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冒険者と侵入

 夜。

 海岸の洞窟の近くで、レニーたちは待機していた。岩場の影で、仄かな灯りのある洞窟の入り口を観察する。見張りが二人、あくびをしながら立っている。


「で、どうするの」


 フリジットが小声でレニーに尋ねてくる。


「オレが入ってしばらくしたらフリジットを先頭にして入ってきてくれ。賞金首三人の相手は……フリジット、キミ何人相手にできる?」

「二人は約束できるかな」

「ならラフィエさんとヘラさんで一人、フリジットで二人を倒すのを目的にしよう」

「レニーは?」

「ブオグとやらを真っ先に足止めするさ」


 レニーは岩場の影から出ると、洞窟の入り口へ向かう。隠れるつもりも毛頭ない。


「なんだ、てめえ」


 盗賊の一人がレニーを睨みつける。レニーは杖に手をかけて、口の端を吊り上げた。


「当ててごらん?」


 魔弾が、炸裂した。一人が吹っ飛び、倒れ伏す。

 もう一人の見張りはをわざと隙をつくってやると急いで洞窟の中に逃げていった。


「いい子だ」


 ゆっくり進みながらカットラスを引き抜く。暗い洞窟の中で、「フクロウの目」のスキルが発動し、夜目が効くようになる。

 洞窟の中はところどころマジックアイテムのカンテラによる灯りが壁に打ち付けられており、真っ暗闇ではなかった。ただ、灯りとしては頼りない。普通であれば暗闇に目が慣れてなければまともに見えないだろう。


「そこだな」


 レニーは魔弾を床に向かって撃つ。

 仕掛けられていたトラバサミが音を立てて破壊される。

 レニーのスキルの中に「トラップイーター」というスキルがある。仕掛けられたトラップを見抜き、破壊することに関して補正のかかるスキルだ。

 とはいえ盗賊も行き来が面倒になるほどの罠は仕掛けていられない。決まった道順で歩めば危険がないようになっている。もし、罠に間違えて引っかかった時を考えて致命傷は避けるようになっている事も多い。

 飛んでくる矢を避けて、設置されたボウガンを魔弾で破壊し、奥へ進む。


 少しひらけた場所までたどり着くと、数人の盗賊たちがレニーを取り囲んだ。


「おめえ何者だ」

「冒険者さ。お前たちを狩る、ね」


 指名手配されていたイラストを思い出し、その場にいる者と照らし合わせる。


「ビンゴ」


 一人、賞金首がいた。

 後ろから斬りかかってくる盗賊の一撃をカットラスで弾き上げ、後ろ蹴りで股間を蹴る。

 金的を喰らった盗賊はうめき声をあげながら屈みこんだ。魔弾で雑魚を処理しながら、レニーは賞金首に斬りかかる。

 カットラスの一撃を避けられる。そこで蹴りを入れて、賞金首の鳩尾を突いた。


「ぐっ」


 魔弾を撃つ。

 しかしそれは賞金首の短剣で防がれた。


「やるな」


 賞金首が短剣を舐めながら言う。


「キミは大したことないね」


 レニーは杖を横へ向けて撃つ。

 先程まではいなかった盗賊が魔弾で吹っ飛ばされて倒れた。その後ろから部下を引き連れて二人、賞金首がやってくる。


「横穴から不意打ち。わかってれば大したことないね」

「おめえ何余裕ぶってやがる。こちとらトパーズの冒険者でも倒せるんだぜ」


 自慢げな短剣の賞金首。

 他の盗賊たちも笑う。


「何って余裕だからだけど」


 後ろから盗賊の集団を殴り飛ばし、フリジットがレニーの真後ろまでやってきた。遅れて、ラフィエとヘラがやってくる。


「このタイミングで良かったかしら?」

「最高」


 フリジットは横穴から来た二人の賞金首からレニーを守るように構えている。ラフィエとヘラも、武器を構えてあった。


「それじゃ、後任せるから。あぁ、ヘラさん」

「なんだ」

「早いもの勝ちだから、ね」


 レニーは洞窟の先へ走り出す。構造的に横穴は不意打ちのために仲間が固まっていただけだろう。順路を進めばいいだけのはずだ。

 短剣の賞金首が立ちふさがろうとするが、ラフィエが即座に斬り込んで妨害した。その横を通り抜ける。


 暗闇を抜け、雑魚を片付けながら奥へ向かう。洞窟はさほど入り組んでいるわけでも、奥までが長いわけでもなさそうだった。

 レニーがたどり着いた先には、一人だけいた。

 手配書に描かれていた顔。筋骨隆々の、今回の首領が。


「やぁ、会いたかったよ」


 レニーは友人にでも話しかけるような気軽さで目の前の男に話しかける。

 間違いなくブオグだ。


「冒険者、か」

「はじめまして」


 カットラスを、前に構える。ブオグはレニーよりも大型のカットラスを腰から引き抜くと、獣のような笑みを浮かべた。


「一応聞くが、他のやつは」

「仲間が相手してるよ。全員集まるのは時間の問題かな」

「へっ、随分自信があるようだな」


 だって自分より強い冒険者とトパーズ二人だし、とは言わないでおく。


「オレもキミをちゃっちゃと片付けないとね」


 言い終わると同時に暴風が吹いた。

 大砲の弾でも飛んできたのではないかという重苦しさ。間合いを詰めてきたブオグに、カットラスを振るう。


 火花が散った。

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