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冒険者と新メニュー

 レニーは酒場のテーブルにて頬杖をつきながら、目の前の食べ物に目を向けていた。

 湯気が立っている大皿。そこには、パスタ麺でつくられた「ラーメンパスタ」があった。


 フォークを手に取り、レニーはラーメンパスタを食べ始める。


「うーん、美味い。ちゃんと美味い」


 満足気に、レニーはラーメンパスタを味わう。


 あれから一ヶ月程度。フリジットに依頼の相談をし、ザンマのための依頼を出した。それだけではなく、酒場の方に掛け合い、ラーメンの再現の手伝いをお願いしたのだ。


 資金は十分、ザンマが持っていた。今までラーメンや雑用で貯めてきた資金だったらしい。ザンマ自身が探索や魔物相手に問題なかったこともあって、依頼を受ける冒険者は最低限で済んだのもある。最初こそ、レニーも手伝いをしていたが、すぐに必要ないと判断し――というかルミナが積極的に関わったので、ほとんど何もしなくなった。


「これが目的だった――ってぇわけか」


 ドカッと、向かい側にザンマが座ってくる。


「あわよくば、であって狙って、ではないね。期待以上ではある」


 ラーメンパスタをすする。


「ザンマさんが定住してくれるのが一番だけどね」

「お断りだね。旅のために生きてんだ、こちとら」

「知ってる」


 自分も似たようなものだ。

 スプーンでスープをすくって飲む。

 ちなみにラーメンパスタはあっさりめのショウユと濃いめのトンコツの二種類だ。完全再現とはいかないが、酒場向きの味調整、食材選びはされている。


「新調も済んだし、そろそろってとこかな」

「おうよ。レニーには世話になったからな、いなくなるってぇときに依頼でいないと困っちまう。いるうちに礼は言っとかねえとな」

「律儀なことで」


 お礼ならいらないほどの成果だ。レニーはメンマもどきにフォークを突き刺し、食べる。本物より硬いが、コリコリとしていて歯ごたえが増した感じだった。


「屋台の機能も随分良くなったわ。またガタが来たらここに寄らないといけないくらいにはな」

「そりゃ大変だ。でも何年後になるやら」


 職人たちは思った以上にやる気になってあれこれと改良してみせたらしい。レニーが知っている限りでもここでしか直せない代物にはなっているのだろう。


 あとはエルフの国か。ルミナの装備品一式を揃えられるだけの技術者がいるため、似たようなことができるエルフはいるだろう。


「そのうち明後日くらいに屋台の営業やるからよ、来てくれや」

「場所は?」

「噴水のとこだ。フリジットが調整してくれたみてぇで、一日営業していいってさ。知り合い連れてこいよ」

「そりゃ、ぜひ」


 レニーは食べきったラーメンパスタの汁を飲む。

 少しあっさりしすぎな気がするが、これはこれで、冷めても美味そうなくらいな調整でとても良かった。




○●○●




 ある日の夜、レニーはギルドを出て、屋台に向かった。フリジットとルミナを連れて、だ。


「久々のラーメン〜! 楽しみー!」

「ボク、がんばった。いっぱい食べる」


 噴水の近くの屋台。その布をめくって、中に入る。


「おう、待ってたぜ。閉店後、貸し切りだ」


 腕をまくりながら、笑顔でザンマが出迎える。レニーを真ん中に、ルミナとフリジットが立つ。


「おう、両手に花とはまさにこのことだな。羨ましい限りで」

「ラーメン頼むよ。オレはショウユ」

「はいはーい、私トンコツ」

「ボクも……」

「はいよー」


 夜空の下で、ラーメンを食べる。

 幸せを噛みしめるように、ラーメンを味わう。


 満月のよく見える夜のことであった。


 数日後、ザンマは旅に戻っていった。

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