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【書籍化】ソロ冒険者レニー  作者: 月待 紫雲
続:息抜きの話
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冒険者とボックスステーキ

 テーブルの上に皿が置かれる。プレートに乗せられた肉がまるで宝石のように輝いていた。


「わぁ、おいしそう!」


 両手を組んでパッと明るい表情を浮かべるフリジット。視線を横に向けると、ルミナが無表情ながらも瞳だけは輝いていた。ルミナはフリジットが酒場ロゼアに入る前に誘ったため、今この場にいる。


 レニーは視線を落とす。レニーの眼の前にも、プレートが置かれた。


「おまたせしました! ボックスステーキです……じゅるり」


 持ってきた店員が明るく注文品を置いていった。

 特製のソースと肉汁によって艶めいて見え、添えられた野菜によって彩りが加えられている。出来立てであることを知らせる湯気と、肉の匂いが食欲をそそる。隣には赤ワインがあった。


「食べましょう食べましょう! ね!」


 上機嫌に促すフリジット。ルミナもぶんぶんと頷いてフォークを掴んだ。


 ボックスカンガルーの肉を食べるのは初めてだ。レニーもフォークとナイフを持つ。一口サイズにカットされているため、フォークだけでも十分食べられる。


 皆それぞれ、一口食べる。


「ん〜最高! さっぱりしてて柔らかいし、おいしい〜!」


 頬に手を当てながら、満足げに感想を漏らすフリジット。レニーも同じ感想だった。


 ルミナは目を輝かせて夢中になっている。


「おいしいな」

「へへん、私に感謝しなさい」

「フリジット、最高。お肉最高」

「ありがとう、フリジット」

「ふへへへへ。苦しゅうない、苦しゅうない」


 口いっぱいに広がる肉の旨味に舌鼓を打つ。現地調査のご褒美としては破格であった。フリジットがボックスカンガルーを仕留めたおかげで、おいしい思いができた。


 レニーだけでも狩れないわけではなかったが、苦戦はしただろう。肉の状態も多少悪くなる可能性があった。


 カットサファイア。レニーとひとつしか等級の違いはない。しかし、強さの差は歴然である。フリジットのように真正面から魔物を相手取る強さはレニーにはない。


 見ごたえのある戦いだった。あまり見られないフリジットの姿を見れて満足だ。


――それに。


 レニーは肉を楽しむふたりを眺める。その視線に気づいたのか、フリジットと目が合う。ルミナはリスのように頬がふくらむほどに肉を頬張っていた。


「ありがと」

「何が」

「いい息抜きになったし。それに、みんなで食べるとおいしいね」


 フリジットがウィンクをする。レニーは微笑みを浮かべ、肉にフォークを刺した。


「違いないね」


 ゆっくり肉を味わい、ワインを飲む。


――みんなで食べるものはおいしく感じるものだ。


 ソロの冒険者でも、それは変わらない。

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