10 再開2
「親父!!」
「カール!!無事だったか!!」
避難所に入ると、中はすでに半分以上の人間で占められている。
そこでカールは父親と再会した。
「みんなは!?」
「安心しろ、全員生きてる」
中にいたのは、カールがともに暮らしている村人たちであった。
そしてカールの父親は、村長だったはずだ。
「よ、良かった......!それで、怪我は?」
「それなんだがな......実を言うと、ここにいる全員大した怪我はしてないんだ」
それを聞くと、カールは大声を出した。
「嘘だろ!?いやまあ良いことなんだけどさ。あのドラゴンに襲われたんだぞ!?」
「いやそれがだな、ドラゴンに襲われたとき、風変わりな格好をした男がいただろう?その人がえらく強くてな。たった一人でドラゴンを追い払ったんだよ」
ドクロたちはにわかに信じがたい話を聞く。
ドラゴンを一人で追い詰める者など、本当に存在するのだろうか?
「あ」
しかしマクスは覚えがあったのか、思い出しかのように話し出した。
「そういや、あのドラゴン手負いだったな。傷だらけだったし、もしかしてそのこと言ってんのか?」
言われて、ドクロは透視で見たドラゴンの骨を思い出す。
あの時は流石に状況が状況だったので、詳細まで見てなかったが、確かにドラゴンの骨にはところどころヒビが入っていた。
「その人がドラゴンにダメージを与えたから、私たち助かったのかな?」
スフィーがそんなことを呟いた。
「......」
確かにその可能性は十分あるかもしれない。
傷だらけになったドラゴンが自身の炎を制御できずに自爆する。
ありえなくはなさそうだ。
少なくとも、自分がドラゴンを焼き尽くす魔法を放ったというよりもよっぽど現実的である。
(それじゃ、やっぱり......)
気のせいだったのだろうか。
ドクロは自分の手をしげしげと見つめる。
「そうだったのか......ドラゴンが来たことを町の衛兵に伝えろって言われたときは驚いたたけど......とにかくよかった。それで、その人は今どこにいる?」
「それがだな......逃げて行ったドラゴンを仕留めるといってどこかへ消えてしまったんだ。途中、膝をついて痛そうにしていたが、無事なんだろうか......」
村長は心配そうに呟いた。
「それ本当か?俺は見かけなかったけど......」
「ん?見かけなかったってどうゆうことだ?」
村長が訝しむと、こちらに視線を送る。
どうやら、今になって気が付いたらしい。
「この方たちは......?」
「ドクロちゃんが住んでいる孤児院の人たちだよ。......さっき、襲われたんだ」
「なっ!?」
今度は村長が心底驚いたようだ。
「本当なら真っ先に町に行ってドラゴンが来たことを知らせるべきだったんだろうけどさ......近くに孤児院があることを思い出したから、そっちの方に行ったんだ。そしたら、ドラゴンに襲われた」
「怪我は!?」
「俺は大丈夫だったけど......そこにいる子が単身でドラゴンを引き付けてな。ところどころ火傷してる」
カールに指をさされたマクスは軽く会釈をした。
「うす」
「その......悪かったな。町の衛兵に伝えられなくて」
「いいよそんなことは!!みんな無事だったんだし!!それよりどうやってここまで来たんだ!?ドラゴンに襲われたんだろ!?」
「あーそのことなんですけど」
マクスは前に出ると、軽く説明した。
「ダメージを負ってたからか、動きは思ってたよりかは鈍くて、運よくみんなそこまで大した怪我はしてないです」
「それじゃ、君が倒したのか?」
「ああいや、最後はなんか知んないすけど、自爆しました」
「自爆......?」
村長は困惑してるようだった。
まあ最強クラスのモンスターがいきなり自爆しましたなんて聞いたら誰だって困惑するだろう。
「そう、なのか......まぁ、何はともあれ無事でよかった。直に聖女様もいらしてくださる。ゆっくりとくつろいだ方がいい」
村長は穏やかに語りかけると、ふと疑問を口にした。
「そうえばドクロちゃんはどこにいるんだ?さっきから姿が見当たらないが......」
「あ、私ならここにいますよー!」
ドクロは自身の名前を呼ばれ、手を挙げる。
「......」
村長は呆気にとられたのか、しばらく無言になる。
しかし、誰なのか分かったのか驚いたような声を上げた。
「なんだ!!誰かと思ったらドクロちゃんだったのか!?いやぁ、しばらく見ないうちにずいぶん変わったなぁ......」
「あの......ドクロとはどういった関係で?」
村長がこちらをまじまじと見つめてくるなか、サユリは質問を投げかけた。
「これは失礼。私はリンダ―、こう見えても村の長をやっておるものです。ドクロちゃんとの関係とのことですが......実は以前、町へ行く途中で腰を痛めてしまいましてね。動けなくて困っていたところを彼女に治してもらったんですよ。以降、たまに村を訪ねることがありまして、子供たちの遊び相手や私みたいな老人の手伝いをしてくれるので、とても助かってるんです」
「なるほど......そういうことですか」
「ねぇねぇきいて!」
サユリたちが話していると、アリアぐらいの年の子がドクロのもとに駆け寄ってきた。
ドクロは小さく屈むと、にっこりと笑う。
「ん?どうしたの?」
「どらごんをやっつけたひとね!すっごくおおきなぶきをもっておそらをびゅんびゅんとんでてね、すっごくかっこよかったの!」
「へぇ!!そうなんだ!?いいなぁー!!おねえちゃんも見たかったぁ!!それでそれで!?」
「うん!!しかもそのひとね、けっただけでどらごんをぶっとばしたの!!」
「こらこら、あまりはしゃぐんじゃない」
村長は子供の手を引っ張ると、孤児院の面々を見渡した。
「なにはともあれ、みんな無事なようでしたので、私らは向こうの方に行ってますね。あなたたちも、ひとまずは集まった方がいい」
そう言い残すと、カールとともに村の人たちがいるところへ集まった。
「......そうね、私たちもいったんあそこに集まりましょう」
サユリは空いてるスペースを指さした。
ドクロたちはそこに集まる。
「てかさ、結局なんでお前あんな家開けてたんだ?あそこの人たちのところにいたわけでもなさそうだし」
マクスはずっと気になっていたのか、ドクロに家出していた理由を尋ねた。
「そうだよ、ドクロちゃんどうしたのその髪?日焼けもしてるし」
スフィーもドクロが何をしていたのか気になっていたのかマクスと同じことを聞いてきた。
「ドクロ......本当に大丈夫なの?どこか具合悪いところはない?」
サユリは心配そうにドクロの顔を伺った。
(......)
こうなったら話すしかないか。
ドクロは意を決すると自分の身に起こった出来事を話し始めるのだった。