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【書籍化】ソロ冒険者レニー  作者: 月待 紫雲
続:本部調査の話
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冒険者と生き先

「ここをどう思ってるって……そりゃ良いギルドだと思うよ。じゃないとギルド所属にならないし」


 レニーがそう言うとフリジットは困り顔になる。


「ううん。そういうことじゃなくて……なんていうか、ほらルミナさんがいて、ギルド外にもエレノーラさんとか、孤児院の子とかいるわけじゃない? 今の環境って言えばいいのかな。冒険者目線じゃなくてさ……レニーくんがここを好きかどうかって……話」


 戸惑いながらもフリジットが言葉を紡ぐ。

 話の意図を理解したレニーは迷わなかった。


「好きだよ」


 即答できた。


「フリジットとこうして話すのも、ルミナと依頼に行くのも」


 エレノーラと雑談を交えながらの杖のメンテや、あまり言葉を交わすわけではないが、子どもたちの様子を見ること。利用している店、そしてこのギルド。


「じゃあさ」


 フリジットは安堵したように笑みを浮かべる。


「愛着があるってことだよね。なら、自分の意思に関わらず、遠くには行きたくないんじゃないかな、レニーくん」

「……行きたくない」

「勝手な憶測だけど……ね」


 あはは、と笑って取り繕うフリジット。自信がなかったのだろうか。


 それでも、レニーには、


「──そうか」


 ──フリジットの言葉が、妙に腑に落ちた。


「行きたくないのか、オレ」

「ははは……ほえ?」


 唖然とするフリジットをよそに、レニーは頷く。


「うん、ギルド所属だしね。死んでからって関わりが全くなくなるってわけじゃないし」

「そ、そうだよ?」


 身寄りがないから、ソロだから、と自分のことにだけ注視していて、なぜ抵抗感があるのかわからなかった。


 今のフリジットの言葉でわかった。


 思っていたより、大切に思える場所に、ここがなっていたらしい。


 自分の感情に合点がいって、先ほどまで抱いていた罪悪感などは驚くほどに払拭されていた。


「うん、断ろう。死んだ先のことなんてまだ想像できないけど」

「それならロゼアを指定して引き取り希望を出したら?」

「引き取り希望?」

「うん、引き取り先があればとりあえずは対応場所はここで確定なわけだし。どうせソロだから野ざらしでもいい〜みたいなこと考えてたんでしょ」

「うん、当たり」


 ピシッ、と。デコピンをされる。


「あたっ」


 フリジットは腕を組んで頬を膨らませた。


「全く……目の前にあなたを好きな人がいるんですけど? いつまでその思考回路なのかしら」

「変わらない気がする」

「もう、ソロ病よソロ病」

「悪いね」


 互いに見つめ合って、それから自然と笑い出す。


「……ありがとう。話して良かった」


 レニーが心からそう言うと、フリジットは顔を赤くした。


「なら、良かった」


 それから思い出すように「あ」と声を漏らす。


「早死はもちろん許しません」

「善処します」

「しっかりするように」


 胸を張るフリジットに、レニーは大げさに頭を下げた。


「……嬉しいよ、レニーくん」


 穏やかな口調でフリジットが言う。レニーは頭の中で疑問に思う。


「レニーくんがちゃんと私に頼ってくれて。凄く嬉しい」

「嫌な話だったと思うんだけど」

「うん。想像はしたくないね。でも、ロゼアにいたから迷ってくれて、疑問に思ってくれたのなら受付嬢やってた意味があるのかなって」

「大げさな」

「誰かの助けになるって難しいからね。なれたってときは大げさくらいがいいと思うの」


 だから、と目を閉じる。


「ありがとう」


 こっちが頼ったというのに礼を言われる。その意味がよくわからない。

 ……ただ。


「また話してくれると嬉しいな。ルミナさんでも良いし」


 こんなにも受け入れてくれるのなら、また話してしまってもいいのかもしれない。


「……いつも頼りにしてるよ」

「今回みたいに、ちゃんと行動で示してください」


 上機嫌でミルクを飲む。


「努力するよ。本当だから」


 レニーの言葉にフリジットは強く頷いた。


「ぜひそうしてください」

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