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【書籍化】ソロ冒険者レニー  作者: 月待 紫雲
続:向上心の話
332/343

冒険者とラッシュコボルト

 平原にて、レニーとベアトリスは歩みを進めていた。

 コボルトたちは毎日狩場を決める。通りがかった動物を襲い、それを食料とするのだ。

 予想のつかない狩場に人間が通りがかって襲われることも少なくはない。


「ところで、常駐冒険者のキミがどうして昇格を?」

「それは……獣の件を覚えているか?」

「うん」


 レニーが協力をした依頼だった。謎の獣に村人が食い殺されるので協力が必要とのことで向かったのだ。

 ヴァイスという不良集団が幅を利かせており、獣以外の面倒はあったのだが、結果的には獣の正体はマンティトラという魔物で、レニーが討伐することで解決した。


「あの魔物、レニーさんがいなければどうにもできなかっただろう? 私は何もできなかった」

「まぁあの地域に出る魔物じゃないだろうし」

「でも一度あったのだから、討伐……は現実的じゃなくとも撃退くらいはできるようになりたいと思ってな。ヴァイスも解散させたし、村も落ち着いたしで……」


 当たり前ではあるが、至極真っ当だった。必要だから実力をつける、それだけなのだろう。

 それを証明できるのが昇格というだけだ。


「レニーさんのときのようにすんなり協力者が出るとも限らないしな」

「立派だね」

「そうか……?」

「そうだよ」


 レニーが肯定するとベアトリスは頬をかいた。


「レニーさんは、凄い人だな」

「なんで?」

「私みたいな等級が低い者でも変わらず接してくれる」

「偉くはないからね」


 対処できる事案の幅の問題だ。村を守ることも立派な、そして尊敬する仕事だ。


「等級低いときに世話になった冒険者もパールだしね。運び屋(クーリエ)の冒険者」

「ほう。さぞ立派な方なんだろうな」

「まぁね」


 普段のノリは軽いが、尊敬している冒険者だ。


「……さて」


 レニーもベアトリスも足を止める。コボルトの群れに囲まれたからである。数にして五匹ほどだ。


「コボルトだな」

「サポートするから、いつも通りやってみてよ」


 腰の杖に手を当てながらレニーが言う。


「では大きいやつから」


 ベアトリスは素早く構えると中央にいるコボルトに向かって突っ込んでいった。


「は? いやそいつ」


 体が一際大きいコボルトに突っ込んでいくベアトリス。


 コボルトも対抗すべく噛み付こうと迫る。ベアトリスはそれを躱すと、拳を握り締めて喉へ一撃入れる。


「せいや!」


 そのまま上空へ殴り飛ばした。コボルトはひっくり返り、仰向けに倒れる。

 後頭部を思い切り地面に叩きつけられ、喉も潰れて呼吸もできない状態であった。


 痙攣するコボルト。それを見て、仲間のコボルトは逃げ出す。


「あっ、ちょっと待て!」


 ベアトリスは追いかけようとするもコボルトは霧散するようにあちこちに逃げたため、追いかけようという気持ちと、どれを追いかけるべきかという迷いが同時に行動に出てしまったのか、左右を見ながら足が絡まるという結果を起こした。


「わっ、おわっ!」


 転びそうになり、両手を振り回すベアトリス。レニーはその背中を掴んで引き上げて立たせた。


「平気?」


 レニーが問いかけるとベアトリスは顔を真っ赤にした。その間にコボルトはすっかり逃げてしまっている。


「す、すまない。逃してしまった」

「全滅させることが正解というわけじゃないから、構わないけど……それよりあいつ」


 レニーは倒れているコボルトを指差す。


「ラッシュコボルトだから……その……普通にカットトパーズ並みの強さあるよ」

「……へ?」


 そう。

 ベアトリスが真っ先に倒しに行ったのがラッシュコボルトだった。コボルトよりも獣に近い体格を持ち、大型のコボルト。


「リーダー格を真っ先に行ったからびっくりしたんだけど」


 いつでも助けられるように早撃ちの用意はしていた。していたが、必要がなかった。


「す、すまない」

「強いのはいいんだけど情報不足のまま戦闘すると危ない橋を渡りかねないな」

「か、返す言葉もない」


 しゅんとするベアトリスに、レニーは周りを見る。


 強さは問題ない。問題ないが、強いだけでは昇格はできない。


「うーん、必要なのは知識と判断力かな」


 レニーはそう呟いた。

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