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冒険者と別れ

 背中に荷物を背負う。

 ラフィエは門を潜り、空を見る。

 一昨日は楽しかった。ライ、テッラ、マール。そしてレニーに軽い送別会をしてもらった。


 レニーはカジュウキノコのケーキを奢ってくれた。マールと泣きながら抱き合ったし、ライとテッラにはこの先を応援された。


 ライ、テッラ、マールの三人からは首飾りをもらった。大事な、大事な、思い出の品だ。雫のような形に加工された青い石がついている、シンプルなものだった。


 ここに来る前は、冒険者生命さえ諦めかけていた。パーティーを組むのが怖いし、冒険者としてやっていけるかさえわからなかった。


 でも今は違う。


 首にさげた青い石を握りしめながら、笑みを浮かべる。今はこの先が楽しみで仕方がない。


「よし、がんばるぞー!」


 拳を振り上げながら、ラフィエは道を突き進む。


 途方もないように見えた世界が、心躍るほど輝いて見えた。




  ○●○●




 大きく、ため息を吐く。


「レニー、大丈夫?」


 大剣を担いだルミナが、レニーに歩み寄ってきた。肩で呼吸をしながら、親指を立てて無事を示す。


 草原の中心で、巨大な翼竜種が倒れている。プテラダクティスと呼ばれるルビー級のモンスターだった。ワイバーンに比べるとやや弱いがそれでも強力なモンスターだ。


 コウモリのような体に、鳥のような頭、トサカは斧のような発達の仕方をしており、トカゲのような尻尾を持つ。


 空中から、足のかぎ爪で攻撃したり、トサカや尻尾を叩きつけてきたりする。


 家畜を襲うので討伐依頼が出されたモンスターだ。


 レニーとルミナで討伐したところだった。レニーはエンチャントバレットで飛行を妨害し、ルミナが大剣でトドメを刺した。


「な、なんとか」


 プテラダクティスの巨体を利用して影の女王に捧ぐのスキルや影の尖兵のスキルを最大限使って攻撃を試みた。影を伸ばして翼を貫けないか、シャドーハンズで捕まえられないかとあれこれやってみたが、最終的にエンチャントバレットで狙い撃ちにした。


「経験、積めた?」

「うん。ありがとう」


 汗を拭いながら膝に置いていた手を離して姿勢を正す。


「レニーから頼む。珍しい」

「カットルビーになったから魔物討伐が苦手とも言ってられないと思ってね」


 この間のシラハ鳥の討伐は本当にまずかった。

 シラハ鳥だからセオリー通りに狩ればいいと思っていたのにとんだ変異種をつかまされた。その戦闘で対空手段が少ないのも、やはりまだ実力が足りないのも実感させられた。


 これから何があるかわからない。任される環境が厳しくなるほど、危険は増すだろう。


「もっとスキルを使いこなさきゃな」

「影を使ったスキル、難しそう」


 ルミナの持つ称号スキル、ジャイアントキリングは功績を認められて授けられたスキルだ。レニーの影の女王に捧ぐや影の尖兵のような己の積み上げてきた経験とかけ離れたスキルの得方は滅多にない。


 従ってレニー自身、スキルで出来ることを把握していない。


 スキルをより理解して使いこなさなければならないのだ。


「ちょっとは背伸びしないとね」


 レニーは東のほうを見る。ラフィエが行くと言っていた方角だ。


 ――私ね、もっと強くなりたい


 星のように輝いていたあの瞳を思い出す。


 心地いい風が頬を撫でた。


 ラフィエと別れはしたが、一生の、ではない。冒険者であれば、いずれまた会えるだろう。

 その時に少しは胸を張れる冒険者(センパイ)のままでいたい。

 

 ソロ冒険者レニーはそう思った。


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