートでよかった。二面あるわけだから、決勝までやっても午後には十分終わるだろう。


 今日の杏佳は、可愛いエレッセのピンクのポロシャツにプリーツの入ったホワイトのスコート。ソックスもシューズもアンスコも白。アイボリーのキャップの穴から栗毛を出して、シャツに合わせてピンクのリボンで結んでる。いいね、競技仕様のストロングスタイル。もちろん、リストバンドは僕とお揃い。白のヨネックス。


3 いざ試合が始まってみると、さっきの40オールのサーブもそうだけど、ミックスには男子ダブルスと違う独特のルールやマナー、そしてセオリーがあった。


 なんとも扱いが難しかったのが、「女性にはハードヒットしちゃダメ」、「女性ばかり狙い撃ちしちゃダメ」という暗黙のルールで、このジェンダー平等の世の中で、なんでそんなものが必要なのかとも思うけれど、まあ、言いたいことは分からないでもない。

 確かに僕が女性相手に、ドッカンドッカンとフラットサーブを打ちこんだら返ってこないだろうし、杏佳と二人で女性にだけバカスカとボール集めたらやりようがないだろう。泣いちゃったりして。

 なので、杏佳と相談して、僕は女性にはフラットサーブを封印して、スピンサーブだけで戦っていくことにした。スピンなら女性でも追いつけるからね。あと、「危ないから、女性の正面向かってスマッシュ打つのもやめるわ」「うん、そうね」ということにした。


 それから、試合のセオリーも男子ダブルスと全然違った。一番大きな違いは、並行陣、すなわち4人ともネットに詰めてのボレー戦が殆どない事だ。男性がサーブを打つときは、女性が前衛に入るので、そのままサーブ&ボレーすれば並行陣になることはあるが、そのパターンくらいしかない。

 逆に女性がサーブのときは、まず前に出てくることはないので、前衛と後衛が分かれた、綺麗な雁行陣で試合が進む。その場合には、女性サーバーのストローク力が問われ、チャンスボールを前衛男性が決める、という得点パターンになる。


 とまあ、いろいろと面食らうところもあったけれど、さすがに前年東京女王と現役インハイ選手のペアは強かった。

 特に僕のサーブのときは、デュースコートで女性(たいていこっちに入る)のフォア側に大きくスピンサーブを打つと、フラットより遅いから、追いつきはするんだけど、もうコートの遥か外から苦し気な態勢でリターンすることになり、ペアの男性が一人でオールコートを守らざるを得ない。そこに杏佳がポーチに出たり、ネット際にドロップボレーしたりして、もうやりたい放題。


 アドコートでは、シングルと違って、コート左端からサーブすることになるので、もともと強力だったスライスサーブにブーストがかかり、コート内で弾んだ後、そのまま横の金網に着弾したりなんかして、相手男性も「こんなのどうすりゃいいのさ?」って感じだった。なんとか返ってきても、ガラガラのコートは女性一人で守っているから、またまた前衛の杏佳がやりたい放題だった。


 逆に杏佳のサーブの時は、雁行陣のままストロークで打ち合わざるを得ないが、何しろ杏佳はストロークの鬼なので、相手が男性でも全く引けを取らず、バンバン打ち合って、そのうち浮いて来たところを僕がポーチで決めるってパターンで得点を重ねた。

 杏佳は、返球をわざと少し真ん中に集めて前衛がジリジリ出てくるようになったところで不意にサイドを抜いたりして、頭を使った駆け引きも、さすがと思わせるものがあった。


4 一、二回戦は、8-2と8-3で順当に突破し、次は準決勝というところでお昼。今日は暑いから外でお弁当じゃなくて、センターのレストランで、「あー、涼しいー。極楽極楽」って言い合いながら、美味しいごまダレ冷やし中華を食べつつ作戦会議。


「ここまでのところは順当ね」

「うん。いい感じで来てる」

「だけど、午後は相手も強くなってくるから油断できないわよね。とにかく、私たちは裕のサーブと私のポーチが生命線だから、サーブのときのサインを決めとこう。私が指でサイン出すわよ。1、2、3の順で、フラット、スライス、スピンね、4だったら『任せる』のサイン。その後いったん引っ込めて、1を出したら思い切ってポーチに出るから、裕はネット出ないで、反対コーナーに走ってカバーしてね。ストレート抜かれてもいいように」

「おお、それいいな。それならセカンドサーブでも思い切ってポーチ出られるもんな。それで行こう」


 この作戦はとても上手くいき、準決勝では、杏佳はぴょんぴょん飛び回って、どんどんポーチを決めてくれた。いや、ボレーも上手いねー。時々、動き出しが早すぎて、ストレート抜かれたりしたけど、僕がカバーに入って何とか繋ぐことができた。


