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冒険者とヤタのギルド

 村についた。

 ラフィエが泊まっていたという宿をレニーも借りることにした。


 現状ギルドの者が何人か派遣されているらしく、シュンはギルドの医者に任せることとなった。


 思いがけぬ強敵との戦闘や長旅に、レニーはヘトヘトになってベッドの上に体を埋めた。


「はぁ……柔らか」


 思わずため息が漏れた。


 夜明けが近い。ラフィエとは昼に宿内の食事処で会う約束をしている。


 さっさと寝てしまおう。


 そう思いながら目を瞑ると、瞼の裏にサンメンキョウとの戦闘が思い起こされた。


 次遭遇すれば勝てないだろう。相性と不意をついたからこその生還だ。


「……倒せるかも」


 だがレニーは、サンメンキョウに対してあまり絶望感を抱かなかった。




  ○●○●




 昼食を宿屋で済ませ、レニーとラフィエはヤタのギルドに来ていた。この国の文化なのか、だいぶ趣が違う。木造であるのは珍しくはないが、細かな装飾品や、掲示板のデザインがかなり違った。受付に並ぶ冒険者にちらほら獣の耳を持つものもいる。


 特徴的なのは前衛らしき冒険者ばかりいるところだ。杖や魔書を持った冒険者が見当たらない。近接武器を二本持ちしている冒険者が多い。


「ラフィエさんも武器二本持ってるよね」

「あ、うん。ここの主流の考え方なんだ。二天っていうんだけど、二つ以上の武器を扱えて、武器術を極めるみたいな……それを二天に至るって言い方してて」

「ゴールにたどり着くための手段みたいなものか」

「そうそう」


 魔道士から賢者(ワイズマン)を目指しているようなものか。


「私は大太刀と、刀を一応」

「サーベルとは違うんだ」

「うん。いろいろと」


 掲示板の前で二人並ぶ。そしてラフィエは一枚の張り紙を指さした。

 そこには狐のような耳を生やした、女性の姿が描かれている。セミロングほどの髪の長さで凛とした雰囲気の、若い女性だ。


 そこには「セツナ・ヤギョウ」の名と「デッドオアアライブ(生死を問わず)」の文言があった。そして、そこにはかなりの懸賞金が書かれている。


 つまり――賞金首になっている。


 行方不明で、捜索をするのであればデッドオアアライブ(生死を問わず)の文言は必要ないはずだ。しかし、その文言が追加されているということはそれなりの理由がある。レニーは説明を求めるようにラフィエを見る。


「……話が長くなっちゃうんだけど、受付嬢の人と一緒に、いいかな」


 不安げなラフィエに、レニーは頷いた。


 受付に向かう。


 黒い髪で短く切りそろえた受付嬢が穏やかな笑みを浮かべて迎えてくれた。


「ラフィエさん、こんにちは。そちらの方は……?」

「知り合いの冒険者です。私の恩人で、セツナの件で助けてもらおうかと」

「レニー・ユーアーンです。よろしく」

「私はタマキ・ネネと申します。よろしくお願いします」


 タマキが深々と頭を下げる。レニーも一礼をしてから冒険者カードを取り出して、受付に提示する。


「あ、赤……!?」


 タマキはばっと素早い動きでカードを手に取り、そして少し残念そうにする。


 ……ギルド所属だからだろうか。


「ルビー冒険者がここに来てくださるだなんて光栄です」

「いや、力になれたらと思っただけなので」

「ギルドロゼア……ラフィエさんが以前いたギルドの方ですね。かなり遠方(えんぽう)なのでは」


 レニーがここまで来るのにかかった期間は二週間ほどだ。「ペダソスノット」と呼ばれる短期間で長距離移動することに適した馬車を利用してこの国の近くまでやってきていた。徒歩だけだとかなり時間がかかってしまうので、高額なペガソスノットで時間短縮を図ったのだ。余談ではあるが、貴族向けに安定性も兼ね備えた「アタランテノット」などもある。


 実際かなり遠い。レニー自身もかなり疲れた。


「だからここ特有のものがよくわからなくて。ほらあの獣の耳ぽいのとか」

「あー」


 納得したようにタマキがラフィエを見る。


「ラフィエさんが呼んだということはセツナさん関連で」

「サンメンキョウ討伐も、と思っているんだけど。説明をお願いしたくて。私じゃ、その、うまく説明できるかわからないし」


 申し訳無さそうにラフィエが言う。タマキは笑顔で頷いてみせた。


「承りました。では、部屋をご用意しましょう。私から説明をさせていただきます。セツナさんのこととなれば一秒でも早いに越したことはないですから」

「お願いするよ」


 レニーは頭を下げた。

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