冒険者と一角のナゾ
依頼は無事に達成。
レニーは討伐分の、クレラは湖の浄化分の報酬を受け取ることになった。どうやらクレラは浄化の依頼も予め受けていたらしい。ソロで討伐したわけではないが、ソロ討伐分の報酬を受け取れたことは得だった。
レニーは棚に並べられた薬品や道具を眺める。こまめに配置が変えられていることがわかり、女性が喜びそうなものも並べられている。
錬金術師、エレノーラの店だった。クロウ・マグナを製作した女性だ。
カウンターにクロウ・マグナを置いて何やらパーツをあーでもない、こーでもないと合わせては紙に書き込んでいる。
「しかしユニコーンに出会えたとは君も幸運だね」
「オレ、なんで平気だったんだ?」
「平気、というのは」
「だってユニコーン、男相手なら凶暴になるらしいじゃないか」
レニーの言葉に、エレノーラは呆れた顔になった。
「男だから、ではない。レニーくん、凶暴化するのは敵だからだ」
「敵?」
「ユニコーンの角は解毒や難病の治療が可能だと信じられている。私もユニコーンの角はお目にかかったことはないが、ユニコーンの伝承は広く世間に知れ渡っているものだ。どういうことが起こる?」
「密猟」
レニーは即答する。そういう話であれば、容易にわかる。
「狩りに出るのは欲にまみれた者だ。男女は関係ない。男のほうが多いから、そういう迷信が生まれただけだ。外敵を駆除して、敵意もない。そんな相手に凶暴になる必要もないだろう?」
「よく知ってるね」
エレノーラは胸を張る。
「私はとても賢いのでね。わからないことがあったら聞くといい、知ってることだけ答えよう」
「ま、わからないものは答えようないしなぁ」
「推察はできる。ま、ユニコーンが今の世でも幻扱いされるほど目撃例が少ないということはかなり過酷な環境に身を置いているか、知能が高いからだ」
レニーはユニコーンと遭遇したときのことを思い出す。
「話を聞く限りではかなり知能が高いのだろう。生存本能も高い」
クレラはユニコーンと遭遇しても何一つ驚いた様子も喜ぶ様子もなかった。
『大丈夫です。一度だけではありますが、遭ったことがあります。刺激しなければ大丈夫です』
言い方に語弊があるかもしれないが、要は無欲な人間には警戒を解くのだろう。どこで読み取っているのかわからないが、読み取りようがあるのはレニーが一番知っている。
「魔物は家畜化できない。昔からある成句だ。なにせ、手に余るからな。わかったら欲は出さないことだ。ま、君なら平気だろうが」
「興味ないからね」
つまり、人間の愚かさを隠し、ユニコーンの神聖性を高めるための伝承か。
レニーは天井を見上げる。
「生きるのって大変だなぁ」
レニーはただの冒険者だ。ユニコーンの事情をかじったところで出てくる感想は月並みでしかなかった。
それよりも、今、レニーが一番気になっていることは他にある。
「……いつ終わるの? それ」
「待ってくれ、もう少し。もう少しで返すから」
……結局、一時間待たされた。




