冒険者と君の瞳
酒場ロゼアでルミナはぼうっとカードを眺めていた。
青色だ。
カットサファイア。実力はまだ及ばないだろうがフリジットと同じ等級だ。今回の件で武具も相当質が上がった。滅多なことでは危険を感じないだろう。
ここに帰る前に一度兄に話がしたくて、声をかけたが相手にされなかった。いざ接するとなると、うまくいかなくて、でも……戦いのときに少しだけ――真っ先にレギンエッジを拾いに行ってくれたことが――少しだけ兄の心を知れた気がした。
今回はそれでよしとしよう。何せ、エルフの寿命は長い。
「――やぁ」
馴染みのある声がしてそちらを向くとレニーがいた。
「相席いいかい?」
尋ねられて頷く。
「いやぁこっちの騒がしさの方が安心するなぁ」
しみじみと呟きながらレニーはイスに座る。
「ボクも」
冒険者カードをしまう。
ルミナのカットサファイアの昇級を祝って冒険者が集まり、騒いでいた。
わいわいと騒ぐ光景を見て、ルビーになった頃を思い出す。あのときレニーはルミナに話を振りながら酒を勢いよく飲んでいた。その時に初めてレニーがまともに酔った姿を見た。
自分もあれだけ飲んで酔って良いのだと教えてくれて、自分が酔ったときは介抱してくれるときもあった。
「レニー。勝負しよ」
「へ?」
レニーが意外そうに目を見開く。
ルミナは手を上げるとエールを二つ頼んだ。
「どっちが先に酔うか」
「……したいの? 珍しいね」
きょとんとしながらもレニーは頷く。互いの目の前にジョッキが置かれ、それぞれ持つ。
「ま、とりあえず乾杯しよう」
レニーがジョッキを掲げる。
「ん」
ルミナは応じてジョッキを軽く当てた。
そして同時に飲み干す。
「たまにはバカになるかぁー」
レニーの呟きに、ルミナの瞳が輝いた。
ルミナは今日も、ソロ冒険者を楽しんでいる。
 