5 準決勝は8-3で通過し、いよいよ決勝戦。

 相手ペアはどうも男性がテニスコーチらしい。女性はその教え子か? 相当に強いペアだったが、いかんせん、女性の力が違い過ぎた。さすがに杏佳では相手が悪かった。だけど、ほら、例の暗黙のルールがあるから、僕と杏佳は相手女性には優しく繋いであげて、でもしつこくしつこく繋いで、辛抱たまらず浮いて来たところを、すかさず「トアーッ!」と男性の足元に打ち込むという、やや邪道とも言える戦術でリードを広げていった。でもマナー違反してないもん。いいんだもん。


 そしてゲームカウント7-3となり、僕のサーブで40オールのマッチポイント。冒頭のシーンだ。

 だけど、これを落とすと7-4で、あと3ゲーム僕のサーブが回ってこないので、ここできっちり決めておきたい。アドコートで杏佳のサインは、2と1、スライスサーブ要求、ポーチに出るそうだ。自分で優勝決める気だな。


 しかし、おお! 今まで気付かなかった。お尻に手を回して、しかも前傾してるもんだから、スコートの中が丸見えじゃないですかーっ!

 今日は朝から試合やってるので、杏佳の白い肌も少し日に焼けて、スコートの境目の色が変わっている。けど、中は白い、すごく白い! アンスコの付け根の内腿なんてもう真っ白。しかもむっちりしてる。こ、これはベリービューチフル! たまらん。

 てなことを考えながら僕はトスを外側にあげ、これで決めるぜ! と思いながら思い切りスライスサーブを放つその瞬間に、またむっちり内腿をチラと見てしまった。


 その一瞬後、「ベチっ!」と鈍い音がして、あ、こ、これは、八街やちまた、じゃなかった、やっちまった‥‥‥。


 杏佳は、ラケットを落とし、右手でネットを掴み、左手をお尻に当てて、仰け反ってプルプルしている。ああ、神様、わたくしは一体どうしたらいいんでしょうか? 渾身のサーブを杏佳のお尻に打ち込んでしまったぞ。


 もちろん、僕はすぐにネットに駆け付け、

「杏佳! 大丈夫か?」って声掛けたんだけど、杏佳は何も言わず、口を真一文字にして、可愛いえくぼ出して、しかし顔は決して笑わず、ギギギって、高山祭りのからくり人形みたいに、こちらに顔を向けてきた。こ、怖い‥‥‥。


「ああ、すまん! ごめん!」

「‥‥‥ま、まあいいわよ。あんたもわざと狙ったんじゃないしね。怒ったりしないわよ‥‥‥だけど、痛い、痛いのよ‥‥‥」って杏佳が声を絞り出す。


「ほんとごめんな。サーブ打つときに、お前の真っ白い内腿がちらっと目に入って、思わず手元が狂ったんだ」

「な、何ですってー? じゃ、あんた狙って打ったんじゃないの!」

「え、そうなのか。‥‥‥まあ、そういうことになるのか。あは、あははは」

「あ、あんたねー(怒)」 わー、怒った。


「えー、ごめん。すまん。痛いのどこだ、ここか?」

「な、お尻触ってんじゃないわよ! バカ、エッチ、スケベ!」

「あ、そうか、そうだよな。ごめん。すまん」

 

 相手ペアも、顔見合わせてクスクス笑ってる。


 てなハプニングもあったが仕切り直し、杏佳のサインは、え? また2と1?

(同じサーブを打て、私が決めるわ)だって? だけどセカンドサーブだぜ。フォルトしたら接戦になるぞ。しかも今お尻に当てたばっかりだけど、それでも勇気出してポーチに出る? って思ったけど、そうか、相手ペアも今の見たらスライス続けると思わないよな。


 いいぞ。杏佳、お前、見上げた女っぷりだ。


 それに応えよう。全力でスライス打つぞ。





 みなさま。いつも本作をお読み頂き、大変ありがとうございます。

 オマケのミックス編、いいところで切ってしまい、誠に申し訳ございません。

 オマケといいつつ8000字もあるので、どこかで分割しないと、「読者様が離脱しちゃったらどうしよう‥‥‥」という判断でございます。でもまあ、ほら、タイトルで結果はバレてるので、ドキドキもしないでしょ?

 明日は後編をアップします。久しぶりに色っぽい展開となります。みんな大好きお色気シーン。もちろんわたくしも大好きですよ。ふふ。




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