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冒険者とルパードロップスネーク

 ルパードロップスネーク。


 畑を荒らす蛇のモンスターだ。硬い頭部とくすんだ白の鱗が特徴的で、人間の腕を軽く噛み千切れる。蛇で言うと大蛇のサイズはあるのだ。


「ようし行くぞぉ!」


 村が近い林の中、レニーとクーゲルはそのルパードロップスネークを相手にしていた。数にして十くらいはいる。


 背の高い草をかき分ける音を聞き分け、レニーに頭突きをしてくるルパードロップスネークの動きを見切る。


 頭突きを避けると口を開けて水ブレスを放ってきた。

 この水ブレスは衝撃が強く、体が軽く吹き飛ばされるほどの威力がある。しかも布系の装備であれば当然濡れるので体が重くなる。


 マジックバレットで水ブレスを弾き、右へ跳ぶ。そこには水滴状の尻尾があった。

 レニーはそこへマジックバレットを叩き込む。


 水滴状の尻尾が砕けるようにヘコむと、ルパードロップスネークは甲高い鳥のような鳴き声を上げながら顔を真上に上げ、痙攣しながら絶命した。


 ルパードロップスネークの群れの対処はトパーズ級パーティーから認められる。単体であれば、パールでも対処自体は可能だ。


 その理由がこのレニーの狙った尻尾にあった。


 ルパードロップスネークの鱗は頭に向かえば向かうほど強固だ。頭だけはルビー級と比喩されるほど、破壊が困難である。


 従って真正面から戦うとほぼ勝てない。どんな強力な魔法も打撃も弾き、となれば無論斬撃で斬れない。


 ではどうするか。


 ルパードロップスネークの体には致命的な欠陥がある。尾の部分にある水滴状の部位を破壊すると脳にまでダメージが届き、一撃で仕留めることができるのだ。


 噛みつきやブレスを誘発して避け、隙ができたところに尻尾へ攻撃をぶつける。対処さえ分かれば強い敵ではない。


 問題は畑を荒らす習性と群れやすいということだ。村人には非常に恐れられている。


 しかも素材もあまり需要がない。脆すぎて必要のない尻尾付近の鱗、倒すと自然と軟化してしまい、頑強さを失う頭付近の鱗。食べれる部位は少なく、美味いかと言えば味の似ている豚肉の方がお得だ。


 冒険者もあまり受けたがらない依頼ではある。それ故に、村からの報酬とギルドからの報酬で報酬金額がかさ増しされるほどだ。


「クーゲルさん頼んだ!」

「おうよ」


 レニーに噛み付こうとするルパードロップスネークの尾を、クーゲルの強魔弾(マグナム)が破壊する。草で見えない尾を、クーゲルは長年の技術と勘で当ててみせた。

 ルパードロップスネークは飛び上がるようにして絶命し、白目を剥いた。


 冷や汗が流れる。


 苦手だ。


 草に紛れてどこから来るかわからないし、人型じゃないから駆け引きも何もない。戦い自体は単調だが神経を使う。

 足場も柔らかい土と長い草で踏ん張りづらい。


「レニー!」

「なんだい!?」


 目を向ける。

 クーゲルが魔弾を放ったところだった。一つの大きな魔弾から細かい無数の魔弾が散らばり、ルパードロップスネークの全身を叩いて宙に浮かせる。


 レニーは丸見えになった尻尾へマジックバレットを放った。


 そんな討伐を続けて数時間ほど。


「こんくらいでいいか」

「……そうだね」


 林に大量にいたルパードロップスネークを狩りに狩りまくって三十は倒しただろうか。

 探す時間もあったので戦闘時間はそれほど長いわけではなかったが、モンスター討伐が苦手なレニーにとってはキツイ仕事だった。


 何も起こらないか、野盗相手が多い護衛の任務のほうがずっと気が楽だ。


 長杖を担ぐクーゲルは余裕そうだった。


「しかしレニー、マジックバレットの速度は俺が見てきた中でも最速だ。俺が教わりたいくらいだぜ」

「いいけど、その杖じゃ無理だよ」


 レニーは手元でクロウ・マグナを回す。人差し指を置く部分に輪っか状の金具があり、そこに指を引っ掛けて回すのだ。

 エンチャントカートリッジの切り替え時に、手から杖を落とさないようにするための部品だった。


 シャフトの先を肘の方向へ向けたり、あとは回転させながら別の方向へシャフトの先をスムーズに移動させることにも利用することがあった。


 滅多に必要な場面がないのでぼぼお遊びであるが。


 回転させながらホルスターに杖を納める。


「なんでマジックバレットとカースバレットしか使えないか合点がいったぜ。そのスピードはもう反射とほぼ変わらねえ」


 クーゲルは顎に手を当てる。


「カットラスをメインに使いながらトドメや牽制にその早撃ちってぇわけだ」

「クーゲルさんは多彩な魔弾使うね。さすがバレットウィザードだ」


 戦闘を振り返る。

 散弾を飛ばす魔法に、貫通力の高い魔弾、跳弾する魔法など状況によって使い分けていた。正確に弱点を叩き、至近距離でも対応可能になっている。


「各地を旅してきたが、バレットウィザードじゃないってのにここまでマジックバレットを極めてるやつがいるとは嬉しい限りだぜ」

「オレもバレットウィザードの戦い方は参考になるよ。魔法も確かにいくつか教わりたい」

「任せな」


 鼻を親指で弾くように押すと、クーゲルは胸を張った。


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