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07 ドラゴン襲来②

※4~7話は主人公不在です

(......よし、みんな入ったな)


マクスはサユリたちが孤児院の中に入ったのを確認し、ひとまず安心する。

あの建物は裏から抜けられるからおそらくみんな逃げることが出来るだろう。


(さてっと)


マクスは剣を構えると、ドラゴンを睨みつけた。


全身が赤い鱗に覆われていて、ところどころ光のようなものが漏れている。

そして頭頂部の角は片方へし折られていた。


(もしかしてこいつ、手負いか?)


理由は分からないがそうに違いない。

現にドラゴンはこちらを睨みつけたままあまり動こうとしなかった。

並みのモンスターであれば絶好のチャンスである。

しかし......


(それにしても..........デケぇ)


ドラゴンの体躯は想像以上に大きかった。

顔の大きさがマクスの全長よりも大きいというのだから、全身はいうまでもない。

それに加えてドラゴンの足元はみるみる内にマグマのようにドロドロとなっていく。

おそらく、うかつに近づいたら火傷するだろう。


(......やるしかないか)


だが、マクスに引くという選択肢はなかった。

もしここで逃げたら、ドラゴンがスフィーや先生、子供達を襲ってくるかもしれない。

それだけは絶対に避けなければ。


「かかってこい!!」


マクスは剣を下に構えると、ドラゴンの懐に近づいた。

むせかえるような熱気が全身に纏わりつく。


「GAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」


ドラゴンはマクスを目で追うと、追い払うようにして手を振るう。


「遅ェんだよ!!」


マクスはドラゴンの振り払いを身を翻して難なく(かわ)す。

そしてそのまま攻撃の体勢に入ると、傷口の部分に剣を振りかざした。


「これでも食らえ!!」


マクスの攻撃がドラゴンに当たる。


流れるような一撃を決めたマクスは自らの剣を見て――


「嘘だろ......!?」


愕然とした。

愛用の剣は一瞬にしてぐにゃぐにゃに折れ曲がっており、先端部分は赤熱して溶けかかっていた。


「GAAAAAAA!!!!」


ドラゴンはマクスの攻撃などなかったかのように手を振りかざすと、そのまま潰しにかかった。


「うお!?」


マクスは間一髪で飛びのくとそのまま距離を取る。

そしてもはや使い物にならなくなった剣を構えると、頭の中で思案を巡らせた。


(クソ......熱い......!!)


ドラゴンの熱気に当てられた箇所がひりひりと痛む。

あと少し近づいていたら、全身が火だるまになっていただろう。


予想外だった。

もちろん、手負いだからだといって油断していたわけではない。

ただ少しぐらいは時間を稼げるだろう、そう思っていた。

しかし......


(戦いにすらなってねぇじゃねぇか!!)


まさか武器が一発で使い物にならなくなるとは。

そんなことは想定だにしていなかった。


おまけに近づいただけで火傷するときた。

向こうは何もしていないのに、こっちは一方的にダメージを受けていく。


マクスは長年使い込んできた愛剣を握りしめると、心の中で愚痴を吐く。


(ちくしょう!!こんなことならもっと上質な装備を買っとけば良かったぜ!!)


とはいえそれは無茶な願望であった。

まずドラゴンに対抗できるような装備なんてこんな辺鄙なところでは売っていないだろう。

そして仮にそんなものが売っていたとしても、それはかなり高額なものに違いない。

資金のないマクスでは手が届かない。


そう考えると、この剣はよくやってくれた。

安いわりには軽くて持ちやすく、それでいてここまで長持ちしてくれた。

あとで町の鍛冶屋の人に感謝を伝えないとな、とマクスは思う。


(......よし)


頭の中に浮かんだ雑念を振り払うと、マクスは手に馴染んだ愛剣をもって再びドラゴンに接近する。


幸いにも、ドラゴンの動きは鈍いため、マクスでも躱すことが出来る。

それならば攻撃は不可能でも、目の前を動き回ることでドラゴンの気を引くことは出来るはずだ。


そう考えていた。


「GRRRRRRR!!!!」

「なっ!?」


ところがドラゴンはマクスに目もくれず、巨大な翼をはためかせるとそのまま飛び立ってしまう。

周囲に爆風が発生する。

孤児院は今にも崩れ去りそうだ。


「グッ!?」


マクスは吹き飛ばされそうになるも、足腰に力を入れて踏ん張る。

そして、ドラゴンが飛び去ろうとする方向に思わず目を見開いた。


「マジかよ......!!」


ドラゴンはスフィー達のいる方に行こうとしていた。


「待ちやがれェ!!」


マクスは咄嗟に手持ちの剣をドラゴンの方に投げつける。

くすんだ鉄の塊が赤い鱗に衝突する。


「GAAAAAAAA!!!!」


しかし、ドラゴンの注意を引くことは出来なかった。

長いこと使い込んだ自慢の愛剣はドラゴンに触れるなり、あっけなく燃え尽きていく。


「クソッ!!」


マクスは地面に落ちていた石を適当に投げつけるが、ドラゴンに届くことはなかった。


「GYAAAAAAA!!!!」


ドラゴンは自身に向けられた攻撃を意に返すこともなく、サユリたちが逃げていく方を見やる。

そしてそのまま狙いを定めると、そちらの方に飛び去ってしまった。


「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


マクスはスフィー達を守るべく、全速力で追いかける。

だが相手はドラゴン。

生身の人間が全力を尽くそうが、とても追いつくことなどできない。


「GAAAAAAA!!!!」


そしてそれは、普通の人間がドラゴンからは決して逃げられないことを意味していた。

ドラゴンはあっという間にスフィー達に追いついていくと、勢いよく着地する。


「「きゃあ!?」」

「うお!?」


彼らは衝撃波に吹き飛ばされ、地面に倒れこむ。


「あ...ああ......」


そして幼い少女が尻もちをついてドラゴンを見上げる形となる。

あまりに現実離れした光景なのか、ぽかんと口を開けて呆然と見つめている


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおl!!!!!」


マクスは眼前に迫る危機を目にし、持てる力すべてを振り絞って一気に駆け上がった。

全身の筋肉が悲鳴を上げたが、そんなことは関係ない。

今はとにかく走らなければ。


しかし現実は無情だった。

マクスがどれだけ必死になろうが、ドラゴンにとってそんなことは関係ないのである。

ドラゴンの手が少女に狙いを定めた。


「GAAAAAAAAAAA!!!」


そして今まさに振り下ろされそうに――――


フィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!


刹那、笛のような音が頭に響いた。

ドラゴンの動きがピタリと止まる。


「GRRRRRR......」


ドラゴンは音の聞こえた方に振り向く。

そしてマクスやサユリ、スフィー達もその方向に視線を向ける。


そこには、褐色の肌を晒した白髪の少女が手でわっかを作って口元に当てていた。

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